ようやく日本直通のゲートが開いたので、ツカサとカイリは大喜びかつノリノリ飛び込んだ。
「逃げたら一つ、進めば二つ手に入るわ!」
「無限の彼方へ、さあ行くぜ!」
まあ、無理もない。今回「どこへでも行けるドア」が開くまでには、小一時間かかっていたのだから。
次は裕介と美明日の番である。二人は先輩たちほどテンションが高くなかったため、冷静に別れを惜しむだけの余裕を持っていた。
「ピーター、お菊さん、超次元界の攻略は任せたぜ」
「私たちは、向こうでルーカスを警戒するわ」
手を振り、桃色のドアをくぐろうとしたとき、四人のいる地上に巨大な影が落ちた。
「……おやおや。侵入者を見つけたと思ったら、人間界へ逃げ帰ろうとしているではないか!」
土煙を巻き上げ、身長五十メートルほどの奇獣が降り立ったのである。
「見逃してやるべきかどうか、吾輩は三秒間悩んだ。しかし、獲物を仕留める機会を自ら捨てては、出世のチャンスもなくなるというもの。もっとも、吾輩の全身の眼から逃れることなど、誰にもできないであろうがな!」
「な、何だ? ……あと、どうでもいいけど喋り方のクセ強いな、こいつ」
出現した巨大怪獣は、大きな目玉を頭部とし、そこから小さな目玉だらけの胴と手足が伸びているという不気味な外見をしていた。
新たな超次元生命体が邪魔をしてきたので、裕介たちはゲートを通るのを中断し、身構える。
「おっと失礼、自己紹介がまだであったな! 吾輩の名は『ガン・メン・Q』。無貌支持派の第四位の実力者である。諸君らを処刑させていただこう!」
「ユリエロイドに続いて、またビッグサイズな奴が出てきやがったか」
裕介は舌打ちした。支持派の連中め。こっちが巨大ロボを呼べないのを見越して、自分たちに有利な原典をぶつけてきたか。
だが、ネトルティ来部にパワーアップした美明日の前にユリエロイドは敗れている。今回はそう簡単にはやられない。
「悪いな、俺たちは急いでるんだ。早く先輩方と合流したいんでね。インストール、『オメガ珈琲シルバー』!」
『パーフェクトアップ! 超次元ライダー・ネトルティ来部!』
『DEEP! DROP! DANGER! アメリカン・ファイター! リボンズ!』
「……こういうときに一人だけ専用の変身音がないとちょっと寂しいのは、なぜなんだろうね」
オメガ珈琲シルバー、ネトルティ来部、リボンズ、リボンダーマンの四人が並び立った。なお、ピーターはドライバーこそ手にしているが、量産型のリボンズトルーパーとして戦うよりはリボンダーマンとして戦った方が力を発揮できると判断し、あえてベルトを使用していない。いずれ、彼専用のアイテムか何かを開発してあげるべきだろうな、とお菊は思う。
「……って、お菊さんは何で変身できてるんだよ。オリジナルのリボンズドライバーは破壊されたはずだろ」
「あなたのせいでね」
「そ、その節は誠に申し訳ございませんでした……」
ツッコミを入れたが逆にダメージを受けてしまった裕介に、彼女は淡々と説明する。
「無名にドライバーを奪われこそしたけど、変身に使うスタンプまでは失っていないわ。だから、量産型ドライバーに押印すればリボンズへの変身は可能。ただし、スペックはオリジナルに劣るけどね」
「なるほど、そしてすみませんでした。よし、気を取り直して一気に畳みかけるぞ!」
「待って、早川くん」
突っ込もうとした恋人の腕を引き、美明日が止めた。
「あの怪獣、体から熱反応が全く感知されないわ。私たちの常識で理解できる生き物ではないかもしれない。要注意よ」
「そ、そうか。よく分かったな?」
「超次元ライダー来部の装備を少し改造して、敵の分析ができるようにしておいたの」
「さすがは大教授美明日だ」
軽口を叩きながらも、裕介はさてどうすべきかと考えていた。相手は全身目玉だらけだから、どこを攻撃しても痛がりそうだ。けれども美明日の言うように、油断ならない敵である。自称第四位だし。
「どうした。かかってこないのなら、こちらから行くぞ!」
ガン・メン・Qが吠え、体中の眼球から光弾を放った。
「吾輩の全方位爆撃、受けてみよ!」
対してネトルティ来部はマントを広げて飛び、リボンズとリボンダーマンはリボンを伸ばして素早く移動してかわした。裕介だけは特に回避手段がなかったので、ひたすら走って避けた。
「――『BANG・解』。『大紅蓮NTR丸』!」
美明日が空中でNTRブレードを握り、能力を発動。氷の龍の翼を装着し、大気中の水をことごとく氷の結晶の形に変えていった。
「あなたの使う原典や性癖は特殊なようだから、直接攻撃は避け、じわじわと間接的にダメージを与えさせてもらうわよ」
「何をする気であるか?」
急激に下がっていく気温に身震いし、ガン・メン・Qは尋ねた。
「私の『BANG・解』は、空気中に存在する水を自在に操れる。今、あなたの周囲にあった水蒸気を、全て氷に状態変化させたわ。湿度は限りなくゼロに近くなっているはずよ」
全身の目が乾燥した気分はどうかしら、と美明日が意地悪な笑みを浮かべる。なかなか理系らしい嫌がらせだ。
「あなたの能力が目を起点にして発動されるものだ、と仮定しての話だけれど、それが全部ドライアイになってしまえば戦いづらいでしょう?」
「なるほど、確かにこれではやりづらい。だが、吾輩は決して諦めない。ギリギリまで頑張って、踏ん張ってやるのだ!」
湿度低下に伴って、怪獣の眼球がどんどん充血していく。
「それに何より、吾輩の主戦場はここではない! 現実世界をいくら荒らされようとも、大勢には影響しないのである!」
「……えっ?」
思わず美明日が聞き返したとき、怪獣の目玉のうち最も大きな、頭部にあたる部位が光った。発射された光線が、彼女含む四人を呑み込む。
(しまった。私としたことが……!)
あまりの眩しさに、美明日はぎゅっと目を閉じた。
今回、ご迷惑をおかけした作品
・機動戦士ガンダム 水星の魔女
・トイ・ストーリー
・ウルトラマンガイア