先陣を切ったのは、ピーターだった。
「ルーカス。君は、第一位のように力でゴリ押しするタイプではないよね。むしろ頭脳派だ。あらかじめ様々な手札を用意しておいて、敵の能力に最も対処しやすいカードを切ってくる。後出しじゃんけんみたいなものだね」
「褒めるのか貶すのか、どちらかにしたらどうだ?」
ルーカスが苦笑する。
「……でも、逆に言えば、敵の能力が分からないうちは有効な手段を取れない。ダレンの所持している性癖と原典が判明するまで、君が『サウザー』を温存したようにね」
オーバーリボンズへ変身した状態で、ピーターは新たなスタンプを取り出した。決戦に備え、彼は「性癖操術」を習得するだけにとどまらず、アイロンマンの知恵を借りて独自のアイテムを開発していたのである。
「こんなのはお好きかな?」
手にした緑色のスタンプの上部を押すと、「ミステリー!」と音声が鳴った。透明な球体のようなものが描かれたそれを、ベルトに押印する。
『ミステリー! リボンミックス!』
刹那、四大元素、すなわち風、水、火、土のパワーを持った巨人型クリーチャーが出現し、ルーカスを取り囲んだ。
「このオーバーリボンズへの変身は、自分のためじゃない。君に罪を償わせ、人々を守るための変身だ。ルーカス……僕が息の根を止めてやる!」
さらに、ピーター自身も手のひらから緑色の光線を撃ち、叫んだ。
「君を倒して、僕が皆を笑顔にする!」
「召喚士か何かの原典か? 面白い!」
ビームをかわすと、五本角の金の戦士は、カード状に凝縮させた原典の力を短槍にセット。「サウザンド・ブレイク!」の音声とともに撃ち放った。
トンボの戦士の原典の効果で、青の光弾を高速射出。四体の巨人の胸部へクリーンヒットさせた。
「グオオオオオッ!」
しかし、巨人は全く怯まない。少量の火花が散った程度のダメージしか受けていない彼らは、すぐさま反撃に映った。炎や水を纏った手足を乱暴に振り回し、圧倒的なサイズにものを言わせてルーカスを追い詰める。
見かけによらず動きは速く、それでいて一撃の強烈さは本物。しかも変身アイテムを使うタイプの原典ではないため、巨人の体に短槍で触れても「ジャック・ライズ」は不可能だ。ルーカスは防戦一方だった。
「チッ……」
やはり、自分より巨大な敵を複数相手取るのは難しい。こちらも怪獣の原典を出すべきだろうか、と彼は考えた。
(いや、巨大化すれば確かに力で負けることはなくなるが、その反面で俊敏性を失う。下手をすると四対一でボコボコにされるのがオチだ。あの四元素のクリーチャーたち、図体の割にはすばしっこいしな。おそらく、ピーターもそれを狙っている)
ならば、広範囲攻撃をひたすら仕掛け、隙が生じるのを待つ。巨人の包囲網に穴ができた瞬間にオーバーリボンズへ接近し、「ジャック・ライズ」でスタンプの機能そのものを無効化する。それしかあるまい。
『サウザンド・ブレイク!』
今度はロリーニンジャーの力を短槍に込め、ルーカスは空から雷と風を降り注がせた。攻撃を受け、巨人たちの動きが一瞬止まる。
すると、奇妙な現象が起こった。炎の巨人の頭部、その右半分がいきなり消えたのだ。まるで映像が乱れてでもいるかのように、顔の右側にぽっかりと黒い穴が開き、時折色とりどりの光が穴の中を通過する。
「何だ……?」
ルーカスが目を細める。よく見ると、クリーチャーの足元にはドローンと思われる機械が落下していた。
「そうか。分かったぞ、ピーター。お前が繰り出した巨人どもは、本物ではない。このドローンが作り出した幻だな?」
「ご明察」
オーバーリボンズが肩をすくめる。
「けど、ただの幻じゃないよ。『ミステリー』のスタンプは無数のドローンを展開し、ホログラムの投影とドローンから放たれる電磁パルスの衝撃を組み合わせることができる。だから、幻に攻撃されれば痛みも感じる。限りなくリアルに近いイリュージョンが可能なんだ」
そして、とピーターは続けた。
「このドローンたちは全て、機銃を搭載している。僕の命令ひとつで一斉掃射できるのさ」
言い終わるか終わらないかのタイミングで四元素の巨人は姿を消し、代わりに、空を埋め尽くす大量のドローン軍団がルーカスへ銃を向けた。
「手札を複数用意しているのは、何も君だけじゃない。たとえクリーチャーの正体を看破したところで、無限の銃撃で倒すまでだ!」
「舐めるなよ、ピーター!」
白虎の戦士の力を短槍に込め、ルーカスはまたしても「サウザンド・ブレイク」を発動。凍結の効果により、迫りくる銃弾の動きを空中でぴたりと静止させた。さらに、ダレンから奪ったマジェスティのパワーをも解放し、歴代二号戦士の力を集約させた斬撃を飛ばして弾丸を吹き飛ばす。
「お前は所詮、俺に利用されるだけの存在だ。キンジ・オネガワとして登場した俺の演技に見事騙され、アメリカのヒーローたちの力を俺に分け与えてさえくれた。おかげで俺は、より一層強くなれた」
リボチコンボ、つまりリボンダーマン、ハットマン、チョーカーの三人の力を短槍に込め、槍の先端から光弾を撃つ。
「お前が俺を信じてくれたから、俺は正体を疑われることなく他のヒーローどもに溶け込むことができた。裏工作を行い、世界の破滅を加速させることも容易かった。せめてものお礼に、一思いに殺してやるぜ!」
「――『性癖操術』。『癖緊縛動』!」
オーバーリボンズの仮面の右部分に、刺青のような赤い紋様が浮かぶ。各部をリボンがきつく締め上げ、体温や脈拍を調節することで、ドーピングのように身体能力を底上げする。
極限まで高められたパワーで、ピーターはルーカスが放った光弾を地へ叩き落とした。
「言っただろ? 僕は手札を複数持っているってね」
機銃掃射に対処されるのも織り込み済みで、彼は既に、勝利の方程式を組み立てていたのだった。瞳の奥に、悲しみの光と怒りの炎を湛えながら。
『オクトパス!』『トカゲ!』『電気ウナギ!』
三種のスタンプを次々にリボンズドライバーへ押印していき、「ミステリー」と合わせて計四種類のリボンミックスを展開した。
四本の機械アームと、トカゲを模した巨大な尾を装備し、無数のドローンを空中に浮遊させる。さらに「電気ウナギ」の効果で、ピーターの繰り出す全ての攻撃には稲妻による追加ダメージが付与されていた。
「ルーカス。君のような悪魔を信じてしまったことは、僕の一生の不覚だ。だからこそ、僕が必ず君を倒す!」
そしてベルトの横部分のボタンを押し込み、怒涛の四連必殺技を発動した。
今回、ご迷惑をおかけした作品
・「スパイダーマン ファー・フロム・ホーム」