百合レンジャーvsBLレンジャー   作:クリスタルスカイ

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13 ルーカスの性癖!

「何言ってるのよ。意味分かんないわよ⁉」

「なあ、皆。百合だとかBLだとか、それぞれに性癖を持ってるお前たちなら、少しは理解してくれるよな? 俺の性癖は――『愛する人の手で殺されたい』。他殺願望と呼ばれるものだ」

 

 ルーカスの言わんとするところを理解して、一同が息を吞む。

 

「俺はどうしてもレベッカに殺されたかった。だが、心優しい彼女にそんな真似ができないことは分かりきっていた。だから俺は、死を偽装したんだ! 悲しみと怒りに呑み込まれたレベッカが修羅と化し、俺のことも分からなくなって、侵略する世界ごと俺を殺してくれるのを待ち望んでいたのさ!」

 

 

 妻を絶望に突き落とすために、彼は念入りに準備をしていた。上級貴族のネトルトに大金を掴ませ、人間界へ発つ前日に話を持ち掛けたのである。「近々レベッカという平民の女が王宮を訪ねてくるかもしれないが、彼女は自分のことを付け回しているストーカーだ。ここは一つ、痛い目に遭わせてやってくれないだろうか」と。

 

 平民と婚約したことで王宮を追われたものの、かつてのルーカスは悪くない身分で、ネトルトとも知己だった。彼は快く引き受けてくれた。その上で、「人間界で危険に巻き込まれてはいけない」と、親切にも、自身が持つ性癖と原典のパワーを分けてくれたのだ。

 ネトルトから与えられたのは、「おねロリ」の性癖と、忍びなれども忍ばない忍者ヒーローの原典。二つを合わせて用いることで、ルーカスはロリーニンジャーへと変身していた。

 変身能力を得たきっかけも何もない。彼はただ、原典と性癖の力を使っていただけなのだ。

 

 

「俺のことを外道だと思うか? 非難したければすればいい。だがな、ここまで徹底的にやらないと復讐の鬼になどならないくらい、レベッカは優しい女だったんだ。俺の性癖を満たすためには、必要なことだったのさ。ハハハハハッ!」

 

 饒舌になったルーカスは、なおも語り続けた。

 

「俺がロリーニンジャーとして倒してきたのは、いてもいなくても大差ないような、いわゆる一般怪人のみ。ヒーローを演じつつ、大魔王に槍を使わせたときのように肝心な場面では敵側が有利になるように裏で動き、俺はずっと人間界の滅亡を望んできた!」

 

 

 ヤンデッレ・キースと「性癖王」で決闘したこともあったが、ルーカスにとっては、勝敗にかかわらず無貌の遺伝子を宿すカードが人間界に残ればそれで良かった。彼女の復活の可能性が残っていれば、万が一百合・BLレンジャーが無貌を倒してしまっても、やり直しがきく。

 さすがのルーカスも、五枚のカードがバックアップ・プログラムで生み出すのが無貌ではなくその娘だとは思わなかったのだ。

 

 来部ボクサーに歌を仕込んだときは、本当に戦いを妨害するつもりだった。まさか、あの歌を説明書のように使って逆転勝ちしてしまうとは想定していなかった。

 一応、無貌との決戦に参加してはいる。ただ、ロボを犠牲にして攻撃を防ぐ役目は別にキンジ以外が担っても良かったわけで、最後の一斉攻撃でもせいぜい一太刀浴びせただけだ。勝利に貢献したとは言い難い。

 

 

「俺は人間界の原住民に襲われてなどいない。人間界へ同行した仲間たちを殺したのは、他でもないこの俺だ! そして自分も行方をくらますことで、あたかも部隊が全滅したかのように見せかけた。レベッカを無貌にしたのも、彼女の攻撃目標を人間界にさせたのも、すべては俺の思惑通りに進んでいたのさ!」

「……ふざけんじゃないわよっ!」

 

 目に涙を浮かべて、ツカサが叫んだ。

 

「あんたの性癖のために、どれだけ多くの命が奪われてると思ってんのよ。それに、無貌の……レベッカや、ムーヴォちゃんの気持ちなんて、あんたは全然考えてないじゃない。愛する人を泣かせて、散々苦しませて、何が性癖よ。酷すぎるわ!」 

「黙れ!」

 

 しかし、ルーカスは怯まなかった。

 

 

「お前たちのせいだ。お前たちが大人しく、次元大魔王や無貌の侵略に屈していれば、これほど多くの血が流れることはなかった。ましてや、無貌が死んだ今となっては、俺の性癖が満たされる機会は永遠に失われたのだからな。それがどれほど辛いことか、お前たちに理解できるとでも言うのか!」

「死んでも分かりたくねえな」

 

 今度は、カイリが皮肉っぽくコメントした。

 

「いいか、よく聞け。特殊な性癖を持ってるってことは、社会的少数派だってことだ。百合やBLが流行る前は、俺やツカサも少数派の一人だった。少数派ってのはな、自分の趣味を他人に押しつけたりせず、無理に布教しようともせず、周りに迷惑をかけないようにひっそりと楽しむのが良いんだよ。てめえのやってきたことは、その真逆だぜ」

「下等生物の論理で、超次元生命体を語ること自体が愚かだと言っているのだ」

 

 俺はずっと影になって生きてきた、とルーカスは呻く。

 

 

「無貌の手で貴族の大半が殺されたとはいえ、超次元生命体として生きていた頃の俺を知る者も僅かにいる。三武神ネトルや高次元生命体が人間界を訪れるようになり、俺は正体を隠すため、キンジ・オネガワとして人間界に潜伏してきた。ハイテンションな別人格として活動するのは、なかなか骨が折れたぞ。それなのに、お前たちは……俺が積み上げてきたものをすべて壊したんだ!」

 

 ここまでルーカスの独白を聞いてきて、一同は判然としなかった。なるほど、彼が何者で、今までどういう考えに基づいて行動してきたかは理解できた。けれども、では彼は何のためにここに現れたのだろうか。どうして、わざわざ憎い相手の前に姿を見せ、正体を明かしたのか。

 ようやく、答えが分かった。

 

 

「人間ども。俺はお前たちを絶対に許さない。お前たちが無貌を殺したがために、俺の夢はもう二度と叶わない。その罪は死に値する!」

 

 ルーカスの全身から、殺気が迸った。

 

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