百合レンジャーvsBLレンジャー   作:クリスタルスカイ

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52 閑話休題④ とある中古のジャンクバトル(終)

 確かに、ジャンクの拳の回避には成功した。けれども、勢い余ったその拳は、カイリの背後にあったジャンク品のノートパソコンに激突。画面を粉々に砕いてしまった。そして、パソコンに加わった衝撃は、ジャンクの二つ目の能力によってカイリにも与えられたというわけである。

 自然豊かな超次元界ならそれほどの脅威にはならなさそうな能力だが、無機物でいっぱいの人間界ではかなり強烈だ。よりによって中古品だらけの店内での戦闘なので、ジャンクは潜在能力をフルに発揮できる。

 

 

「ああ、こんな姿になって。何て愛しいの」

 

 もはや何も映らなくなったノートパソコンを優しく撫で、ジャンクは甘い声を漏らした。彼女の中では、今のパンチでさらに自分好みの壊れ方のジャンク品になったに違いない。

 

「この店の無機物たち全部、私の愛でぶっ壊してあげるわ!」

 

 どこからか三種類のスタンプを取り出し、順にベルトへ押印。鉄扇、バズーカ、大鎌を召喚すると、ジャンクは手当たり次第に武器を振り回した。左手で鉄扇、右手で大鎌を構え、左右でリーチの異なる斬撃を続けざまに放ってくる。

 

 

「やりづらいわね」

 

 避けたのはいいが、大鎌が店の棚に当たったダメージが自分にも付与された。胸部に痛みを覚え、ツカサが呻く。

 まともに喰らってもダメージを受けるし、避けても無機物に当たった攻撃が自分へぶつかってくる。かなり厄介な相手だった。

 

 何なら、最初から無機物を狙って攻撃して、そのダメージを敵にも与えることだってジャンク側は可能なわけである。周辺環境に能力が依存するという不安定さはあるものの、条件次第ではガード不可能の攻撃を連発できる。これこそが、第一位の一番弟子たる実力だ。

 

 

「あ、もしもし? 俺だけどさ。持ってきてほしいものがあるんだ」

「ちょっとカイリ、こんなときにどこへ電話してるのよ。力には力で対抗するわよ!」

 

 ピンチにもかかわらずマイペースな相棒を引っ張り、ツカサは手を繋いで唱えた。カイリはスマホで誰かと通話中のようだったが、構わず強化変身する。

 

「「――デュアル・百合&BL・ウェーブ!」」

 

 ハートやフリルの付いた白と黒の衣装を重ね着し、二人は百合ブラックとBLホワイトへ変わった。武器は基本的に使わず、格闘で敵を圧倒するフォームだ。

 

 

「無駄よ。私の本当の強さ、見せてあげる!」

 

 対して、ジャンクはバズーカを発射した――店内の壁際に置かれている、ジャンク品だが非常に高価な大型スピーカーに向けて。

 

「どれだけ格闘に適した形態になろうとも、ガード不可能な私の攻撃の前には無力。サクッと倒すよ!」

「ぐあああああっ⁉」

 

 木っ端微塵になったスピーカーへ与えられた爆発のエネルギーが、ツカサとカイリの体表近くでも同程度、一気に弾ける。激痛に襲われ、二人は崩れ落ちた。

 今の爆風で店のドアや窓もひび割れ、見るも無残な有様である。動かなくなった自動ドアの隙間目がけて敵を蹴り込むように、ジャンクはベルトを操作して必殺技を発動した。

 

 

『ジャンク・スタンピングスマッシュ!』

 

 強烈な回し蹴りで、二人の敵を店外の駐車場まで吹き飛ばす。あまりの破壊力に、百合ブラック、BLホワイトへの強化変身が解除されてしまった。

 

「フフッ。そろそろとどめと行こうかしら?」

 

 ジャンクは勝ち誇り、倒れ伏したツカサとカイリの元へゆっくりと歩みを進めた。

 店の外にだって、無機物はいくらでもある。アスファルトや自動車に溢れた人間界は、ジャンクにとって最高の戦場なのだ。

 手にした鉄扇を振り上げたそのとき、空から白いものがぱらぱらと降ってきた。

 

「……雪?」

 

 

 おかしい。さっきまで晴れていたはずだ。怪訝そうに空を見上げたジャンクは、ぎょっとした。上空を旋回する戦闘機型の巨大マシンから、白い粉が降り注いでいたからだ。

 

「違うわ。これ、もしかして小麦粉⁉」

「――遅くなったな、カイリ!」

 

 戦闘機を操縦しているのは、百合ブルー・トウマ。助手席に座っているのは百合イエロー・ウミカだった。

 

「頼まれたもの、確かに届けたぞ」

 

 先刻、カイリが電話した相手は百合レンジャーの仲間だった。無機物が周囲にあればあるほど強くなる相手を倒すには、有機物をばらまくことで対抗するより他にないと考えたからだ。

 

 

「そいつは賞味期限切れの小麦粉でな。俺とウミカが働いているレストランから、こっそり頂いてきた。食べ物を戦いに使うのは気が進まないが、捨てるよりはましだ!」

 

 元々、怪盗戦隊の三人の表の顔は飲食業で、裏の顔が怪盗だった。盗みを辞めてからは、飲食業に専念していた。「そういえばそんな設定あったな」レベルの地味な設定だし、基本的に作戦立案やバックアップはBL警察側が行っているが、食材の調達ならお手の物である。

 

「お、おのれ~。これじゃ、私の能力が発揮できないじゃない!」

 

 全身小麦粉まみれになったジャンクは、常に体が有機物に触れている状態だ。手足や武器にも粉が付着しているため、さっきまでのようにガード不可能の攻撃を繰り出すことはできない。

 

 

「さあ、後は任せたぞ」

「クシャクシャのポイにしちゃって!」

 

 仲間たちからのエールを受け、ツカサとカイリは頷き合った。互いを支え合うようにして立ち上がり、警察手帳型のアイテムを取り出す。

 

「行くぞ、ツカサ!」

「ええ!」

 

 手帳を左胸のアーマーにセットし、叫んだ。

 

「「――エマージェンシー! 百合・BLレンジャー!」」

 

 

 コールを受けたBL警察本部から、形状記憶宇宙金属VSメタルが、超微粒子状に変換され転送される。そして、VSメタルが彼らの表面で定着し、強化スーツとなるのだ。

 なお、完成形のスワットモードでは、カイリの装備は防弾ベストやマシンガンではなくブレス型の武器となっている。が、試作段階ではまだ共通装備しか開発されていない。

 防弾ベストを思わせる黒い装甲と、同じく黒のマシンガンを装備した彼らは、その銃口を小麦粉まみれのジャンクへ向けた。

 

「なあ。粉塵爆発って知ってるか?」

「や、やめなさいよ!」

 

 今や、コブラモチーフの戦士には余裕など全くなかった。恐れおののき、敵から逃れようと、背中を見せて走り出す。

 

 

「超次元ライダー・ジャンク。ハードオン内での器物損壊及び、大勢の人々への殺人未遂の容疑で……ジャッジメントだ!」

 

 VS・スワットモードに強化変身した二人の戦士のマシンガンから、光弾が高速射出された。

 

「「『ストライク・アウト』!」」

 

 まだ未完成の装備ゆえ、威力は百パーセントではない。しかし、ジャンクが全身に浴びた小麦粉によって粉塵爆発が引き起こされるため、実質的な破壊力は十二分にある。

 

「サクッと、やられちゃったわ~⁉」

 

 はたして、ド派手な爆発の中で、第一位の一番弟子は散ったのであった。

 

 

「とんだ週末だったな」

 

 事後処理を済ませて帰宅した頃には、もう真っ暗だった。やれやれとカイリがため息を吐く。

 

「巻き込むつもりはなかったが、あの中古屋にも何だか申し訳ないぜ。ハードオンには後日改めて行こう。今度は、八王子の大型店舗なんかどうだ?」

「全部片付いたらね」

 

 ムーヴォをお風呂へ向かわせながら、ツカサは肩をすくめた。

 

 

「一刻も早くVS・スワットモードを完成させて、それを使いこなせるように死ぬ気で鍛錬する。そして、ルーカスを倒す。あたしたちの使命を果たすまで、遊ぶことは許されないわ」

「……分かってるさ」

 

 不敵に笑い、カイリは言った。

 

「俺たちは勝たなくちゃならねえ。必ずな」

 

 そして戦いは、現在へ、クライマックスへと至るのであった。

 




一週間後の更新となる次回から、本編に戻ります。もう少しお待ちください。
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