「黙って聞いていれば、レジスタンスの我らを見事にスルーしおって!」
「叩き潰してやる!」
怒り狂った戦士たちが、一斉にリボンズドライバーを装着。量産型の「リボンズトルーパー」へ変身した。
『RISE! RAGE! REQUIEM! アメリカン・ファイター!』
蜘蛛とリボンの意匠を持つリボンズのアーマーを簡易的にしたような装甲と、各々が召喚した刀を武器に、男たちはユリエロイドの足元へ殺到した。威勢よく斬りかかっていくものの、あまりダメージを与えられていない。
「邪魔だ。モブキャラに用はない!」
理不尽すぎる台詞とともに、悪魔の蹴りが炸裂。一撃でトルーパーたちは吹っ飛ばされ、変身解除された。
「レジスタンスの戦力がどれほどのものなのか、詳細な調査はできていない。が、少なくとも、この付近の拠点に巨大ロボを隠しているという情報は入っていない。すなわち、巨大化した我への対抗手段を持たないのはお前たちも同じだということだ」
勝ち誇るユリエロイドを見上げ、お菊が悔しそうに唇を噛む。仲間たちがいとも簡単にあしらわれたのももちろんだけれども、「敵が今の自分たちの戦力を分析し、その上で最も有利な戦術を取ってきた」ことによる敗北感が否めなかったのだ。初っ端から戦闘形態になってきたが、ユリエル人はかなりの策士である。
「この野郎、皆を傷つけやがって。許さねえ!」
倒れたレジスタンスたちを守るように、カイリが立ちはだかった。彼の隣に、ツカサも並び立つ。
「行くぜ、ツカサ。俺たちの最強の技をぶつけてやるんだ!」
「分かったわ!」
手と手を繋ぎ、光に包まれて「デュアル・百合&BL・ウェーブ!」と叫ぶ。金銀のアーマーに、フリルが付いた白と黒の衣装を重ね着して、二人は百合ブラックとBLホワイトへ変身を遂げた。
「「百合&BL・マーブルスクリュー‼」」
戦隊にあるまじき行為だ。名乗りさえも省略し、最初からクライマックスで行く。手のひらから白と黒の光の奔流を撃ち出し、彼らはユリエロイドへ最大火力の必殺技をぶつけた。
「――『百合&BL・獄炎弾』!」
しかし、悪魔もまた、手のひらから火炎を放ってきた。光と炎が激突し、相殺される。
「な、何っ⁉」
「あたしたちの最強の技が、かき消された⁉」
あたふたしている二人を見て、ユリエロイドはにやりと笑った。
「我の使う『獄炎弾』の威力は、お前たちの『マーブルスクリュー』と互角。だが、驚くのはまだ早い……」
悪魔が何か言いかけたのを遮って、裕介と美明日が「加勢するぜ、先輩方!」と割って入った。それぞれオメガ珈琲シルバーと超次元ライダー・来部へ変身し、武器を構える。
「威力が互角ってことは、他の技の威力も上乗せすれば押し勝てるってことだろ。図体はでかいくせに、大したことねえ能力だな。――『BANG・解』!」
『WING! WING! WINNING! ホーリー! ホーリー! ホーリー! ホーリー! ホーリー・来部!』
珈琲サイブレードの刀身が黒く染まる。スタンプを押印することで来部の装甲がメタリックホワイトに変わり、強化形態となる。
「よし、一斉攻撃だな。もう一度、『百合&BL・マーブルスクリュー』!」
「『オメガ天衝』!」
「あなたに慈悲は与えない。『ホーリー来部・ジャスティスフィニッシュ』!」
百合ブラックとBLホワイトが両手に集めた稲妻が光のエネルギーに変わり、手から射出される。その輝きに、シルバーの繰り出した斬撃と、ホーリー来部が銃から放った光線も加わり、槍のようにユリエロイドへ喰らわせた――かに思われた。
「人の話は最後まで聞くものだ」
悪魔の右手から、三発の火炎が連続して放たれた。炎は槍を呑み込んで焼き尽くし、またしてもカイリたちの技は消し飛ばされてしまった。
「我の『獄炎弾』は、連射が可能。それも、高速でだ。お前たちが変身アイテムやら何やらをガチャガチャ操作している間に、五発は撃ち込める」
では、なぜ先刻は三発しか撃たなかったのか。答えは簡単で、ユリエロイドがまだ本気を出していないからだ。意識しているのかは分からないが、ツカサの言う「先に自分の能力をすべて見せて、手の内を明かしてしまったキャラは大抵負ける」というセオリー通りの戦い方をしている。
「仮にリボンズやリボンズトルーパーたちの攻撃力もすべて合わせたとしても、『獄炎弾』五発分の破壊力を超えることは困難だろう。ましてや、技の発動速度においてお前たちが我を上回り、不意を突くことも不可能。もはや、勝負は決したも同然なのだ」
「な、何て奴だ……」
カイリが後ずさった。
「図体がでかいだけでも相当ヤバいのに、一発一発が俺たちの最強の必殺技に匹敵する炎を連射できるのかよ。こんなの、どうやって倒せばいいんだ⁉」
「この人、あたしたちの技や武器を徹底的に研究して、対策を練りに練ってるわね。まるで、あたしたちを倒すためだけに力を鍛えてきたみたい。一筋縄ではいきそうにないわ」
仮面の下で、ツカサも歯噛みする。
「同感だ。クソッ、ロボを超次元界へ呼べたら話は別なんだけどな」
「そうね。……あっ。私、閃いたかもしれない」
裕介が悪態を吐く一方で、美明日はぽんと手を叩いた。
「人間界からロボを持ち込めないのなら、私たちが今ここで、超次元界の物質を使ってロボを作ればいいんじゃないかしら。ほら、超次元界のものはイメージの力で形状を変化させることも可能みたいだし。私たちの閃きとイマジネーションを総動員すれば、きっとできるわ!」
どこからか取り出した、まだ真っ白なスケッチブックに線が滑り始める。美明日は絵の心得もあるようで、さらさらと二体のロボを描き出した。
彼女が描いたうちの一つは、消防車、ショベルカー、スポーツカー、飛行機、ヘリコプターの五機が合体した、宝石のようにキラキラ輝くロボット。もう一つは、五つの電車が横並びになってそのまま合体したような、シンプルな合体方法の電車ロボットだった。
「毎度ご乗車ありがとうございます!」というアナウンスも、マンガの吹き出しのようなかたちで書かれている。
「できたわ。あとは、野営に使われているキャンプ用品の金属部分とか、そこら中の金属類を材料にしてロボットのイメージを付与すれば……」
「そうはさせるか!」
ユリエロイドの飛ばした炎が、ホーリー来部へ迫る。背中の羽を展開して飛び、回避には成功したものの、火の粉を浴びたスケッチブックは黒焦げになってしまった。
「ああっ、せっかく描いたのに……」
「人間ごときが超次元生命体の真似をするなど不遜も良いところだ。まあ、急ごしらえのロボットで打開できる状況ではないと思うが、希望の目は積んでおくに限る。お前たちは今、満に一つの逆転の可能性さえも失ったのだ」
今だって、やろうと思えばユリエロイドは炎を連射できたはずだ。あえてそうせず、スケッチブックを燃やすための一発だけにしたのは、やはりまだ全力を出していないからだろう。自分たちは手加減されている。舐められているのだ。
「どうすればいいんだよ。なあ、お菊さん、何か手はないのか⁉」
焦燥を隠そうともせず、裕介は彼女に問うた。
「このままじゃ俺たち、全滅だぜ」
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