どうやら、彼が今使った原典は「過去に登場したキャラクターを召喚して操る」という能力らしい。認識音声が流れるとともに、倒したはずの強敵たちが現れた。元三武神のうち二人と、それを守護する役目を担っていた者たちである。
彼らはネトルティ来部に気づくと、じりじりと彼女との距離を詰めた。
「感じる。お前の中にはネトルが潜んでいるな? かつて俺たちと肩を並べ、そして裏切った女が」とアマエマックス。美明日を庇うように裕介が前に出ると、今度は超ブラゴクウが声を荒げた。
「オメガ珈琲シルバーですね! あのときは惜しくも敗れましたが、今回こそは負けませんよ!」
「同感。俺も奴には敗北を喫している。まあぶっちゃけとどめを刺したのはロリーニンジャーとBLファイヤーだったわけだが、とりあえずお前から倒してやる!」
隣ではガードノイド・マッシュもうんうんと頷いている。彼だけあんまり緊張感がない。真っ黒な装甲を持つロボットなのに金髪マッシュの頭という外見も、シュールであった。
「……こいつらは俺と美明日で倒す。終わったら追いつくから、先輩方はルーカスとダレンを頼んだぜ」
仲間にそう告げると、シルバーとネトルティ来部はそれぞれ、珈琲サイブレードとNTRブレードを構えた。そして叫ぶ。
「「――『BANG・解』!!」」
「『喫茶斬月』!」
「『大紅蓮NTR丸』!」
一方は刀身が漆黒に染まった大剣を握り、もう一方は背中に氷の龍の翼を装備する。
「面白い。叩き潰してやる!」
アマエマックスを先頭に、三人の超次元生命体は必殺技を発動した。一気にけりをつけてやると言わんばかりに、猛攻を仕掛けてくる。
「『必殺・スラッシュバブシマム』!」
「『ライトニング・ブラコンフラッシュ』!」
「マッシュガン、『アタック』モード!」
ガードノイド・マッシュが援護射撃を行う中、アマエマックスと超ブラゴクウが二人へ肉薄。前者は盾と剣を合体させたような武器「バブライザー」で斬撃を繰り出し、後者は赤い龍のエネルギーを矛に纏わせて突きを放った。
三人は知らなかった。裕介と美明日が積んできた修行を。
一度名古屋に帰った二人は、味噌カツ、天むす、名古屋コーチンといった名物をお腹いっぱいになるまで食べた。食べた後は、温泉でまったりした。そして、他の全ての時間を剣術の修行に充てたのだった。
朝から晩まで剣をひたすら振るい続ける、過酷な修行。美味しいご飯と疲れの取れる温泉で肉体を全回復させてから、体力がゼロになるまで自らを追い込む。それにより、戦士たちは「BANG・解」を鍛え上げることに成功したのだった。
掃除兼修行みたいなことばかりしてきた百合・BLレンジャーが、まともに特訓して強くなったのは初めてかもしれない。今、その力が全開する。
「『オメガ十字衝』!」
漆黒の剣を二つに分離させたオメガ珈琲シルバーが、二刀を構える。十字を描くように振るった刃は、通常の「オメガ天衝」より巨大な斬撃を形成して撃ち出した。
「……『NTR界氷結』」
刹那、美明日の肉体が全体的にグラマーになった。この技の発動時、彼女は五歳くらい老け、三十路を控えた色っぽくて良い女になる。アーマーの上からでも微かに分かる、形の良い胸を揺らし、ネトルティ来部は凛として言った。
「大紅蓮NTR丸を解放して四歩のうちに踏みしめた空間の、地水火風のすべてを凍結する。これが私の真の必殺技よ」
眼前の敵が青ざめた。慌てて距離を取ろうとするも後の祭りで、悠然と歩みを進めるネトルティ来部から逃れる術はない。
これこそが、裕介の「BANG・解」の極致。美明日の「BANG・解」の完成形。
両者へ近づきすぎたアマエマックスと超ブラゴクウは、「NTR界氷結」に手も足も出なかった。全身を氷の層で覆われて身動きができなくなったところに、オメガ珈琲シルバーの「十字衝」が直撃する。氷ごと木っ端微塵に砕かれ、斬撃の余波はガードノイド・マッシュをも呑み込んで大爆発させた。
「――あのときの借りは返したぜ」
かつてアマエマックスと戦ったときは惨敗し、原典無しを守り切れなかった。彼の呆気ない最期を見届け、裕介は呟く。
爆発したガードノイドの体の破片が、パラパラと降り注いだ。
鉄の臭いは今でも嫌いだ。けれど、もう慣れた。
半人前だったあの頃から成長したオメガ珈琲シルバーは、今では立派な戦士だった。
『ジゲン・ライド! ヤンデッレ・キース!』
カードが刺さったような外観の、黒と青を基調としたアーマー。それを纏った姿のダレンは、さらに別のカードを銃型の召喚機へセットした。
「ルーカス。貴様に似合いの相手をくれてやろう」
星条旗のあしらわれたバンダナを頭に巻き、サングラスをかけた金髪の大男が出現。ルーカスの前に立ちはだかった。
「久しぶりだな、ロリーニンジャー……いや、ルーカス! あのときの雪辱、果たさせてもらうぜ!」
ルーカスがまだ「キンジ・オネガワ」として活動していた頃、キースは彼に「性癖王」というカードゲームで勝負を挑み、敗北している。そのことをいまだに根に持っているところを見るに、どうも「ジゲン・ライド」で召喚された戦士は生前の記憶を保持しているらしい。先刻召喚された超ブラゴクウ、ガードノイド・マッシュも同様である。
「もう『性癖王』はやめだ。純粋に、力でお前を倒すぜ!」
キースの腰にベルトが装着される。刹那、彼の前方の空間に「ヤンデレ」の文字の赤いロゴが五つ浮かんだ。そして、真っ赤な狐をイメージさせるアーマーの上に、青と白のメカニカルな装甲を重ねるようにして変身プロセスを終えた。
「これがダレン様に与えられた、俺の新しい力。超次元ライダーギース、『ヤンデレーザー・ブーストフォーム』だ!」
「……知らないのか? 狐は虎に勝てないぜ」
白虎の戦士に変身しているルーカスは、ベルトのカードデッキから一枚引き抜いた。斧型の召喚機へセットすると、「アドベント」と音声が鳴る。すると、身長二メートル以上はあろうかという巨躯の白虎型モンスターが出現した。
「奴を仕留めろ」
ルーカスの命を受け、白虎のモンスターは唸り声を上げてギースへ突撃する。
「ここからがハイライトだぜ!」
対するギースは、ダレンやルーカスに勝るとも劣らないスピードでの超高速移動を開始した。炎を纏ったパンチやキックを次々に叩き込み、モンスターを翻弄、あっという間に弱らせていく。
「俺が司る性癖『ヤンデレ』は、いわば愛情の暴走。病的に歪んで溢れ出した心のエネルギーが、俺の体を突き動かす! もう誰にも止められないぜ!」
ものの数秒で、ヤンデレーザー・ブーストフォームのギースは白虎のモンスターをノックアウト。派手な爆発とともに吹っ飛ばしてしまった。
前回の戦いでは、「病みのゲーム」を始めるために使われたヤンデレ性癖の力。肉弾戦に用いた場合でも、その威力は十二分に発揮されている。
「……上出来だ、キース。褒美に援軍を寄こしてやろう」
ダレンが笑い、別のカードを銃に装填した。
『ジゲン・ライド! BLACON・SUN!』