百合レンジャーvsBLレンジャー   作:クリスタルスカイ

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2 復讐の零騎士!

「……Go to Utopia(自由な世界へ)!」

 

 身の上話が終わったのを察した他殺願望が、ブルブラックを指差して告げた。さらにアタッシュケース型のアイテムを召喚し、弓に変形させる。

 

「自由な世界だと?」

 

 トリガーを引いて放たれた光の矢を、零騎士はいつの間にか召喚していた長剣・ゼロライアットで叩き落とした。剣の柄には、額や胸部のものと同じ結晶が埋め込まれている。

 

「ルーカスの置き土産よ。お前が暴れることでその自由な世界が遠のいていくことが、なぜ分からない!」

 

 

 剣で矢を防ぎつつ接近し、他殺願望の胴を蹴りつける。その反動を利用して、零騎士が高く跳んだ。空中で一回転し、黒い稲妻を帯びた剣を縦一文字に振り下ろす。

 

「お前の過ちは、俺が正す。『零の一撃』!」

 

 対して、超次元ライダーもベルトを操作して必殺技を繰り出した。技名は同じだが、今度はキックではなくパンチ技である。紫のエネルギーを纏った拳で、アッパーカットを放った。

 

『他殺願望・インパクト!』

 

 勝敗は一瞬で決した。

 他殺願望のパンチが届くよりも先に、零騎士の斬撃が敵を真っ二つに切り裂いていた。

 

 

「……ふむ。ギンガの光ではなかったか」

「だからギンガの光って何なのよ⁉」

 

 騎士の呟きとツカサのツッコミは、倒れた他殺願望の体からが巻き起こった大爆発にほとんどかき消されてしまった。

 腰の鞘に長剣を収め、零騎士ブルブラックはどっしりと腰を落として立っていた。爆発で生じた炎を背にしたその姿は、なかなか様になっていた。甲冑のようなマスクに、炎の揺らめきが反射する。

 

 

「フン。口ほどにもない……」

『TASATSU-GANBOU’s ability !』

「ん?」

 

 既に勝利した気でいた零騎士だったが、倒したはずの敵の声を聞いて振り返る。見れば、体を両断された他殺願望がまだ立っており、しかもその全身からは途轍もないパワーが溢れ出しているではないか。

 

「な、何だ⁉ どうして生きている?」

「これが『他殺願望』の性癖の力だ」

 

 カイリが解説してやった。

 

 

「おそらくあいつは、ルーカスの性癖と能力をそっくりそのまま受け継いでいる。死の間際まで追い詰められたときに爆発的に力を増し、かつ敵の特殊能力を一分間封印するんだ」

 

 解説している間にも、他殺願望はどんどんパワーを増幅していく。「零の一撃」で斬られた傷も、すぐに修復された。それでもなおありあまり、行き場を失ったエネルギーを放出すべく、彼は新たなカードキーを取り出して能力を発動した。

 

『Mammoth’s ability !』

 

 原作では巨大な装備を召喚、装着する能力になっているのだが、性癖のパワーに任せた強引な解釈で、あろうことか超次元ライダー本人が巨大化してしまった。みるみるうちに身長五十メートルに届く巨人形態になり、ヒーローたちを睥睨する。

 

 

「まずいわね」

 

 ツカサが漏らした。

 

「超次元界にロボを持ち込めない以上、あたしたちは等身大のまま応戦するしかないわ」

「なら、私の『NTR界氷結』で動きを封じるのはどう? ユリエロイドには有効だったわ」

 

 変身して戦う気満々の美明日に、彼女は手を合わせた。

 

「ごめん。気持ちは嬉しいけど、たぶん今の他殺願望には効き目が薄いと思う。力にものを言わせて、氷の拘束をすぐ破ってしまいそうだし」

「ふむ。諸先輩方には、奴に対して有効な手段がないようだ。ならば、俺が戦おう」

 

 

 意気揚々と零騎士が叫び、長剣を掲げた。

 

「……来い!」

 

 すると、遥か彼方から牛型の巨大モンスターが大地を駆けてきた。騎士に似て黒をメインカラーとした体躯で、土埃を巻き上げながら馳せ参じる。

 そのモンスターの頭部から放たれた光線を受け、ブルブラックも巨大化した。しかし、そのままの見た目で巨大化したのではない。マントが消滅し、代わりに鎧には赤いアーマーが増えている。

 

『Why ⁉ Why you can be big ⁉ I sealed your ability !』

 

 他殺願望が動揺している。日本語訳すると、「なぜだ⁉ なぜお前は巨大化できる? 私はお前の能力を封じたのに!」という感じだろうか。性癖の効果で特殊能力は一分間封じられるはずなのに、零騎士が巨大化のパワーを行使できたことが信じられないらしい。

 

 

「教えてやろう。この力は、相棒のタウラスによるものだ。つまり、俺自身の力ではない。遠方で待機していたタウラスにまでは、お前の封印作用も届かなかったというわけだ。ハッハッハ!」

 

 要するに相棒任せで戦っているので、かっこいいんだかかっこ悪いんだかよく分からない台詞だった。だが零騎士は些細なことは気にせず、合体プロセスを開始した。

 

「――『騎獣合身』!」

 

 タウラスが四本足で踏みしめていた大地が、彼の周辺だけなぜか十メートル以上も隆起する。その天然のステージ上で、牛型モンスターは後ろ脚で立ち上がり、複雑な変形を始めた。

 変形をほぼ終えたタウラスの元へ巨大化した零騎士が駆け、ジャンプ。鎧を着込むようにして牛型モンスターが変形したアーマーと一体化し、槍型の「ツインゼロソード」を右手に構えた。

 黒、金、赤をメインカラーとした、頭部の大きな角が特徴的な巨大戦士である。

 

 

「完成。合身獣士、『ゼロタウラス』!」

 

 隆起した大地のバックで稲妻が降り注ぐ演出の後、ゼロタウラスは他殺願望へ突進した。素早く槍を振るい、敵を滅多打ちにしていく。

 一方の他殺願望は、余剰エネルギーの大半を巨大化のために使い切ってしまっていた。

 

「ロボを使えない相手には、巨大化さえすれば勝ったも同然」と考えてのことだ。別に誤った判断ではない。ただ、計算外の乱入者がいただけである。

 爆発的に湧いてくる力も、巨大化という事象を維持するのに精一杯。慣れないことはするものではない。武器を召喚するのもままならず、劣勢に立たされていた。

 

 

『ZERO-KNIGHT will be extinct!』

 

 仕方なく素手で応戦するが、単純にパワーで押し負けてしまう。相棒と二体合体してゴツくパワフルな姿に変わったゼロタウラスは、シンプルに人型のまま巨大化した他殺願望と比べてかなりガタイがいいのだ。

 

「とどめだ。……『野牛零断』!」

 

 ツインゼロソードを構えたゼロタウラスが、他殺願望へと真っ直ぐに向かっていく。そのまま高速で水平回転し、すれ違いざまに黒い稲妻を纏った必殺の斬撃を浴びせた。

 回転を止めて大地を踏みしめるゼロタウラス。彼の後方では、胴を大きく切り裂かれた他殺願望が火花を散らして崩れ落ちるところだった。もはや、余剰エネルギーによる再生も追いついていない。

 

 今度こそ本当に、ルーカスの置き土産が大爆発の中に消えた。

 

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