百合レンジャーvsBLレンジャー   作:クリスタルスカイ

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4 野・外・変・身

 ナイスタイミングで、お菊の解説が入った。

 少女たちは何か料理を作っているらしく、楽しそうな会話が聞こえてくる。

 

「皆ーっ! 私の考えた、スペシャルなキャンプご飯をご覧あれ! とても複雑な工程で作ります!」

「おおーっ!」

「まずここに、野菜や肉などの具材を細かく切ったものを持参します。それらを鍋に入れて、カレールウと一緒に煮込みます。はい、出来上がり!」

「って、煮込んだだけじゃん⁉ 全然複雑じゃないよ、ナデシコちゃん!」

 

 平和そのものな会話内容に、裕介たちは心が浄化される思いだった。

 

 

「名前に『百合』と入ってるが、百合要素は特になさそうだな」

「強いて言うなら、仲の良い子同士が一緒のテントで寝てるくらいかしら」

 

 百合レンジャー代表としてカイリがコメントし、お菊がそれに応じた。

 

「申し訳程度の百合要素だ……」

「原作重視ってことなのかもしれないわよ」

 

 しかし、楽しいキャンプの時間は突如終わりを告げる。少女の一人が「きゃーっ!」と悲鳴を上げ、彼方を指差したからだ。

 

「また、あいつらが来たよ!」

 

 

 先刻、お菊は「対立する二つのグループが暮らしている」と言った。「ゆりキャン△」族と敵対する何かが、この平和な場所を荒らしに来たらしい。

 襲来したのは、ゾンビの群れ。いや、ゾンビと言うには動きが鈍いわけでもないし、体から触手のようなものを垂らしている個体もいる。体が腐敗しているわけでもなさそうで、その集団は一定の清潔感を維持していた。

 

「彼らは『東京ビーエル』。事件に巻き込まれ、人間とそれを喰らうグールのハーフになってしまった青年が、何だかんだで美食家グールの男と美しい友情を築いた。そのことがきっかけで生まれた一族よ」

「どういう世界観なのよ⁉」

 

 BL警察代表として、ツカサが一応ツッコんでおいた。もうどこからツッコんでいいのか分からないので、とりあえず一箇所だけ。

 

 

「とにかく、このまま放っておいたらあの子たちがグールに襲われてしまうわ。助けに行きましょう!」

 

 ツッコみもそこそこにVSチューナーを構えようとした彼女を、お菊が「まあ待ちなさい」と制する。声をひそめてアドバイスした。

 

「私たちが加勢するまでもないわ。ほら、見て」

 

 キャンプをしていた女子高生のうち、ムーヴォと同じ桃色の髪の少女が、仲間たちを庇って前に出た。さっき、手作り料理について自信満々に話していた子だ。

 

「下がってて、皆。このキャンプ場の平和は、私が守るから!」

 

 

 その腰にドライバーが出現。スイッチをぽちぽちと押すことで彼女は光に包まれ、「スリー、ツー、ワン!」のカウントとともに変身したのであった。

 

「宇宙~~~、キターッ!」

 

 宇宙服を現代風にデザインし直したようなアーマーを纏い、少女は右拳を突き出して堂々と名乗った。なぜか、名乗る前に両腕を挙げるポーズを取るのも忘れなかった。

 

「私は超次元ライダー・ナデシコ! テントを張らせてもらうよ!」

 

 

「フン、変身したくらいでいい気になるな。カネコくん、君も戦闘態勢に入るんだ!」

「分かってますよ」

 

 カネコと呼ばれた少年は、読んでいた文庫本を閉じて億劫そうに言った。戦場で読書とはなかなか酔狂だが、それだけ本が好きなのかもしれない。

 

「……変身」

『デンジャラス・グール!』

 

 文庫本の代わりにゲームカセット型のアイテムを取り出し、腰に装着されたドライバーに装填。認識音声が鳴った次の瞬間、白と黒を基調とした、骸骨を思わせる装甲の戦士に変わった。

 

「彼らグールは、人間を捕食することで自身の肉体を再生できる。あのドライバーで変身した姿は、元々持っていた再生能力に加え、自分に不死身の力を付与するのよ」

「そんなの、倒しようがないんじゃないのか⁉」

 

 やたら詳しいお菊の解説に、裕介はハラハラしていた。

 はたして、超次元ライダー・ナデシコはベルトのスイッチをいくつか起動させた。

「キャンプファイヤー!」「テント!」「寝袋!」といった認識音声とともに、キャンプ用品を模した武器をどんどん召喚する。

 

 

 空から降ってきた大きなテントがグールたちを押し潰し、寝袋から放たれる催眠音波が敵を熟睡させる。そうして行動不能に陥ったところを、ナデシコの手から放たれる炎が焼き尽くしていった。カネコが変身した骸骨っぽい戦士も、変身しても防御力はさほど上がっていないらしく、普通に火炎放射でダメージを受けている。「ゆりキャン△」族が非好戦的という設定は、どこかに行ってしまったらしい。

 

 そう。この二つのグループが争い合い、決着がつかないのは、「ゆりキャン△」族の圧倒的火力と「東京ビーエル」族の驚異的な再生能力が拮抗しているからなのだ。両者とも全力で戦っているが、ナデシコが攻撃してもグールは時間が経つと傷を修復し、また襲ってくる。アウトドア派のナデシコは体力がある方なので、グールがしぶとく攻めようとしてもスタミナ切れになることはない。よって、毎回引き分けで終わるのだ。

 

 

「一つの力を二つに分け、お互いが争いながら永遠に生きてゆく。これ即ち、超次元生命体の宿命なのよ。百合が滅べばBLも滅び、BLが残れば百合もまた残る。すべては虚しい戦いなのね……」

「そうか。すべては繰り返される。世界の平和を守るために、超次元生命体は永遠に戦い続けるんだ……ってお菊さん、これそんなに壮大なスケールの話なのか⁉ ついつい調子合せちまったけどよ!」

 

 草むらから顔だけを覗かせて戦いの行方を見守りつつ、裕介はお菊にツッコんだ。

 

「行くよ~! 『ライダー・キャンプファイヤー&テントキック』!」

「望むところだ。『クリティカル・エンド』!」

 

 高くジャンプしたナデシコが、テント型のエネルギーを放ってカネコをその内部へ閉じ込める。右足に炎を纏わせ、急降下の勢いとともに跳び蹴りを叩き込んだ。

 カネコはというと、黒いオーラを帯びた必殺キックでナデシコの技を迎え撃つ。両者が激突した衝撃で、辺りには爆風が吹き荒れた。

 

 

「……そろそろ、両グループとも消耗したんじゃないかしら。今のうちに先へ進みましょう」

 

 茂みから出て忍び足で進む松本・オリジン・お菊に、一行は慌てて続いた。

 

「なあ、お菊さん。超次元生命体がどういう暮らしをしているのかは、今ので何となく分かった気がするよ。けど、これだけじゃ無貌支持派についての対策は立てられないぜ」

「当たり前でしょ。だって、ここはまだ目的地ではないもの」

 

 振り返らずに、彼女は歩みを進める。

 

「私たちが目指すのは、この世界の中心に位置する王宮。近頃、無貌支持派がここを根城にしているとの情報が入っているわ。既に人間界へ尖兵も送っている。彼らがこれ以上良からぬことをするより先に、止めるわよ」

 

 各所に点在するレジスタンスの拠点で食料を補給しながら、中央へ向かうつもりだと彼女は説明した。

 

 

「あなたの彼女さんが言った通り、いきなり中心部に乗り込むのは危険なの。まずは外縁部から、徐々に移動していきましょう。そのうち、この世界の在り方についても分かってくるんじゃないかしら」

「だと良いけどな……」

 

 初っ端からキャンプ好きな女子高生とグールの激闘を見せられたので、裕介は超次元界に慣れる気がしなかった。

 というか、個人的には「超次元界を視察できたらいいなー」くらいに思っていたのだが、お菊の口ぶりから察するに、隙あらば敵の本陣に乗り込もうとしてないか? 大丈夫なのだろうか、これ。

 他にも「食べ物は口に合うだろうか」「トイレは水洗だろうか」など諸々の不安が皆の胸に去来していたが、一同はあえて口にしなかった――不安に感じている内容が、完全に観光に来た人のそれである。

 

 

 未知の環境にやって来てしまった百合・BLレンジャーたち。はたして彼らは、無貌支持派への対処の糸口をつかめるのだろうか?

 戦え、百合レンジャー! 負けるな、BLレンジャー! 皆の絆で、宇宙を掴め!

 




今回、ご迷惑をおかけした作品
・東京喰種
・仮面ライダーフォーゼ
・仮面ライダーエグゼイド
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