百合レンジャーvsBLレンジャー   作:クリスタルスカイ

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第五部 「BE THE ZERO」編
1 謎の零騎士


「――俺たちには、俺たちの性癖がある」

「ええ。ルーカスの夢と自由を、この手で守る」

「二度と同じ敗北を繰り返さないためにも、誰かがやらなきゃならないんだ」

「いざ、聖戦のときだ!」

 

 

「ねえカイリ。あんた、今何か言った?」

「いや、言ってねえけど?」

 

 妙な声が聞こえた気がしたが、二人は空耳だと思い込もうとした。

 

 

『他殺願望ドライバー!』『プログライズ!』

「「「「変身!」」」」

 

 

「やっぱり空耳じゃないわよね⁉」

 

 明らかに変身アイテムを操作したような音がしたので、ツカサは辺りを見回した。すると、先刻ルーカスを倒した爆発の跡地に、ぼんやりとした四体の影が揺らめいていた。

 その四体の中心に、彼らが合体した新たな戦士が誕生する。

 

『Connection! Connection! Complete! TASATSU-GANBOU!』『Quartet with unified will!』

 

 紫色をベースにした戦闘用スーツ。肩にはやや大きめの赤いアーマー。胸部には複雑な模様が刻まれ、頭部にはアンテナのようなパーツと多角形のアイレンズが確認できた。

 

 

「ま、まさか……」

 

 木にもたれて休んでいたお菊が青ざめ、立ち上がる。

 

「歪みすぎていたルーカスの性癖が、彼が所持していた原典の一つと融合して肉体と自我を持ち、新たな生命体になったということ⁉」

「そんなのありなのかい?」

 

 と言いつつも、ピーターは目の前の事態を受け入れつつあるようだった。

 

「でも、ルーカスがありったけの原典の力を体に集めたときに制御しきれなかったんだとしたら、あり得ない話じゃないかもね」

「一つだけ確かなのは、こいつを倒さないと本当に勝ったとは言えない、ということよ」

 

 

 けれども、ヒーローたちの大半は物凄く萎えた表情を浮かべていた。

 

「倒したのにまた変なのが出てきた……」とウミカ。

「さすがにしつこすぎる」とトウマ。 

 もはやヒーロー側の誰も戦う気力が十分でないと思われる状況で、敵である謎の戦士――「超次元ライダー・他殺願望」とでも仮称しようか――だけは戦う気満々だった。百合・BLレンジャーを指差し、英語で言う。

 

「We will destroy you all.」「GL and BL ranger will be extinct!」

 

 GLとはガールズラブ、つまり百合のことだろう。

 超次元ライダー他殺願望はベルトを操作し、いきなり必殺技を発動した。早すぎる。まだヒーローたちは変身してすらいないのに。

 

 

『他殺願望・インパクト!』

 

 認識音声前半の「他殺願望」はトーン低めに、後半の「インパクト」は高めに発生される。その暗さと明るさのギャップが、何だか不気味だった。

 音声と同時に、虚空に「他」「殺」「願」「望」と順に一文字ずつ、大きな文字が浮かび上がる演出が行われた。さらに、バックにも同じく「他殺願望」の文字をあしらった四角いロゴのようなものを浮かべ、超次元ライダーが高くジャンプする。紫の破壊エネルギーを帯びた右足で、必殺キックを放った。

 

 

 ついに、ルーカスを倒した百合・BLレンジャー。

 しかし、まだめんどくさい敵が残っていた。さっさと倒して、平和な世界に戻ろう。戦え、百合レンジャー! 頑張れ、BLレンジャー! 物語の結末は、君たちが決めるんだ!

 

 

 

 

 超次元ライダー他殺願望のキックが炸裂するかと思われたそのとき、バチバチッ、と辺り一帯から激しいスパークが散った。どうやら、何者かが攻撃を仕掛けてきたようだ。

 

「The power unit might have been broken down.」

 

 必殺技発動を中断し、他殺願望がやや不格好に着地する。そして、乱入してきた謎の戦士を見上げた。

 

「……Who are you?」

 

 崖の上から一同を見下ろしていた彼は、返事の代わりに「トウッ!」と叫んで大ジャンプ。華麗に地面へ降り立ち、赤いマントを翻した。

 

 

「俺は無貌支持派、『第零位』。否、無貌支持派にして支持派にあらず!」

 

 騎士を思わせる、黒く重厚な鎧を装着している。頭部は西洋甲冑のような形状で、側面から牛の角に似た金色のパーツが伸びていた。

 超次元界の太陽光が、彼の額と胸部に埋め込まれた、緑色の結晶体を眩しく輝かせる。

 

「俺の名は、『零騎士・ブルブラック』。ギンガの光が、我を呼ぶ!」

 

 

「いやいやいや」

 

 ブンブンと手を振り、ツカサはツッコみ役に回った。ツッコむくらいの体力はまだ残っていた。

 

「あのね、零というのは存在しないから零なのよ? 第零位だとか、支持派にして支持派にあらずとか、意味分からないんだけど」

「うむ。まあ要するに、俺は支持派に正式に所属しているわけではない。好きで人助けをしている者だ」

「じゃあ最初からそう言いなさいよ⁉」

 

 どこぞの時代遅れの語り部でもない限り、そんな行間を読み取るのは不可能である。

 

 

「あと、ギンガの光って何なのよ」

「細かいことは気にするな」

 

 それよりも自己紹介を続けなくては、と自称第零位の零騎士ブルブラックはヒーローたちに向き直った。

 

「お初にお目にかかります、諸先輩方」

 

 まず、腰を深く折って一礼。意外と慇懃な態度につられて、サクヤやウミカも頭を下げる。

 

「先ほども申し上げた通り、俺は超次元界の平和を守っています。世界の均衡が崩れたとき、第零位は現れる的な感じで」

「いやもっと早く出て来いよ⁉ 今まで何してたんだよ!」

 

 カイリが呆れているのも無理はない。だって、ルーカスが倒されて他殺願望が出てきた段階で、のこのこやって来たのだから。

 

 

「出て行かなかったわけではないのですが」

 

 悔しそうに、零騎士は俯いた。

 

「さすがに、無貌に単身挑むのは分が悪すぎました。無謀でした。無貌だけに」

「しょうもないギャグ入れなくていいから、早く身の上話を終わらせてくれよ。一応、今バトル中だからな?」

 

 そう、バトル中なのである。ご丁寧にも他殺願望が攻撃の手を止め、こっちの話に耳を傾けてくれているから良いものの、本来ならあり得ないシチュエーションだ。たまに見かける、「主人公が変身し終えるまで待っていてくれるタイプの敵キャラ」に近いものを感じる。

 

 

「すみません。……まあそんなわけで、無貌に敗れ重傷を負った俺は、奴の攻撃で生じた大地の亀裂から転落しました。けど、落ちた先にあった地下空洞で復讐心だけを支えに何だかんだ生き延び、何だかんだで力を取り戻して、地上へ這い上がってきたんです」

「ところどころ説明が雑だな⁉ 何だよ、『何だかんだで』って」

「秘密だ!」

 

 ブルブラックはなぜか、きっぱりと言い切った。慣れない敬語もやめたようだった。

 

「長くなりそうなので、その話はまた次の機会にしよう。今はまず、目の前の敵を倒す!」

 




今回、ご迷惑をおかけした作品
・ギンガマン
・仮面ライダー滅亡迅雷
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