勝気そうな女子高生が店員を呼び止め、無理難題を押しつけている。
「店員さん、この店のジャンク品、全部下さい!」
「そ、そんな無茶な!」
小太りの店員は汗を拭き拭き、女子高生の暴挙を止めにかかる。
「お買い上げになるのは結構ですが、一度にそんなにたくさん持って行かれては、店の在庫がなくなって商売になりません。さてはあなた、店舗仕入れ系の転売ヤーですね⁉」
たまにいるのだ。訳ありのためジャンク扱いになっている商品を大量に買って行き、店で設定されていた価格よりも少し高くしてオークションサイトに出品する輩が。もしや彼女もその類では、と店員は考えていた。
しかし、こんな若い子が転売なんかするのだろうか?
「違うわ。これは私が個人的に所有し、官能的に愛でるためのものよ」
凛として言い放ち、女子高生は財布からクレジットカードを取り出した。
「さあ、早く会計をしなさい。自分の通帳残高を受け入れた私は……無敵よ!」
「何を言ってるんですか、お客様⁉ そんなことをされては困ります!」
「ほう。俺と同じく、ジャンク品を買って普通に使うだけの奴もいるみたいだ」
「冷静にコメントしてる場合じゃないでしょ⁉ 市民のトラブルを解決するのも、警察として、ヒーローとして当然の務めよ!」
カイリとムーヴォを残し、ツカサは店員と女子高生に割って入った。警察手帳を提示し、二人を落ち着かせようとする。
「失礼、BL警察の者よ」
「……あっ、お前は!」
彼女の顔を見た瞬間、女子高生は血相を変えた。
「ここで会ったが百年目。お前を潰してやるわ!」
「えっ? 誰? あたし、あんたと会ったことあったかしら??」
困惑しているツカサを置き去りに、女子高生は腰にベルトを巻き付け、スタンプ型アイテムを押印することで変身した。
『リベラル・アップ! GOING MY WAY! 超次元ライダー! ジャ・ジャ・ジャ・ジャ~ンク~~!』
青、黒、黄を基調とし、コブラをモチーフにしたアーマーを装着。空手のような構えを取り、彼女は鋭い蹴りを放ってきた。
「うわっ⁉」
咄嗟に後方へ跳び、ツカサが避ける。
「変な子だとは思ったけど、まさか超次元生命体だったとはね。皆、早く逃げて! ムーヴォちゃんも!」
店内はたちまち、蜂の巣をつついたような大騒ぎになった。我先にと店から脱出しようとする人たちでごった返している。
人々を守るため、ツカサとカイリもBLエックス、百合エックスへと変身を遂げた。
「てめえ、何者だ。どうしてこんなことをする!」
「私は超次元ライダー・『ジャンク』。無貌支持派第一位、ビッグ・ファースト様の一番弟子よ」
カイリの問いにも怯まず、ジャンクは堂々と答えた。
「ビッグ・ファースト様から、私は強さとは何か、強くあるにはどうすれば良いかと日々学んでいた。あのお方は、尊敬すべき師匠だった。第一位を倒したお前たちを、私は許さない!」
「いやいや、ちょっと待てよ。俺たちはあいつにボコボコにされたんだよ。最終的に倒したのはルーカスだ」
「戯言を!」
女子高生はかぶりを振った。聞く耳を持たないとは、まさにこのことだ。
第一位亡き後、組織内で居場所を失った彼女は超次元界を放浪し、時たま人間界へ繰り出してショッピングを楽しむなどしていた。ゆえに、二つの世界にはあまり通じていない。誤って伝えられた情報を鵜呑みにし、百合・BLレンジャーを目の敵にしてきたのだろう。
「問答無用。お前たちに引導を渡すのは、ビッグ・ファースト様の一番弟子、このジャンクよ!」
パンチを繰り出してくる女子高生。ツカサは掌で受け止めようとしたが、華奢な肉体からは想像もできないほど強い力に驚いた。衝撃でふらつき、後ずさる。
「さすがは第一位の弟子ね。なかなかやるじゃない。……あたしたちが第一位を倒したって言うのはデマだけど!」
「私が強いのは当然よ。空手のようなアクションを得意とする原典の力に加え、私の性癖にマッチした環境があればね!」
エッフェル塔と結婚した女性は実在する。このように、無機物を恋愛対象とする特殊性癖を「対物性愛」と呼ぶ。
ジャンクが宿す性癖は、対物性愛の中でも、ハードオンのジャンク品のような壊れかけの物を偏愛するというもの。だから、気が向いたときにジャンク品のコレクションを増やしているのだ。
本人は「壊れている物にこそ哀愁や愛着を覚える」「不完全だからこそ美しい」と考えている――まあ、この辺りの感覚は、本人にしか理解できないかもしれない。
「私の性癖、『対物性愛』の能力は二つあるわ。一つ。無機物が近くにあるとき、その数に応じて身体能力が向上する!」
拳を振るい、ジャンクは果敢に攻め立ててくる。二人はエックスチューナーで銃撃を放つが、高威力のパンチは弾丸さえ砕き、ものともせずに突っ込んできた。ツカサもカイリも、防戦一方である。
「二つ。無機物を破壊したとき、それに与えたのと同等の破壊ダメージを、視界に映っている任意の対象にも与える!」
「教えてくれてありがとよ……って、うおおおおお⁉」
ひょいと身を屈めてパンチをかわしたカイリだったが、直後、腹部に強烈な痛みが走って悶えた。