その頃、ブルークイーンは熱帯雨林の動物が多くいるエリアを捜索していた。ゾウ、カワウソ、マレーグマ、ニシキヘビ……多種多様な動物たちの姿が見られる。
「命あるところ、正義の雄叫びあり! って感じですわね。ゴークイーンズにも動物モチーフを取り入れてみたいですわ〜!」
最初こそ元気に園内を歩いていたブルーだったが、俄に足取りが重くなる。そう、このエリアは熱帯雨林の気候をも忠実に再現しており、他のエリアと比べても気温と湿度が段違いに高いのであった。
「も、もうダメですわ。あぁ、邪鬼退散……」
ぐったりと倒れ込んだところを百合エックスが発見し、レッドクイーンのときと同様にパトカーで連行する。
ブルークイーンの弱点は、「戦闘が長引くと体温が上昇し、熱暴走を起こす」というもの。要するに、肉体がオーバーヒートしてまともに戦えなくなるのだ。
動物園で巧みに姿を隠し、捜索を長引かせる。長時間歩かせて疲労を蓄積させ、戦闘不能に陥らせるのがカイリの狙いだった。
(あとは頼んだぞ、ツカサ)
残る敵はイエロークイーンとビートタイツ、スタッグタイツ。彼らのウィークポイントについても既に調査済み。そして、弱点の情報も百合レンジャーと共有済みである。
勝利の法則は決まった、気がした。
イエロークイーン、ビートタイツ、スタッグタイツの三人を相手に、BLエックスは善戦していた。
確かに、女王三人組の鞭捌きは本物だった。実際にSMプレイで鍛えたのだろうと思われるテクニックは、戦場においても有効である。しかし、タイツ組はどうもぎこちない。拳銃を発砲するもことごとく当たらず、イエロークイーンの足を引っ張っている。
「ちょっと、どこを狙っているんですの! もう少しで私に当たるところでしたわ〜!」
「す、すみません。銃なんか撃ったことないので、勝手が分からなくて」
しばしば戦闘を中断して言い争っていた。何だか反撃するのも馬鹿馬鹿しかったので、ツカサは放っておいた。
そうして銃撃戦が繰り広げられたり繰り広げられなかったりして、三十分が経過する。突然、イエロークイーンの動きが鈍くなった。
「……くっ。どうやら限界が来たようですわね。ビート、スタッグ、ここは任せますわ。私は一時的に戦線離脱しますわ〜!」
言うが早いか踵を返し、すたこらさっさと逃げていく。彼女の後ろ姿を、二人のタイツ男はぽかんとして見つめていた。
「どうしたんでしょう?」
「さあ。お花を摘みに行ったのでは?」
(ようやくチャンスが巡ってきたようね)
耐え忍んだ甲斐があった。仮面の下で、ツカサが不敵に笑う。
相棒カイリからの通信で、イエロークイーンの弱点は把握している。彼女は常人を上回るパワーを発揮する代わりに、定期的にエネルギーを補給しないとダウンしてしまうのだ。
効率よくエネルギーを補給するため、イエローがお菓子をよく食べていることも調査済み。だからこそ、ツカサは確信できた。「もうイエロークイーンは戦場に戻ってこない」と。
(イエローはBL1号と2号が攻略してくれるはず。あたしの役目は、残ったビートとスタッグを無力化することだけよ!)
「えっ、売り切れですの?」
行きつけの駄菓子屋の店先で、イエロークイーンは素っ頓狂な声を上げた。
「ごめんね、お嬢ちゃん。さっき大きなトラックが来て、お菓子をあるだけ全部買っていっちまったのさ。今日はもう店じまいにしようと思ってたんだ」
店主のおばあちゃんは、皺だらけの顔でニコニコ笑っている。仕方なく、女王は肩を落として回れ右をした。
「落ち込んではいけませんわ! 敵が強ければ強いほど、やる気出る出る! 一度でダメなら、何度でも決めるだけですわ〜!」
彼女は一体、何と戦っているのだろうか。
気を取り直して向かった二軒目のケーキ屋さんでも、すげなく断られてしまった。さらに三軒目の和菓子屋さん以降も、全部売り切れだった。
「すみません、完売です」
「ごめんなさいね。たった今、芋羊羹売り切れちゃったのよ」
五軒目にもなると心身ともに疲れ果て、イエロークイーンはとうとう地面に膝を突いてしまった。
「ううっ。芋羊羹を食べて巨大化してやるつもりでしたのに、エネルギーがなくなってギブアップなのですわ。空腹限界、ゴーオンクイーンですわ〜!」
「……ターゲットの無力化に成功!」
「BL警察の権限において、容疑者を確保する!」
そこに、待ち構えていたBL1号、2号が出動する。ぐったりしているイエロークイーンを両脇から抱え上げ、パトカーの中へ押し込んで連行した。
「やれやれ。付近の店のお菓子を買い占めるのも大変だったな」
「ええ。通販サイト『アマゾンズ』にも助けられましたね」
二人はそんなことを話しながら、パトカーのランプを明滅させて走り去っていく。
「あとはあんたたちをぶっ飛ばすだけね!」
バズーカ型の武器・推し推し砲を両手で構え、BLエックスは言い放った。だが、ビートタイツとスタッグタイツは小馬鹿にしたように彼女を笑う。
「エンダーの情報によると、その武器は元々、三人でパワーを込めて発射するものだとか。はたして、お前一人で撃てるかな?」
「前回は相棒と二人がかりで何とか撃てたようだが、ちっぽけなお前一人にできるわけがない!」
「……何がちっぽけよ! あたしはAカップじゃなくてBカップなんだからね!」
ショタレンジャーに変身した少年・コウから受けた傷は、まだ癒えていなかったらしい。割とどうでもいいポイントで、ツカサは怒った。
「それに、あたしは一人じゃない。たとえ同じ戦場にいなくても、あたしには魂で繋がっている仲間たちがいる!」
敵の弱点を分析してくれた、百合ブルーとイエロー。その指示に従い、レッドクイーンとブルークイーンを攻略した百合エックス・カイリ。お菓子を買い占めることでイエロークイーンのエネルギー補給源を断ち、消耗させたBL1号と2号。皆が力を合わせたからこそ、巨大な悪と戦えているのだ。
「ていうか、推しを愛でて過ごすはずだった休日を、よくも潰してくれたわね。あんたたちの罪はある意味、財布をぶっ壊したときよりもずっと重いわよ!」
不思議なことが起こった。BLエックスの体が怒りの叫びとともに、限界を超えた量の力を放出したのである!
俄には信じられないが、みるみるうちに推し押し砲にエネルギーがチャージされていった。三人分の力を溜め込んだバズーカは、いつでも発射可能な状態になっている。
「喰らえーっ! 豚の角煮っ!」
撃ち出された光弾が迫り、ビートタイツとスタッグタイツは慌てふためいた。
「こうなったら、俺が必殺技で迎撃する! ビート、お前は下がれ!」
「何だよ、俺が先に技を撃とうと思ってたのに。俺に被るな!」
と、まあこんな具合で、連携が取れずに揉めているうちにエネルギー弾を受け、変身解除されてしまった。
気絶したタイツ男たちに手錠をかけて初めて、ツカサは「ふう」とため息をついた。やけに疲れる休日出勤だった。
「……それにしても、エンダーって誰のことだったのかしら?」
脱獄したゴークイーンズはこうして再び刑務所送りになり、今度はもっと厳重な警戒体制が敷かれることになった。なお、タイツマンのうち諸事情によって一人だけ省かれていた男も、後日BL1号、2号の手で捕縛された。
目の前の脅威は去ったが、高次元生命体エンダーはまだ諦めていない。弟のベノムの仇を討つために、今も新たな作戦を練っているかもしれない。
仲間たちと力を合わせて、戦え、BLレンジャー! 負けるな、百合レンジャー!
今回、ご迷惑をおかけした作品
・ガオレンジャー
・カーレンジャー
・ゴーオンジャー
・仮面ライダーアマゾンズ