百合レンジャーvsBLレンジャー   作:クリスタルスカイ

15 / 394
第15話 伝説の四天王の正体

その巨人は眼鏡をかけ、杖をつき、マントを羽織っていた。

 身長五十メートルはあろうかという巨体で部下を見下ろし、巨人がため息をつく。闇に包まれた空間には、その音がやけに大きく響いた。

 

「ツンデレキラーが倒されたか。よりによって、あの出来損ないの手で」

「はい、マジェスティ」

 

 ローブを纏った男・高次元生命体のエンダーが巨人の足元に跪く。あまりにも彼我の身長差がありすぎて、エンダーからは巨人の膝までしか見えない。

 

「……まあ、良い。ツンデレキラー、所詮貴様は流れ星。いかに輝こうと、落ちる運命にあったのだ」

 

 巨人は杖をついていない左手を虚空へ伸ばし、何かを手繰り寄せるように動かした。すると、ジリリリリというけたたましい音とともに、棺のようなものが現れる。

 

「マジェスティ、何ですか? これは」

「コールドスリープカプセルだ」

 

 

 黒く染まった大地に、カプセルは音もなく下りていった。やがて蓋が開き、中に籠もっていた冷気が溢れ出る。

 

「このカプセルに眠っているのは、我が配下、次元四天王の最後の一人。他の三人が作戦失敗したときに目覚めるよう、アラームをセットしておいたのだ!」

「アラームでコールドスリープから目覚めたのですか……?」

 

 エンダーは不思議に思ったが、これ以上巨人の機嫌を損ねたくなかったため、あえて追及しなかった。巨人――次元大魔王の好きにさせておく。

 

「さあ、今こそ覚醒するのだ。次元四天王の最後の一人にして最強の戦士よ!」

 

 大魔王が杖を振り上げると同時に、カプセルの中に横たわっていた影がゆっくりと上体を起こした。

 

「……俺様が目を覚ました。すなわち、伝説が始まるということだ」

 

 

 メタリックな紅のアーマーを装着した戦士が、突然大都会に降り立った。右手に剣を、左手に盾を構え、四方八方に斬撃を飛ばして街を破壊している。

 赤い斬撃が命中すると、高層ビルも一発で木っ端微塵になった。

 

「そこまでだ!」

 

 破壊活動を許すまいと、警察と怪盗のヒーローたちが現場に到着する。ツカサたちBL警察、カイリたち百合怪盗が謎の戦士を包囲し、銃を向けた。

 ショタレンジャーやゴークイーンズのように、人々へ特定の性癖を押しつけるタイプの悪党には見えない。紅の戦士が行っていたのは、容赦のない無差別攻撃に他ならなかった。どうやら只者ではなさそうである。

 

「お前たちが百合レンジャーとBLレンジャーか。適当に暴れていればおびき出せると思ってはいたが、仕事が早いな」

 

 謎の戦士は落ち着きはらった態度で、七人を見回した。そして、ある一点で目を留めた。

 

「姿を変えても無駄だ。見つけたぞ、トランガ」

「……えっ?」

 

 ツカサたちには、何のことか分からなかった。

 今しがた「トランガ」と呼ばれたのは、滝沢ナオヤ。BLファイヤーとして戦力に加わった、頼れる仲間だったからだ。

 

 

「俺様が今日ここに来た理由はすなわち、トランガ、お前を倒すためだ! ついでに百合レンジャーとBLレンジャーも葬ってやる!」

 

 紅の戦士はいきなり斬りかかってきた。間一髪でそれをかわし、ナオヤも音声コマンドを入力して変身する。

 

「問答無用というわけか。『BLファイヤー』!」

 

 近未来的なデザインの赤と黒のアーマーが装着された。BLディフェンダーをソードモードに変形させ、謎の戦士の剣を受け止める。

 

「……ちょ、ちょっと待てよ! お前ら知り合いなのか⁉︎ あと、トランガって何??」

「そもそも、あんた何者? 素性も明かさずに攻撃してくるなんて、危ないじゃない!」

 

 ツッコミが不在でカオスな状況になりそうなところを、カイリとツカサが救った。二人から矢継ぎ早に質問されて、謎の戦士は攻撃の手を止めた。

 

「そう言われると危ない気がしてきた。すまなかった」

「「素直に謝ったし⁉︎」」

「状況を理解しないまま殺されるのは、可哀想だからな。俺様がきちんと説明してやろう」

 

 

 謝罪した動機が不純だったが、紅の戦士は一旦剣を下ろして話し始めた。

 

「俺様はスペースバスター・『SSソルジャー』。次元四天王の最後の一人にして、高次元生命体のボス、次元大魔王様の隠し球的な存在だ」

「次元大魔王って……」

「何というか、そのまんまなネーミングだな」

 

 ツカサとカイリは顔を見合わせた。おそらく、以前ツンデレキラーが言っていた「あのお方」とは次元大魔王のことだったのだろう。

 

「ちなみにSSとはサイドストーリーの意で、すなわち二次創作小説を指すことも多い。俺様は名前の通り、あらゆるジャンルのSSを司る戦士だ。特定の性癖にしか適応していない雑魚とはレベルが違うから、覚えておけ。俺様の強さはSS級だ!」

 

 かっこよく決めてる風だけれども、要するに「すべての性癖に対応できるど変態」ということである。

 

 

「それで? 次元四天王最強のあんたが、どうしてナオヤくんを知っているわけ?」

「ナオヤ?」

 

 仮面の下で、SSソルジャーは眉をぴくりと動かした。

 

「ああ、なるほど。ナオヤというのは、人間としての名前か」

「人間としてって……まるでナオヤくんが人間じゃないみたいな言い方ね」

「その通りだ。すなわち、ナオヤの正体は高次元生命体。彼は元々、俺様たちの仲間だった」

「……へ?」

 

 突然明かされた、衝撃の真実。一同はしんと静まり返ってしまった。

 

「ん? お前たち、もしかして何も知らなかったのか?」

 

 何てこった、とSSソルジャーが頭を掻く。

 

「こいつは色々な意味で伝説になるぜ」

 

 

「その男の本当の名前はトランガ。次元大魔王様のご子息にあたる」

 

 百合レンジャーとBLレンジャーは、あまりの急展開にオッとおったまげーしょんしてしまっていた。無理もない。滝沢ナオヤは謎多き新戦士だったが、そこへさらに追加設定がてんこ盛りになったのだから。

 カイリが首を傾げる。

 

「話が見えねえな。仮にナオヤが大魔王の息子だとして、どうして父親やその部下の四天王たちを倒そうとしてるんだよ。辻褄が合わないぜ」

「すなわち、トランガが大魔王様を憎んでいるからだ」

 

 話が長くなりそうだと思ったのか、SSソルジャーは変身解除して一息ついてから説明を続けた。ハンサムな男である――なぜか上半身裸だったが。

 

「大魔王様はこれまでに、何百もの別次元の世界を植民地化してきた。侵略を続ける父を止めようと、トランガは大魔王様の暗殺を企てた。すなわち、トランガは処刑すべき裏切り者なのだ」

 

 SSソルジャーの話から推測するに、暗殺は失敗したのだろう。一族を裏切ったトランガは追われる身となり、カイリたちの生きるこの世界へ逃げてきたのかもしれない。何となく事情は分かった。

 その間、ナオヤはずっと俯き、誰とも視線を合わせようとしなかった。拳を固く握りしめ、屈辱に耐えているようだった。

 

 

「トランガ。大魔王様はあのとき、お前を殺すこともできた。だが殺さなかった。なぜか分かるか? ――すなわち、お前を愛していたからだ。せっかく大魔王様が情けをかけて下さったというのに、お前はまた性懲りも無く反逆を試みるというのか?」

「父さんが俺を愛していただと?」

 

 ナオヤが顔を上げた。怒りに歯をぎりぎりと食いしばり、紅の戦士を睨みつけている。

 どうやら、彼と大魔王の関係はかなり複雑らしい。

 

「ふざけるな。あんなものは愛や情けではない。父さんはただ、強者の余裕を見せつけただけだ。奴が侵略を続ける限り、俺は何度でもお前たちと戦う!」

「決意は固いようだな」

 

 仕方ない、とSSソルジャーが首を振る。再び変身を遂げ、剣の切っ先をナオヤへ向けた。

 

「残念だ。すなわち、お前を処刑する」

 




今回、ご迷惑をおかけした作品
・キュウレンジャー
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定