百合レンジャーvsBLレンジャー   作:クリスタルスカイ

107 / 394
27 無貌の過去!③

 そこまで捨てても、貴族たちを相手取って戦うにはまだ力不足だった。意を決した彼女は、性格や記憶の一部さえも捨て、ついに超次元界最強の戦士として覚醒した。

 のちの無貌は、ツカサやカイリたちに自らの過去をほとんど何も明かさなかった。あれは「教える必要がないから明かさなかった」ではなく、「記憶を失っているから明かせなかった」のである。

 愛する人の仇を討つために強さを得たのに、強さを得る過程で愛する人のことさえ忘れてしまうとは、悲しい矛盾だ。

 

 かくして、レベッカは数年の時を経て強者と成った。

 この時点でルーカスの顔や名前を思い出せなくなっていたが、「私は誰か大切な人を人間界で失った」「その原因を作ったのは貴族たちだ」ということだけははっきりと覚えていた。強い復讐心と使命感に突き動かされて、彼女は数年ぶりに王宮を訪ねた。

 

 

「何者だ、貴様!」

「その得体の知れない姿は何だ!」

 

 行く手を阻む門番も、衛兵も、衛兵長も、ロードを切り開いて突き進む。

 

「……レベッカという名はとうに捨てた。私の名は『無貌』。貴様ら旧時代の支配者を葬り、新たにこの世界を統べる者だ!」

 

 無貌の腕の一振りで、彼らはたちまち肉片に変わった。無数の原典を扱える今の彼女に、敵はなかった。

 王宮の中を進み、兵士を次々に薙ぎ払う。やがて広間に出た無貌を、大勢の貴族が取り囲んだ。

 変わり果てた姿になった無貌が、数年前にここを訪れた平民だと気づく者はない。原典のイメージを借りて超人のような姿に変身している者と、武器を構えている者が半々。皆、警戒心を剥き出しにしていた。

 

 

「衛兵を倒した程度でいい気になるなよ、侵入者め。お前はここで終わりだ!」

「くたばれ、平民!」

 

 両腕をクロスさせた、比較的若い十名の貴族が、光線を放とうとする。

 

「『ギンガ・クロス』……」

「『ザナディウム』……」

「『スペリオン』……」

「『レッキング』……」

「『フレイム・スフィア』……」

「『スプラッシュ』……」

「『ストリウム』……」

「『ゼスティウム』……」

「『ゼペリオン』……」

「『セルジェンド』……」

 

 だが、彼らが必殺技の名前を言い終わるよりも早く、無貌が原典の力を使った。日本刀に似た形状の武器を召喚し、唱える。

 

 

「――『BANG・解』。『逆様邪・無貌塞(さかさまよこしま・むぼうふさがり)』」

 

 撫子の花の形の台座が出現し、能力が発動。それは「対象に敵と味方の認識を逆転させる」というものだった。つまり、今の貴族たちは無貌を味方、他の貴族を敵だと誤認した状態に陥っている。

 味方へ向けて色とりどりの光線を撃ち合った結果、戦場は悲惨なものになった。一分もしないうちに、貴族たちは同士討ちをして崩れ落ちていた。

 

「奇跡の時間を楽しめたのなら、何よりだ」

 

 そう言い捨てて先に進もうとした無貌だったが、一人だけまだ倒れていない者がいることに気づき、足を止める。

 

「貴様は……」

 

 

 あの日、レベッカに散々暴力を振るった貴族の男ではないか。着物に返り血こそ浴びているけれども、特に傷を負った様子もなくピンピンしている。

 

「同士討ちを誘う能力か。なかなか面白いが、所詮は雑兵向きの力。俺のような強者には、そんなものは通用しない」

 

 百合・BLレンジャーと交戦した際、無貌がこの「BANG・解」を使わなかった理由がこれだ。相手がタフであればなかなか同士討ちが成功しないし、それなら、より高威力の原典を使って早期決着を狙った方が良い。

 いつの間にか、男の腰にはドライバーが装着されていた。小型のボトルをそこに装填し、レバーを回転させて変身する。

 

『ブラコン! ライダーシステム! エボリューション!』

 

 二本のボトルに反応し、ドライバーが「ARE YOU READY?」と認識音声を発する。刹那、星座早見盤と蛇の意匠を持った、赤いアーマーの戦士の姿になった。

 

『ブラコン! ブラコン! ネトル・ブラコン! フッハッハッハッハッハッハ!』

 

 

「失敬、まだ名乗っていなかったな。俺の名はネトルト。原典の力を数種類しか使えない代わりに、無限に等しい性癖の力を司っている」

「性癖だと?」

 

 無貌は怪訝そうな顔をしようとした。表情がないため、上手く感情を表に出せない。

 

「なるほど。どうやら貴族どもは、原典のイメージ以外に他の力をも独占していたらしい。だが、そんな矮小なイメージの力などありはしない。あらゆる原典を手にした今の私には、性癖の力など通用せぬ」

「なら、なぜ俺は今、他の奴らの攻撃を凌いで生き残ってるんだろうな?」 

 

 ネトルトは皮肉っぽく言った。

 

 

「答えは簡単。性癖の力が、お前の想像以上に強いからだ。お前は無数の原典を扱えるようだが、性癖が持つイメージもまた、原典と同様の影響を俺たちに及ぼす!」

 

 その名の通り「寝取り」の力と、変身に使用した「ブラコン」、あるいはそれ以上の性癖のパワーを有するわけか。

 

「面白い。叩き潰してくれよう」

 

 無貌は刀を捨て、新たな原典を使うべく構えた。原典と性癖、どちらが強いか試してやろうと考えた。

 




今回、ご迷惑をおかけした作品
・遊戯王セブンス
・ニュージェネレーションのウルトラマンの皆様(「ギンガ」~「デッカー」)
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定