『バーサス・アップ!』
そのとき、百合・BLレンジャーの乱入によって今まで蚊帳の外だったダレンが、ようやく復帰した。
「アダム、トーマス、キャサリン……私に力を貸してくれ! 変身!」
『Precious! Trust Us! Justis! 超次元ライダー・ライブ!』
「――あれって」
美明日が息を呑んだのも当然だ。彼が変身した姿は、超次元ライダー来部にそっくりだったのだから。
ベルトに合体していた銃を分離させ、ダレンはロリーニンジャーへ連射を浴びせた。それは、窮地に陥った彼を百合・BLレンジャーが銃撃で救ったことへの恩返しでもあるかのようだった。
「馬鹿な。なぜ、まだ二号戦士の原典を使って変身できる⁉」
動揺を隠せず、ルーカスは唸った。甲冑のおかげでほとんどダメージはないが、ダレンがまだ戦えたという事実は彼にとって計算外のようである。
「俺はお前のマジェスティの力を奪った。『ジャック・ライズ』は同系統の原典を根こそぎ奪うことができ、マジェスティには全ての二号戦士の力が集約されている以上、お前の持つ二号戦士の力は全て奪われたはずだ。それなのに、なぜ⁉」
「そのことなら、謝罪しよう。少々語弊があったようなのでな」
『ジャパニーズ・ウルフ!』『オルトロス・ダレン!』
続いて、第二位は狼モチーフの青と銀の戦士の姿へと変わった。
「マジェスティが司っていたのは、人間界で平成と呼ばれる時代に生きた二号戦士の力だ。したがってそれ以外の時代、昭和もしくは令和に放送された二号戦士のパワーならば、私はまだ使える!」
今変身した狼の戦士も、原作で強敵に一撃与えた実績を持っている。つまり、強敵キラーに近い能力を一応備えている。ルーカスに喰らいつくには有効な手段だった。
「私はまだ終わらぬぞ、ルーカス。貴様が悲劇を繰り返すというのなら、私は何度でも貴様の前に立ちはだかる!」
「面白い。なら、その残り物の原典も奪ってやるぜ!」
『ミリタリー・ホーン!』『When the five weapons cross, the JET BLACK soldier ZAIA is born!』『I am the president!』
光に包まれてロリーニンジャー超絶からサウザー、否「ザイア」へ再変身し、ルーカスは短槍を構えた。「他殺願望」の効果で五本角の戦士も強化されたのか、今回は全身が黒くリペイントされている。アイレンズは赤色だ。
そして両腕を広げ、告げた。
「――Presented by LUCAS!」
「自分で言うのか……」
困惑気味のダレンと、戦意をみなぎらせたルーカスが今、再び激突した。
ダレンが勢いよく突き出した爪を、ザイアが片手で受け止める。すると、ザイアの手のひらから紫色のエフェクトが発生した。
「この『ザイア』はサウザーの強化版のようなものでな。サウザーが武器で変身アイテムに触れたときしか原典奪掠できなかったのに対し、ザイアは槍を使わずとも、体の一部が敵と数秒接触すれば敵の原典をコピーして使える」
ただし、この能力は単純な上位互換ではない。そもそも戦闘において、敵に数秒間触れたままでいることは結構難しい。またザイアはサウザーと異なり、コピーした能力を保持し続けることもできなかった。サウザーのように、一度「ジャック・ライズ」で奪った能力は何度でも「ジャッキング・ブレイク」で発動できるわけではない。
コピーと弱体化を同時に行うことで疑似的に原典を奪うサウザーに比べ、接触時にザイアはコピーしかできない――もっとも、これはあくまでもザイアのコピー能力とサウザーの「ジャック・ライズ」の性能比較だ。ザイアが「ジャック・ライズ」をも合わせて使えば、間違いなくサウザーよりは強いだろう。原作では全然使われなかったわけだけども。
「お前が残しておいた申し訳程度の強敵対策も、たった今、俺が頂いた!」
ルーカスは勝ち誇り、ベルトのカードキーを強く押し込んだ。「C.E.O. ディストラクション!」と音声が流れ、赤い破壊エネルギーを帯びた回し蹴りを放つ。
「くっ……」
キックを胸部に受け、ダレンはまたしても膝を突き、変身解除されてしまった。やはり、限られた原典による間に合わせでは、ルーカスに太刀打ちできない。
「……サクヤ。俺たちBL警察の使命は何だ?」
横たわったまま二人の戦いを眺めていたケイイチロウが、ぽつりと同僚に問いかける。
「市民の安全と、命を守ることです」
「そうだ。そして俺は、できればダレンのことも救いたいと思っている」
マシンガンの銃身を杖代わりに、彼はふらふらと立ち上がった。
「ルーカスのせいで、奴は人生をめちゃくちゃにされた。新しい生き方を探すことなく、復讐のためだけに生きて散って行くなんて、あまりに悲しすぎる。――行くぞ。体を張ってルーカスを食い止めてくれたダレンを、犠牲にはできない!」
「俺たちも行くぜ」
「ああ。ダレンの幸せを、これ以上ルーカスに盗ませはしない」
カイリとトウマも頷き合い、ケイイチロウ、サクヤとタイミングを合わせてルーカスへ突進した。VSリボルバーを連射し、ダレンへ引導を渡そうとする憎き敵を止めようとする。
「ルーカス。多くの命を弄んできたてめえだけは、絶対に許さねえ!」
男性陣四人による猛攻を、ザイアは両腕に装着した爪でガードした。どうやら、ダレンから奪ったばかりの原典の力をさっそく使ったらしい。
「フン、馬鹿馬鹿しい。俺に言わせれば、人間も超次元生命体も、その大多数は存在価値のない奴らだ」
とんでもない問題発言をした彼は、すぐにまたロリーニンジャー超絶へと原典の力を切り替えた。甲冑で高い防御力を誇る超絶の方が、銃撃戦に向いていると判断したのかもしれない。
「他の誰にでもできることを人並みにこなすだけの人生を送り、自分が何のために生きているのか、何のために生まれてきたのかさえ理解できずに死んでいく。自己の利益のことしか頭になく、他人を蹴落とすことも厭わない。そんなゴミのような連中を何人殺したところで、俺の心はちっとも痛まないぜ!」
「て、てめえ⁉ 道徳の教科書とか読んだことねえのかよ!」
キャサリンやダレンを躊躇なく斬れたルーカスの心持ちが、何とも残念なかたちで明かされた。呆気にとられ、カイリは嫌味みたいなコメントしかできなかった。
「俺は元貴族だぞ? 庶民の教科書など、読んだことはない!」
ロリーニンジャーの構えた刀の刀身が燃え上がり、必殺の斬撃が繰り出されようとした。焦ったカイリたちは、マシンガンをめちゃくちゃに撃ちまくる。
「お前らの攻撃なんて、このロリーニンジャー超絶には効かないんだよ」
甲冑の防御性能に任せ、ルーカスは弾丸を避けようともしなかった。仮面の下で嘲笑を浮かべ、忍者激推し刀を高く掲げる。
「これで……」
終わりだ、と続けようとしたのだが、予想だにしないダメージを喰らって後ずさった。
カイリたち四人が連射している銃弾が、不思議な光を帯びてルーカスに命中する。その弾は頑丈に甲冑をも強く揺さぶり、ついには亀裂を走らせた。
「何っ?」
見れば、四人の男たちのアーマーをも光は包んでいた。白い輝きを纏った戦士たちを、ルーカスは凝視していた。
「何だ、この現象は。原典の力……ではないな。まさか、性癖の力が発動したとでもいうのか。しかし、なぜこのタイミングで⁉」