百合レンジャーvsBLレンジャー   作:クリスタルスカイ

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60 大開花!バトル性癖ファミリア

『特殊かつ異常な性癖は、ときに凄まじいパワーを発揮する。お前らの好きな百合やBLは割とメジャーな上、ジャンルが細分化されている。一括りに『百合』『BL』とまとめただけでは、大して特殊なパワーは出やしないんだろう。ま、俺の扱う『おねロリ』性癖のようにジャンル分けすれば、多少の応用は効くがな』

 

 この発言からも分かるように、彼は「百合・BL性癖に特殊なパワーはない」と思い込んでいた。なぜ彼がこう考えるに至ったかは、極めて単純である。性癖の力を戦隊ヒーローが使ったところを、今まで一度も見たことがなかったからだ。

 

 キンジ・オネガワとして人間界に潜伏していた頃から、ヒーローたちの動向は逐一チェックしてきた。ヒーローのファンだというキャラ設定の下、怪しまれることなく調査を進めていた。人間たちの信頼を得ていたそのときから一度も目撃していないので、まず間違いないと考えていたのだ。

 

 

「変だとは思っていたのよ。様々な性癖のパワーを司る超次元生命体がいる一方で、人間界の戦士たちは百合やBLという性癖があるにもかかわらず、割とオーソドックスなヒーローの力を使っていることに」

 

 やっぱりね、とお菊が意味深に頷いた。オクトパスの機械アームで体を支え、いつの間にか再起していたようである。

 

「百合・BLの性癖は、一括りにまとめているから特殊能力を発揮できなかったわけじゃないわ。百合・BLレンジャーの性癖の力は、ずっと彼らの中で眠っていたの。覚醒の時を待ちながらね!」

「馬鹿な。それでは説明がつかないだろう」

 

 呆然として、ルーカスは首を振った。

 

 

「仮に百合・BLに何らかの力があるとして、なぜ今までの戦いで一度も発動しなかった? これまで、一体どれほどの数の戦場をこいつらがくぐり抜けてきたと思っている。長い道のりだったんだぞ。百合派とBL派の争いが終わったと思えば東京卍帝国、からの高次元生命体、からの超次元生命体と無貌、からの無貌支持派、からの俺……」

「なんか古参ファンみたいに語ってるけど、一連の戦い、ほぼ全部あなたのせいだからね⁉」 

 

 一旦ツッコミを入れてから、お菊は「ツカサちゃん、ウミカちゃん、こっちに来て」と女性陣二名を招き寄せた。

 

「えっ? あっはい」

 

 突然のことに、コミュ障のギタリストみたいな返事しかできなかった。戸惑いつつも立ち上がってお菊へ近寄ると、彼女は不意に、二人を機械アームでぎゅっと抱きしめた。

 

 

「はわわっ⁉」

「お、お菊さん、これは一体⁉」

 

 ちなみに、なぜ同じ女性であっても美明日は呼ばなかったのかと言うと、以前バストサイズで対抗意識を燃やされたからだ。アーマー越しに体を密着させてサイズ差を意識させると、また妙にライバル意識を出してくるかもしれない。ちょっぴりめんどくさい。

 

 さて、突然のハグの結果、先ほどの不思議な現象がまた起こった。すなわち、ツカサとウミカの体を淡い光が覆ったのである。

 

「これで分かったでしょう、ルーカス。百合・BL性癖の能力には、『他殺願望』や『死体嗜好症』と同じく発動条件があったんだわ。つまり、『同性の仲間とタッグを組んで戦うとき、力を倍増させる』効果を秘めていたのよ!」

 

 

 戦隊(=男女混合チーム)やカイリとツカサの男女ペアで戦うことがほとんどだったため、今までの長い戦いにおいて、百合・BL性癖が真価を発揮することはなかったのだ。

 もっとも、ツカサとカイリの場合は性別を超えた友情と愛情で結ばれているため、部分的にではあるが性癖のパワーを解放できていた。それが百合ブラック、BLホワイトへの強化変身である。

 

 もしかすると、どういう能力を持っているのか不明だった「ブラコン」性癖にも、何か発動条件があった……のかもしれない。ブラコンの名を冠する戦士は皆シンプルなパワー型で、全然絡め手を使おうとしなかった。

 

 

「同性とタッグを組んだとき限定の能力だと? そんなもの、男女混合の戦隊というコンセプトの全否定じゃないか」

 

 確かに、お菊の説明には筋が通っている。だがルーカスには、ヒーローたちが「じゃあこの性癖の力を使ってみるか」と素直に使うと考えにくかった。

 

「ツカサとカイリが男女コンビを結成して戦ってきたのも、実は非効率なやり方だったことになる。最初から性癖の特性を理解していれば、さほど苦戦せずに勝利できた戦いも多いだろうに。お前らは過去の自分を、今までやってきたことの全てを否定してまで俺に勝ちたいのか? プライドもクソもないな!」

「……否定? 違うな。俺たちはただ、自分たちの性癖を全力で肯定し、誇りに思う。それだけだ!」

 

 小馬鹿にしたように吐き捨てたルーカスに、負けじとカイリが言い返す。

 

「覚悟しろよ、ルーカス。今の俺たちなら、てめえが相手でも一歩も引かないぜ!」

 

 

「あのー、なんか出たんですけど」

 

 一触即発の空気が流れる中、百合イエロー・ウミカがのんびりと挙手した。彼女の手の中にはスタンプ型のアイテムが収まっている。先刻、性癖のパワーの光に包まれたときに新しいアイテムが出現したということのようだ。

 

「BL警察が開発した装備ばかり使っているとバランスが悪いから、百合の神様が私たちにも強化アイテムを寄こしてくれたのかも?」

「いや、百合の神様って何よ」

 

 ツカサのツッコミをごく自然な感じでスルーして、彼女は続けた。

 

 

「でも、形状から察するに、このスタンプは私よりもあなたたちが使った方が良いのかも? ってウミカはウミカは親切にも美明日さんへアイテムを投げ渡してみたり!」

「そして何なのよ、その妙な喋り方は⁉」

 

 トウマといいウミカといい、どうもとある同じシリーズの原典に影響を受けているようだ。

 

「ありがとう。私や早川君には特殊な性癖はないから、ちょっと寂しく感じていたところだったの。これで、性癖がなくてもパワーアップできそうね」

「美明日ちゃんもニコニコ笑ってないで、何かツッコミなさいよ⁉ 何であたしだけこういう役回りなの??」

 

 はたして、美明日はネトルティ来部への変身を解くと、ドライバーに新たなスタンプを押印した。

 

 

『ハンドレッド・ゲイル! Come On! ハンドレッド・ゲイル! Go Go!』

 

 賑やかな変身待機音が流れる中、スタンプをセットして変身する。

 

『トルネード・アップ!』『三位一体! 俺たち戦隊! 湧き上がる嵐は無限大! 超次元ライダー・百合嵐!』

 

 オメガ珈琲シルバーと美明日の姿が重なり合うようにして、三つの魂を一つにした合体変身を遂げた。頭部がシルバー、胴が来部、脚部はネトルというてんこ盛りフォームである。

 

 

「あら、合体しちゃったわね」

「よく分かんねえけど、サクッと大事に一気に決めるぜ!」

 

 唐突に誕生した新フォームの二人に加え、百合・BL性癖を覚醒させて大幅なパワーアップを遂げた百合・BLレンジャー。お菊とピーターの二人も、リボンミックスをフル装備にして気合十分だ。

 溢れんばかりの力を秘めた戦士たちが、揃い踏みして敵を討たんとする。怯んだように後ずさるルーカスに、ツカサは静かに言った。

 

「ルーカス。あんたに……ジャッジを下すわ!」

 




今回、ご迷惑をおかけした作品
・劇場版仮面ライダーリバイス「バトルファミリア」
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