「――させねえよ」
不意に放たれたのは、VSチューナーの銃撃。百合・BLレンジャーの面々の一斉射撃を胸部装甲に浴びて、ルーカスは攻撃を中断せざるを得なくなった。舌打ちし、戦隊へ振り向く。
「せっかく良いところだったのに、興ざめじゃないか」
「よせよ、ルーカス。ダレンとの勝負は、もうついてるだろ。次は俺たちとやってもらうおうじゃねえか」
仲間たちとの話し合いの結果、同情の余地があるダレンよりもルーカスを優先的に倒すことに決まっていた。威勢よく言い放ったカイリは、ふと仮面の下で目を細めた。
「なあ、一つだけ聞くぜ。お前が今までやってきたことは全部、惚れた女と歪んだ性癖のためか?」
「その通りだ」
ルーカスは間髪入れずに答える。
「レベッカと俺の愛のためなら、俺は世界さえ犠牲にしよう」
「……分かった」
自分の行いを何ら恥じていない、狂気じみた返答。それを受けて、カイリは静かに言った。
彼は、いや百合・BLレンジャーの全員は、ルーカスとは相容れないことを改めて理解した。
『どんな理由があろうとも、自分の好きなものを他人に押しつけたり、強制したりしてはダメよ。卍帝国に操られるがまま、百合派とBL派に分かれて互いを憎しみ合った日々の虚しさを、コウくんも知っているでしょう?』
『攻めと受けも、SとMも、お互いに愛し合って信頼し合っているからこそ、主従関係を伴った愛情表現として成立するのよ。しっかりとした関係を築かず、ただ市民へ一方的に痛みを与えているだけのあんたたちは、愛とは何なのかを全然分かってないわ!』
ショタレンジャーや女王戦隊スリークイーンズS(のちに「特命女王戦隊ゴークイーンズ」に改名する)と戦ったときからずっと、ツカサたちのスタンスは一貫している。特殊な性癖を持っていること自体は悪ではない。が、それによって周囲に迷惑をかける輩は許せない。
ロリーニンジャーとして共闘したことがあるだけに、一同の中にはどこか、ルーカスを倒すのを躊躇う気持ちがあった。とりわけピーターにはその傾向が強い。しかし、やはりルーカスは倒すべき悪だ。高次元生命体との戦いのときと同じ、性癖のために人を傷つける悪魔であった。
「吹っ切れたぜ。これで迷いなく、てめえをぶちのめせる。……行くぞ、皆! チェンジスタンバイ!」
「おうッ!」
一同は、隠し持っていた警察手帳型の新アイテムを取り出した。それを左胸のアーマーにセットし、強化変身を遂げる。
ルーカスの「他殺願望」を破るため、BL警察主導で開発した新装備。その名も、「VS・スワットモード」である。ツカサとカイリはそれぞれBLホワイト、百合ブラックへの強化変身を一度解除してから、VS・スワットモードを装着する。
この日のために修行してきたのは、「BANG・解」を鍛え上げた裕介と美明日、性癖を磨き上げたピーターばかりではない。戦隊の面々も、過酷な訓練に耐えてスワットモードを使いこなせるようになったのだ。
「――エマージェンシー! 百合・BLレンジャー!」
警察手帳を構えた戦士たちが、一斉に叫んだ。
S・P・Y&B、スペシャル・ポリス・百合・BLレンジャー。燃えるハートでクールに戦う、七人の刑事と怪盗たち。彼らの任務は、地球に侵入した異次元の犯罪者たちと戦い、人々の平和と安全を守ることである。
防弾ベストを思わせる漆黒のアーマーを纏い、大型マシンガンを召喚したヒーローたち。なお、原典の影響か、カイリとナオヤはそれらの代わりにブレス型のアイテムや剣を装備している。
「……何だと?」
並び立った戦士を眺め、ルーカスは眉をひそめた。
「今の俺はダレンを気にせず『他殺願望』の力を振るえる上に、強敵への対応力もある。『他殺博徒』を使えば、発動条件を無視していきなり『他殺願望』のパワーを引き出すことも可能だ。それにもかかわらず俺に楯突くなど、愚の骨頂だな。まさか、勝てるとでも思っているのか?」
「ええ、思ってるわ」
気丈にもツカサが言い放った。
「知らないの? 正義は必ず勝つのよ」
彼女の言葉を合図にしたかのように、百合・BLレンジャーは順に名乗りを上げた。
「一つ。非道な悪事を、憎み!」とケイイチロウ・BL1号。
「二つ。不思議な事件を、追って!」トウマ・百合ブルーも続く。
「三つ。未来の科学で、捜査!」とサクヤ・BL2号。
「四つ。よからぬ宇宙の悪を!」とウミカ・百合イエロー。
「五つ。一気にスピード退治!」とツカサ・BLエックス。
「六つ。無敵がなんかイイ! ……あ、それと追加で、無法な悪を迎え撃ち、恐怖の闇をぶち破る! 夜明けの怪盗! 百合エックス!」
空気を読まず、一人だけやたら長い口上を述べたのはカイリだった。のちに本人が語ったところによると、「無敵がなんかイイ」だけだとちょっと物足りなかったらしい。
「百鬼夜行をぶった斬る。地獄の番犬! BLファイヤー!」
一方のナオヤは、長すぎず短すぎない塩梅にまとめた。
さて、まだ名乗っていないのは裕介、美明日、ピーター、お菊である。幸いにもこの原典には女性戦士の枠がまだ残っていたため、とりあえず美明日とお菊は原典に倣った。
「真白き癒しのエトワール! 超次元ライダー・ネトルティ来部!」
「なみいる悪を、白日のもと暴き出す。光のレジスタンス! アメリカン・ファイター、リボンズ!」
「才を磨いて、己の個性を見つけ出す。アメイジング・オリジナリティー! オメガ珈琲シルバー!」
もう空いている枠がないので、裕介は仕方なく、普段通りに名乗った。
「リボンをつけて返そう。君に受けた屈辱を!」
ピーターは久々にこの決め台詞を吐いてから、クワガタのスタンプを量産型リボンズドライバーに押印し、変身した。元々はリボンダーマンのために造られたベルトを、本人が使うようになるまでにこれほど長い時間がかかるとは、誰も予想していなかったに違いない。
復活した無名からお菊がスタンプをくすねてくれたおかげで、ようやくピーターも変身できるようになった。
『デリート・アップ! UNKNOWN! UNLEST! UNLIMITED! アメリカン・ファイター! オーバーリボンズ!』
「「怪盗戦隊、百合レンジャー! & 警察戦隊、BLレンジャー! +α!」」
最後は、全員で声を揃えて占めた。
「ルーカス。あんたをぶっ飛ばすために、あたしたちはBL警察のトレーニング設備をフル使用して、死ぬ気で特訓したわ。この新装備『VS・スワットモード』で、今までのあんたの罪をジャッジする!」
「俺の罪だと? そんなもの、今さら数え切れるか!」
啖呵を切ったツカサに、ルーカスも強気に応じる。
「まとめて地獄に送ってやる。せいぜい楽しみな!」
ついにダレンを攻略したルーカス。彼の前に、新装備を得た百合・BLレンジャーが立ちはだかった!
正義と悪、人間と超次元生命体の戦いも、これにてクライマックス。頂上決戦の結果、勝つのははたしてどちらなのだろうか?
戦え、百合レンジャー! 負けるな、BLレンジャー! 君のハートに、ターゲットロックだ!