百合レンジャーvsBLレンジャー   作:クリスタルスカイ

11 / 394
第11話 クイーンズ・シャットダウン

 その頃、ブルークイーンは熱帯雨林の動物が多くいるエリアを捜索していた。ゾウ、カワウソ、マレーグマ、ニシキヘビ……多種多様な動物たちの姿が見られる。

 

「命あるところ、正義の雄叫びあり! って感じですわね。ゴークイーンズにも動物モチーフを取り入れてみたいですわ〜!」

 

 最初こそ元気に園内を歩いていたブルーだったが、俄に足取りが重くなる。そう、このエリアは熱帯雨林の気候をも忠実に再現しており、他のエリアと比べても気温と湿度が段違いに高いのであった。

 

「も、もうダメですわ。あぁ、邪鬼退散……」

 

 ぐったりと倒れ込んだところを百合エックスが発見し、レッドクイーンのときと同様にパトカーで連行する。

 ブルークイーンの弱点は、「戦闘が長引くと体温が上昇し、熱暴走を起こす」というもの。要するに、肉体がオーバーヒートしてまともに戦えなくなるのだ。

 動物園で巧みに姿を隠し、捜索を長引かせる。長時間歩かせて疲労を蓄積させ、戦闘不能に陥らせるのがカイリの狙いだった。

 

(あとは頼んだぞ、ツカサ)

 

 残る敵はイエロークイーンとビートタイツ、スタッグタイツ。彼らのウィークポイントについても既に調査済み。そして、弱点の情報も百合レンジャーと共有済みである。

 勝利の法則は決まった、気がした。

 

 

 イエロークイーン、ビートタイツ、スタッグタイツの三人を相手に、BLエックスは善戦していた。

 確かに、女王三人組の鞭捌きは本物だった。実際にSMプレイで鍛えたのだろうと思われるテクニックは、戦場においても有効である。しかし、タイツ組はどうもぎこちない。拳銃を発砲するもことごとく当たらず、イエロークイーンの足を引っ張っている。

 

「ちょっと、どこを狙っているんですの! もう少しで私に当たるところでしたわ〜!」

「す、すみません。銃なんか撃ったことないので、勝手が分からなくて」

 

 しばしば戦闘を中断して言い争っていた。何だか反撃するのも馬鹿馬鹿しかったので、ツカサは放っておいた。

 そうして銃撃戦が繰り広げられたり繰り広げられなかったりして、三十分が経過する。突然、イエロークイーンの動きが鈍くなった。

 

「……くっ。どうやら限界が来たようですわね。ビート、スタッグ、ここは任せますわ。私は一時的に戦線離脱しますわ〜!」

 

 言うが早いか踵を返し、すたこらさっさと逃げていく。彼女の後ろ姿を、二人のタイツ男はぽかんとして見つめていた。

 

「どうしたんでしょう?」

「さあ。お花を摘みに行ったのでは?」

 

 

(ようやくチャンスが巡ってきたようね)

 

 耐え忍んだ甲斐があった。仮面の下で、ツカサが不敵に笑う。

 相棒カイリからの通信で、イエロークイーンの弱点は把握している。彼女は常人を上回るパワーを発揮する代わりに、定期的にエネルギーを補給しないとダウンしてしまうのだ。

 効率よくエネルギーを補給するため、イエローがお菓子をよく食べていることも調査済み。だからこそ、ツカサは確信できた。「もうイエロークイーンは戦場に戻ってこない」と。

 

(イエローはBL1号と2号が攻略してくれるはず。あたしの役目は、残ったビートとスタッグを無力化することだけよ!)

 

 

「えっ、売り切れですの?」

 

 行きつけの駄菓子屋の店先で、イエロークイーンは素っ頓狂な声を上げた。

 

「ごめんね、お嬢ちゃん。さっき大きなトラックが来て、お菓子をあるだけ全部買っていっちまったのさ。今日はもう店じまいにしようと思ってたんだ」

 

 店主のおばあちゃんは、皺だらけの顔でニコニコ笑っている。仕方なく、女王は肩を落として回れ右をした。

 

「落ち込んではいけませんわ! 敵が強ければ強いほど、やる気出る出る! 一度でダメなら、何度でも決めるだけですわ〜!」

 

 彼女は一体、何と戦っているのだろうか。

 気を取り直して向かった二軒目のケーキ屋さんでも、すげなく断られてしまった。さらに三軒目の和菓子屋さん以降も、全部売り切れだった。

 

「すみません、完売です」

「ごめんなさいね。たった今、芋羊羹売り切れちゃったのよ」

 

 五軒目にもなると心身ともに疲れ果て、イエロークイーンはとうとう地面に膝を突いてしまった。

 

「ううっ。芋羊羹を食べて巨大化してやるつもりでしたのに、エネルギーがなくなってギブアップなのですわ。空腹限界、ゴーオンクイーンですわ〜!」

「……ターゲットの無力化に成功!」

「BL警察の権限において、容疑者を確保する!」

 

 そこに、待ち構えていたBL1号、2号が出動する。ぐったりしているイエロークイーンを両脇から抱え上げ、パトカーの中へ押し込んで連行した。

 

「やれやれ。付近の店のお菓子を買い占めるのも大変だったな」

「ええ。通販サイト『アマゾンズ』にも助けられましたね」

 

 二人はそんなことを話しながら、パトカーのランプを明滅させて走り去っていく。

 

 

「あとはあんたたちをぶっ飛ばすだけね!」

 

 バズーカ型の武器・推し推し砲を両手で構え、BLエックスは言い放った。だが、ビートタイツとスタッグタイツは小馬鹿にしたように彼女を笑う。

 

「エンダーの情報によると、その武器は元々、三人でパワーを込めて発射するものだとか。はたして、お前一人で撃てるかな?」

「前回は相棒と二人がかりで何とか撃てたようだが、ちっぽけなお前一人にできるわけがない!」

「……何がちっぽけよ! あたしはAカップじゃなくてBカップなんだからね!」

 

 ショタレンジャーに変身した少年・コウから受けた傷は、まだ癒えていなかったらしい。割とどうでもいいポイントで、ツカサは怒った。

 

「それに、あたしは一人じゃない。たとえ同じ戦場にいなくても、あたしには魂で繋がっている仲間たちがいる!」

 

 

 敵の弱点を分析してくれた、百合ブルーとイエロー。その指示に従い、レッドクイーンとブルークイーンを攻略した百合エックス・カイリ。お菓子を買い占めることでイエロークイーンのエネルギー補給源を断ち、消耗させたBL1号と2号。皆が力を合わせたからこそ、巨大な悪と戦えているのだ。

 

「ていうか、推しを愛でて過ごすはずだった休日を、よくも潰してくれたわね。あんたたちの罪はある意味、財布をぶっ壊したときよりもずっと重いわよ!」

 

 不思議なことが起こった。BLエックスの体が怒りの叫びとともに、限界を超えた量の力を放出したのである!

 

 俄には信じられないが、みるみるうちに推し押し砲にエネルギーがチャージされていった。三人分の力を溜め込んだバズーカは、いつでも発射可能な状態になっている。

 

「喰らえーっ! 豚の角煮っ!」

 

 

 撃ち出された光弾が迫り、ビートタイツとスタッグタイツは慌てふためいた。

 

「こうなったら、俺が必殺技で迎撃する! ビート、お前は下がれ!」

「何だよ、俺が先に技を撃とうと思ってたのに。俺に被るな!」

 

 と、まあこんな具合で、連携が取れずに揉めているうちにエネルギー弾を受け、変身解除されてしまった。

 気絶したタイツ男たちに手錠をかけて初めて、ツカサは「ふう」とため息をついた。やけに疲れる休日出勤だった。

 

「……それにしても、エンダーって誰のことだったのかしら?」

 

 

 脱獄したゴークイーンズはこうして再び刑務所送りになり、今度はもっと厳重な警戒体制が敷かれることになった。なお、タイツマンのうち諸事情によって一人だけ省かれていた男も、後日BL1号、2号の手で捕縛された。

 目の前の脅威は去ったが、高次元生命体エンダーはまだ諦めていない。弟のベノムの仇を討つために、今も新たな作戦を練っているかもしれない。

 仲間たちと力を合わせて、戦え、BLレンジャー! 負けるな、百合レンジャー!

 




今回、ご迷惑をおかけした作品
・ガオレンジャー
・カーレンジャー
・ゴーオンジャー
・仮面ライダーアマゾンズ
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定