「さっきはよくもやってくれたな」
言うが早いか、ロリーニンジャー超絶は高速移動し、戦士たちに肉薄した。
トンボの戦士の原典ほどのスピードではない。しかし、「超絶」の原典の恐ろしいところは、そのオールマイティーな戦い方である。かなりの移動速度を誇る上に、格闘やパワーにも秀でている。甲冑を装着しているため防御力も大幅にアップしているし、忍者激推し刀を用いた剣技も使用可能。どこにも隙がなく、どんな相手とも戦える対応力の高さがウリだ。
「たっぷりと礼をしてやるぜ」
ヒットすると同時に、凄まじい衝撃波が発生。敵の体を衝撃の余波が突き抜けて、背後の木々をなぎ倒すというとんでもない破壊力。そんな強烈なパンチやキックを、ルーカスはカイリ、ナオヤ、裕介、美明日、お菊、ピーターの順に叩き込んでいった。
「皆っ!」
体をくの字に折り曲げ、苦痛に呻いて吹き飛ばされていく仲間たちを横目に、ツカサは悲鳴を上げた。怒りを露わに、VSリボルバーの銃口をルーカスへ向ける。
「喰らいなさい!」
「無駄だ。『他殺願望』を発動した今の俺に、そんな武器は通用しない!」
手首に装着された手裏剣型のブレスから、ロリーニンジャーは炎の手裏剣を連射した。炎にはホーミング機能が搭載されているようで、ツカサたちが放った銃弾を追尾、すべて相殺してしまった。
さらに悪いことに、連射速度もルーカスの方が上だった。次第に撃ち合いに競り負け、ツカサたちは炎の手裏剣をガガガ、ガガガと全身に浴びてしまった。
「きゃあああっ⁉」
「……そろそろ、とどめを刺してやる」
ヒーローたち全員に一撃を見舞ったのを確認すると、ロリーニンジャー超絶は忍者激推し刀を右手で構え、その柄に手裏剣型ブレスを合体させた。
『N! I! N! I!』
すると、奇妙な音声が流れ始めた。
『N! I! N! I! ニンニニン! N! I! N! I! ニンニニン!』『一番勝負!』
音声に合わせるかのように、刀の刀身が火炎に包まれ、長く長く伸びていく。身長を遥かに超える長さの刀を軽々と振り回し、ルーカスは必殺技名を叫んだ。
「終わりだ。『超絶・他殺斬』!」
炎を纏った刀を、円を描くように勢いよく薙ぎ払う。強力な斬撃を受けて、一同は地面に倒れ込んでしまった。
「つ、強すぎる……」
カイリがぼやく。
「『他殺願望』を使われても力で押し勝てば良いと思ってたけど、想像以上に相手が強かったぜ」
「今更だけど、あたしたちの作戦って脳筋すぎたんじゃない……?」
こんなときにもどこか呑気な会話をしている二人を見下ろし、ルーカスはニヤニヤと笑った。
「さて、問題だ。『他殺願望』によるデバフ、つまり能力無効化は一分間しか持たない。では、バフはいつまで続く?」
「ええっと」
小首をかしげたツカサを、ロリーニンジャー超絶が遮って続ける。
「答えは、『俺の死の寸前まで追い詰めた相手が死ぬまで』だ」
「あんた、答えさせる気ないでしょ⁉」
ツッコミつつも、彼女は冷静だった。
(……独りよがりなトークは好みじゃないけど、嘘を言ってるわけではないみたいね)
第一位をルーカスが倒したとき、ビッグ・ファースト死亡後に「他殺願望」の効果は終了したようだったとの報告を受けている。また、ツカサは直接その戦闘を目撃していないが、第三位相手に「他殺博徒」を使用したときも同様だった。今しがたルーカスの明かした終了条件は、過去の戦闘と矛盾しない。
「今回の場合、俺を瀕死に追い込んだ最後の一押しこそ『他殺博徒』による自爆だったが、九割はお前たちの攻撃によるダメージだった。よって、対象はお前たち全員。お前らが一人残らず俺に殺されるまで、俺のフィーバータイムは終わらない!」
状況は、圧倒的にルーカス有利。
彼の性癖の効果は、ツカサたち全員が死なない限り永続する。つまり、「他殺願望」の効果が切れるまで粘って戦う、というような戦術は取れない。どう足掻いても、ルーカスの無敵タイムは続くのだ。
「……前から思ってたけど、お前の性癖強すぎないか?」
そこで、裕介も口を挟んだ。
「仮に使っている原典が強力じゃなかったとしても、性癖だけで無貌支持派のほとんどのメンバーと渡り合えるレベルだろ」
「特殊かつ異常な性癖は、ときに凄まじいパワーを発揮する。お前らの好きな百合やBLは割とメジャーな上、ジャンルが細分化されている。一括りに『百合』『BL』とまとめただけでは、大して特殊なパワーは出やしないんだろう。ま、俺の扱う『おねロリ』性癖のようにジャンル分けすれば、多少の応用は効くがな」
ノーマル性癖しか持たない裕介や美明日、お菊からすれば、スペックの格差がひどい。しかし、打開策がないわけではなかった。
「……今、俺はルーカスに『無貌支持派のほとんどのメンバー』と言った。あえて全員と言わなかったのには訳がある」
すぐ隣に伏していたネトルティ来部へ、オメガ珈琲シルバーはルーカスに聞こえないように囁いた。
「私たちと戦った、第四位のガン・メン・Qね?」
「正解だぜ」
非常勤講師とはいえ大学で教鞭を執っているだけあって、さすがの理解度である。
「物理攻撃ならともかく、ガン・メン・Qやネトルのような精神攻撃系なら通じるかもしれねえ。俺たちが奴の注意を引いて隙を作るから、能力無効化の一分が過ぎたら、美明日はありったけの力でルーカスに精神干渉してくれ」
痛む体に鞭打ち、オメガ珈琲シルバーは立ち上がった。剣を肩に担ぎ、仮面の下でルーカスを睨む。
「能書きはいい。さっさと続きをやろうぜ」
「お前らを皆殺しにするのは確定事項だが、物事には優先順位というものがある。まずは、厄介な能力持ちからだ」
手裏剣型ブレスを装着した左手を、ロリーニンジャーは美明日へと向けた。
「三武神ネトルの能力は、少し面倒だ。無効化が終了する前に片付ける」
「てめえ……!」
裕介は焦った。まるでこちらの思考を読んでいたかのように、ルーカスはネトルの危険性を既に見抜いていたのだ。
だが、あのブレスから放たれる炎の手裏剣には、自動追尾機能が備わっている。たとえ裕介が美明日の盾になろうとも、手裏剣が彼を避けてターゲットに命中するだけだろう。ならば手裏剣を全部撃墜すれば良い、とも考えたが、恐るべき連射速度のあれを一つ残らずぶった切るのは物理的に不可能だ。
他の皆も満身創痍で、立ち上がるのもやっとという状態である。
(まずい。このままじゃジリ貧だ。何か手はねえのか⁉)