百合レンジャーvsBLレンジャー   作:クリスタルスカイ

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24 ナカヨシ家族

「失礼するぜ!」

「失礼するわよ!」

「こ、今度は一体なんだ⁉」

 

 突然、部屋のドアが開け放たれたので、フラミンゴはびっくりして尻餅をついてしまった。なぜか幼女が出てきたと思ったら、その次はヒーローだった。百合エックスとBLエックス、銀と金のアーマーを纏った二人の戦士が、エックスチューナーを構えて乗り込んできたのだ。なお、どうやって入ってきたのかは不明である。

 

「あたしはBL警察のツカサ、こっちは連れのカイリよ。たった今同僚から連絡を受けたので、現場近くにいたあたしたちが対処することになったわ。この家に高額なカードが郵送されたそうだけど、ちょっと事情があってそれを預からせてほしくて……って、誰なのよ、この女の子は⁉」

「いや、気づくの遅いな⁉」

 

 

 相方にツッコまれているBLエックスに、フラミンゴはおどおどと説明した。

 

「そ、それが、僕にもさっぱり分からないんだ。カード五枚が届いたかと思ったら、突然融合して、女の子の姿になってしまって」

「……なあ。ひょっとしたら、バックアップ・プログラムは既に発動したのかもな」

「ええ。けど、あたしたちにとって幸運だったのは、バックアップは元々の無貌を完全な姿で復元するものではなかったということね。幼い頃の無貌を、新たな生命として再創造するものだったんだわ、きっと」

「てか、無貌って女性だったのか? 俺、てっきり男かと」

「そもそも、性別という概念を持っていたのかしらね? 超次元生命体って、イメージに応じて姿を自由に変えられるんでしょ? 今のこの幼い姿だって、仮初めのものかもしれないし」

「まあ、どっちもでもいいや」

 

 二人は小声で何か話し合っているけれども、フラミンゴにその内容は理解不能だった。

 

 

「……ねえ、あなた、名前は?」

 

 相談は終わった。腰を屈め、目線を少女に合わせて、ツカサは尋ねる。

 

「ムーヴォ!」

 

 桃色の髪の少女は、元気よく答えた。それから、少ししょんぼりした。

 

「ムーヴォ、ちちとはは、そんざいしない」

 

 未知の世界にいきなり放り出されたムーヴォ(無貌)は、とても心細そうだった。

 

 

『貴様らの言う、絆と愛か……』

『ようやく理解できた。私は、負けるべくして負けたのだな』

『……貴様らの勝ちだ。さらばだ、新たな原典たちよ』

 

 

「最後の最後で、無貌はあたしたちのことを認めた。自分が間違っていたと悟った。あたしは、無貌とだって分かり合える余地があるんじゃないかと思う。子供時代の無貌をきちんと育てれば、いつか優しい大人になるんじゃないかしら」

「同感だ。それに、ガキと戦う趣味はねえしな」

 

 ヒーローたちは囁き合った。やがて、二人は「おいで」と言うように腕を広げ、ムーヴォのことを受け入れた。

 無貌のしたことは許せない。無数の世界を滅茶苦茶にした罪は重い。けれども、彼女だって幼い頃から独裁者ではなかったはずだ。無貌が貪欲に強さを求め、自らを空虚な器と化すのを止め、真っ当な人生を歩めるように手助けしてやればいい。きっと分かり合えると、二人は信じた。

 敵の命を奪っても、失われた命や蹂躙された世界が元に戻るわけではない。復讐によって被害者の心が救われることはあっても、現状が変わることはない。ならば、歩み寄るという選択肢があってもいいではないか。何も、新たな命の芽を摘むことはない。

 

 

「一人ぼっちじゃ寂しいでしょ。あたしたちが、あんたのお母さんとお父さんになるわ」

「ちちと、はは?」

 

 ムーヴォは、ぱあっと顔を輝かせた。

 

「ちちー! ははー!」

 

 変身解除したツカサとカイリの胸に、元気よく飛び込んでいく。フラミンゴを除く、三人の笑顔がはじけた。

 

 

 かくして、無貌改めムーヴォは、BL警察の元で保護されることになった。

 

「どうもお騒がせしました。お詫びに、カード購入にかかったのと同じ金額を、のちほど警察本部から支給します」と一礼し、ツカサは相方と少女を連れて帰って行った。フラミンゴは、「はあ」と消え入りそうな声で応じるばかりだった。

 

「……何だか、子供ができたみたい」

 

 頬を赤く染めるツカサに、カイリが茶々を入れる。

 

「子供服とか、色々買い揃えておくか。まあ、その前に本部に報告しないとヤバそうだけど」

「間違いないわ」

 

 きりっとした表情になり、ツカサは言った。

 

 

「保護すると決めたはいいものの、この子の監視は確実に付けられるでしょうね。万が一、元々の無貌のように成長してしまったら……異常が起きたときは、止めるしかないもの」

「俺たちが起こさせねえよ。大丈夫」

「ちちとはは、いちゃいちゃ!」

 

 語らいながら歩く二人に優しく手を引かれ、ムーヴォは楽しそうに笑っていた。事情を知らない人が見れば、本物の家族のように見えたことだろう。

 誰もが皆、BLACON・SUNのような輩ばかりではない。超次元生命体とだって、きっといつか分かり合える。

 そう信じて、人類は未来に向かって進み続けていくのであった。

 

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