ムーヴォが「ペット飼いたいます」と言い出したので、ナオヤは少女を連れてペットショップ「どんぶらこ」に来ていた。
店内には色々な動物たちがいた。その中でも、ナオヤが目を止めたのはインコやオウムの類であった。籠の内側で止まり木に止まり、以前訪れた客の言葉を真似しているようだ。
『コノホシヲ、ナメルナヨ!』
「なあ、この鳥なんか良いんじゃないか」
どんな客だよ、と思いつつ、ナオヤはムーヴォに言った。BLファイヤーの力の元となっている原典の影響か知らないが、何となく惹かれるものがあったからだ。
「うむ」
桃色の髪の幼子は、腕組みをして考えた。なお、なぜこんなポーズを取るのかというと、好きなアニメの影響らしい。
「ムーヴォ、鳥じゃなくてお馬さん飼うます」
「いやいや、さすがにペットショップに馬がいるわけ……」
「あるよ」
喫茶店のマスターみたいな服装の店主が、奥から現れた。そして、壁際に置かれた二つの檻を指差した。
「メルメルメ~!」
「パルパルモ~ン!」
変な鳴き声のポニーが二匹、中に収まっている。一方は白、もう一方は黒い毛並みで、どちらも馬にしては小柄で可愛らしかった。しかし、やっぱり鳴き声が普通ではない。
「……すみません、店主さん。飼うとしても普通のポニーがいいので、今回はキャンセルしたいのですが」
「いいよ」
ナオヤが怖々と申し出ると、店主は涼しい声音で快諾した。
「え~。ムーヴォ、さっきのお馬さんまあまあ気に入ってた」
「ダメだぞ。留守の間にポニーなんか飼い始めたら、君のパパとママがきっと怒る。飼育するためのスペースや餌代を考えたら、飼うのは相当難しいからな。百歩譲って飼うことになったとしても、もうちょっと普通の馬にすべきだ」
「え~~」
なおも駄々をこねるムーヴォだったが、ふと真顔になり、反対側の壁にあるケージを見つめる。
「あっ。ムーヴォ、あの子にするます」
それは、やたら毛がもふもふした白い犬だった。
「お、おう」
いまいちこの子の好みが分からない。もしくは、ただ単に移り気なだけか。
まあ、犬ならば比較的飼いやすいだろう。少なくとも馬よりはマシだ。少女の気分がまた変わらないうちに、ナオヤは「よし、飼おうか」と決めた。
「店主さん、このワンちゃんをお願いします」
「いいよ」
「支払いはクレジットカードで」
「現金決済以外では、キビダンゴ・ポイント払いしかできないよ」
「そ、そうですか。聞いたことのない支払方法だな……」
仕方なく、革財布から一万円札を何枚も取り出す。会計を済ませながら、ナオヤは考えた。背後ではムーヴォが「犬さん、犬さん!」とはしゃいでいる。
(こっちは超次元生命体も出てこないし、のどかなものだが……カイリたち、上手くやっているだろうか)
次元の壁を越えるドアをくぐってから、彼らからの連絡は途絶えていた。
(無事でいてくれよ。お前たちが戻らないと、この子が悲しむ)
「ぶえっくしょい!」
戦いの最中だというのに、カイリはでかいくしゃみを一発かました。緊張感の欠片もない所作に、ユリエロイドも呆れ顔である。
「うるさい奴らだ。そろそろとどめを刺してやろう」
「うるさいのはてめえの方だぜ。怪獣だか宇宙人だか知らねえけどよ、そういう生物に関する原典のパワーを使ってるなら、作法ってものがあるんじゃないのか」
「何っ?」
「さっきから、ベラベラ喋ってうるせえんだよ。神秘性がなくなるだろ!」
巨大ロボを使えない状況で不利なのは確実。カイリはなるべく話を長引かせて、時間稼ぎに徹するつもりだった。
「分かった。ならば、生物っぽく鳴こう。ユリユリユリユリ! エルエルエルエル! ……とでも言えば、満足ですか?」
「今更だけど、お前いい性格してるな⁉」
とか言ってる間に、悪魔の巨大な足がどんどん近づいてきて、カイリたちを踏み潰さんとする。一同は必死に逃げ回るが、一歩のサイズが違いすぎてすぐ追いつかれてしまった。
「遊びは終わりだ。『百合&BL・獄炎弾』、十連射!」
振りかざした手のひらから、十発の火球が撃ち出されんとする。
「うわーっ⁉」
「ど、どうするのよ、これ⁉」
一発一発の威力が「百合&BL・マーブルスクリュー」に相当する技を十回も連続で使われたら、さすがのカイリたちでも対処できない。皆青ざめ、防御姿勢を取った。
「ソシャゲだって十連ガチャを回せばそこそこレアなのが当たるんだから、十連火炎弾なんか受けたら一人くらい死ぬんじゃないかしら。あはははは、あはは……」
「おい美明日、遠い目をしてわけ分かんないこと言ってんじゃねえぞ! 一人どころか、下手したら全滅だぜ⁉」
とうとう現実逃避じみた行動を取った恋人を前に、裕介もあたふたしている。肩を揺すっても、美明日の反応は鈍い。
「なあ、美明日……って、ええ?」
誰もが死を覚悟したとき、目を疑う現象が起きた。ホーリー来部への変身がなぜか解除されると同時に、美明日の肉体が二つに分裂したのだ。新たに生まれた黒い服の女と、本来の白い服の女に。
もしかすると彼女は、美明日が精神的に弱るタイミングをずっと待っていたのかもしれない。宿主の体から抜け出し、再び実体化する隙を虎視眈々と狙っていたのだ。
「――傷は癒えた。久々に受肉して、カレーでも食べたくなってきたわ!」
黒のニットにダメージジーンズという出で立ちの、もう一人の美明日。彼女の腰には、既にドライバーが装着されている。
『CUCKOLD・UP!(カーコルド・アップ)』
そして、スタンプ型アイテムを押印し、蝙蝠の意匠を持つアーマーを装着した。
『IMMORAL!(不道徳で) DISORDER!(無秩序な) DESIRE!(欲望) 超次元ライダー・ネトル!』
「……何で、お前が」
まだ生きているんだ。しかも、なぜ美明日の体内から現れたんだ。
裕介はただ呆然として、倒したはずの敵を見つめていた。
今回、ご迷惑をおかけした作品
・金色のガッシュ‼
・ウルトラマンR/B(ルーブ)
・仮面ライダーセイバー