百合レンジャーvsBLレンジャー   作:クリスタルスカイ

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49 閑話休題① とある中古のジャンクバトル

 以下に述べるのは、第一位、第三位、そしてルーカスとの乱戦を経て、戦隊たちが特訓していた頃の出来事である。

 

 週末、ツカサとカイリはムーヴォを連れて、訓練の息抜きにお出かけしていた。

 二人は付き合ってこそいるが結婚はしていないし、今連れ歩いている少女も実の子ではない。彼女の母親は無貌。色々あって二人が引き取り、育てることになったのだ。だが、傍から見れば本物の家族のように見えたことだろう。

 なお、三人の行き先はペットの入店ができないため、白くてもふもふした犬はお留守番である。出かけている間は、ナオヤが面倒を見てくれるそうだ。

 

 

「家族連れが週末のお出かけ先として選ぶのは、ショッピングモールである場合が多い。なぜなら、父親も母親も、平日の仕事や家事の疲れが溜まっているからだ。アウトドアをガッツリ楽しむほどの体力は残っていないから、近場で買い物ついでに遊べる場所が最適だよな」

 

 車を運転しながら、カイリは得意げに蘊蓄を垂れた。この男、長野県のガソリンは他県より少し高いこととか、ニッチな知識だけは謎に豊富なのである。

 

「しかし俺は、家族連れで訪れるのにぴったりな場所をもう一つ知っている。子供たちは玩具やゲームのコーナーに夢中! お母さんは古着や家具家電、料理器具を安く買える! お父さんは懐かしのゲームとかオーディオとかパソコンとかその他諸々に釘付け! 三者三様の楽しみ方が可能な夢のお店が……ここだ!」

 

 お父さんのくだりだけ若干雑だったが、勢いに任せてカイリは駐車場に車を停め、ドアを開けた。

 

 

「って、『ハードオン』じゃない⁉」

 

 日本中に店舗を展開している、有名な中古屋さんである。お馴染みの青い看板を見上げるやいなや、ツカサは素っ頓狂な声を上げた。そしてカイリに詰め寄り、囁いた。

 

「あのね、カイリ。ムーヴォちゃんがいるとはいえ、あたしは一応、今日はちょっとしたデート気分だったわけよ。いつもよりメイクもコーデも気合入れてきたわけよ。なのに、何で行き先がよりによってハードオンなの⁉ 長野のときといい、どうしてこう定番のデートスポットを外して、妙なところに行きたがるわけ?」

「中古品にだってロマンはあると思うけど……すまねえ」

 

 珍しく、カイリは素直に謝った。照れくさそうに頭を掻いている。

 

 

「俺、まともに付き合った相手なんて、お前が初めてだしさ。そういうの疎いんだよ」

「そ、そうなのね」

 

 ツカサも顔を赤らめた

。

「……初めてよ、私も」

 微笑ましい空気が流れ、彼女の怒りは消え失せてしまったようだった。

 二人を眺めるムーヴォが、「ちちとはは、いちゃいちゃ」と神妙な面持ちで呟いた。

 

 

 そんなこんなで、入店。

 桃色の髪の少女に引っぱられるようなかたちで、まずは二階のホビーコーナーへ突撃。好きなアニメのグッズをたくさん見つけて、ムーヴォは嬉しそうにはしゃいでいた。

 一方、ツカサはガラスケース内に陳列されたカード類を見ていた。

 

『さっきの「ジゲン・ライド」のやつといい、お前の使う原典ってカード関係ばっかりだな。そんなにカードが好きかよ、このカードマニア! あと最近はポ〇モンカードの人気が爆発してレアカードがめちゃくちゃ高騰していますが、これについてはどう思われますでしょうか?』

 

「前にあんたが言ってた通りね。確かに、一部のカードには何万円も値段が付いてるわ」

「カード一枚にその値段って、なかなかすごいよな。中古市場がそんな状態だから、転売をする輩も後を絶たねえらしい」

「あんたもやるの? カードゲームとか」

「ガキの頃はやってたけど、最近は全然だな」

 

 首を振るカイリ。

 

「……懐かしいぜ」

 

 

 視線の先には、発売された当初の、古いデザインのカードがあった。性能的には最近のカードに遠く及ばないものの、子どものときのカイリはそれを切り札として愛用していた。

 中古屋を訪れた人の多くが口のする言葉が、「懐かしい」である。特に何も買わなくても、満足した気分で帰っていく。

 そこに並んでいるのが、買う人も売る人も含め、色々な人の思い出が詰まった品々だからかもしれない。

 ムーヴォにぬいぐるみを買ってあげて、そのコーナーを後にする。

 

 

 次は衣類や家具を見ようか、という話になった。

 最初は「古着、買ったことないのよね」と抵抗感を示していたツカサも、値段の安さについつい目が行くようになってきた。

 

「えっ、このバッグが二万……? 定価だと十万近くするわよ。めちゃくちゃお得じゃない!」

「お前さ、ゴークイーンズに財布を破壊されたときも似たようなこと言ってたよな? たぶん、買った後で『二万も使っちゃった!』って後悔するパターンだぞ」

「くっ、正論だわ」

 

 ツカサは唇を噛んだ。百貨店のセールで手に入れた財布を秒で失った悲しみを、ひしひしと思い出した。

 

 

『この財布、本当なら二万円は下らないブランドものなのよ。それが何と、半額の一万円で買えたの! あたし、一万円も得しちゃっていいのかしら』

『一万円も得したって言うけど、事実、今お前はその財布のために一万円使ったんだぞ。どれだけ割引になったかも大事だが、どれだけ出費があったかも同じくらい大事だ』

 

 

「もしかしたら偽物が混じってるかもしれないし、買わなくて正解かも」

「いや、そんなことはないぜ」

 

 最近の中古屋はすごいんだ、とカイリは力説する。

 

「画像スキャン的なアレで、AIが真贋判定をやってくれるシステムもあるらしい。もっとも店によってやり方が少しずつ違うだろうし、判定がミスる確率も1%くらいはあるって聞くけどよ」

「……あんた、何でそんなに詳しいわけ? まさか、関係者?」

 

 引き気味のツカサの視線に気づき、彼は慌てて否定した。

 

「別に、ここで働いてたわけじゃねえよ。怪盗をバリバリやってた頃は、盗んだ商品を売り飛ばす先として、中古屋も一つの選択肢だったからな。内部事情に通じておいて損はないってわけだ」

「動機が不純だった⁉」

 

 いつものノリでボケツッコミが始まった。

 

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