「あんた、なかなかやるじゃない!」
「出来のいい後輩を持つと幸せだぜ!」
等身大に戻った零騎士を取り囲み、ツカサたちは拍手喝采で褒め称えていた。
ぶっちゃけ、百合・BLレンジャー全員が全力で戦えば、あの超次元ライダーを屠ることは不可能ではなかったろう。ただ、いかんせん皆疲れていたし、執念深すぎる敵にいい加減萎えていた。飽き飽きしていた。ゲームで例えるなら「余裕で勝てるけど、倒さないと次のステージに進めない敵キャラ」みたいなポジションだった他殺願望である。割とめんどくさい敵をやっつけてくれたことには、感謝しかなかった。
それに真面目な話、他殺願望が巨大化したときの対抗手段は今の百合・BLレンジャーになかったのだ。等身大ならともかく巨大化した場合に限っては、彼らだけで勝てたかどうか少し怪しい。零騎士は見事に弱点をカバーしてくれた。
「ハッハッハ。それほどでもないぞ」
だが、ブルブラックに長話をする気はないようだった。マントを翻すと、足早に立ち去ってしまう。
「さて、この辺で失礼しよう。俺にはやることが山ほどあるのでな。世界中が俺を待っている。世界中が俺を信じてるのだ! ギンガの光が、我を呼ぶ!」
「えっ、もう行っちゃうの? てっきり、追加戦士としてこれからも一緒に戦ってくれるパターンかと……ていうか、結局ギンガの光って何だったのよ⁉」
「まあ、何でもいいじゃないか」
ナオヤが微笑を浮かべた。
「あんなに強くて正義感の強い奴がいるのなら、超次元界の平和はしばらく大丈夫そうだな」
別れのときが迫っていた。
零騎士との別れだけではない。そろそろ人間界へ戻らねばならないのだ。
ブルブラックが面倒なバトルを肩代わりしてくれたおかげで、皆そこそこ休息を取れた。あるべき場所へ帰るときだ。
「ちょっと待っててね」
例の長ったらしい呪文を唱えて、お菊がゲートを開こうとした。
「私がやろう」
彼女を手で制し、ダレンが貴族専用の装飾付きドアを生成する。彼もお菊らの手で治療を受け、だいぶ回復していた。
スムーズに人間界の日本へゲートが通じたのを見て、一同は「この人を倒さなくて良かった」と心から思う。彼には同情の余地があったため、今後は原典を悪用しないようにとの厳重注意だけで済ませたのだった。
気を失ったままのゴークイーンズは、男性陣が担ぎ上げて運ぶことになった。なお BLACON・SUNもまだ気絶していたが、彼は元より超次元生命体なのでこっちに置いて行くことにした。
正義の心に目覚めたらしいバッタの戦士は、もう人を襲わないだろう。これからはお菊たちレジスタンス組織と力を合わせ、無貌支持派壊滅後の超次元界を立て直してほしい。
「またね、お菊さん。僕たちは人間界へ戻るけど、もし何かあったらいつでも連絡してほしい。すぐに駆けつけるよ」
ピーターをはじめ、戦士たちは超次元界へ残る者らへ口々に別れの言葉を投げかけた。一人、また一人と、手を振ってゲートの中へと消えていく。
最後に残ったツカサとカイリは、ダレンを一瞥した。
「なあ。お前はこれから、どうするんだ?」
「ルーカスが倒された今、私の復讐は終わった。これからは私もレジスタンスと協力し、微力ながら平和のために尽くそうと思う。今まで、色々と迷惑をかけてすまなかった」
憑き物が落ちたような表情で語るダレン。無貌支持派の第二位だった彼が一声かければ、支持派残党をまとめることも容易いはずだ。未来はきっと明るい。
「そうか。頑張れよ。俺たちも俺たちで頑張る」
カイリはニッと笑い、桃色のドアをくぐった。
「じゃあね、皆!」
ツカサも笑顔で手を振り、ゲートを抜ける。間もなくダレンがドアを閉じ、消滅させた。
長きにわたるルーカスと、その置き土産との戦いもついに決着。
「何だかんだ」で復活したという謎多きニューヒーロー・零騎士ブルブラックもいることだし、超次元界はしばらく安泰だろう。ようやく、百合・BLレンジャーの激闘の日々が終わったのだ。
ありがとう、百合レンジャー! ゆっくり休め、BLレンジャー! 頼むぞ、零騎士ブルブラック!
◇◇◇◇◇
ルーカスとの激闘から半年が経った。
ようやく超次元界に平和が戻ってきたものの、残された傷跡はあまりにも大きい。目下の課題は、無貌やその支持派によって壊滅寸前に追い込まれた貴族専用居住区の修復であった。
「ていうか、今となっては貴族という階級自体に意味がなくなっちゃってるわよねえ」
王宮を囲む壁の近くに築いた野営地で、お菊は切り株に腰掛け、ダレン相手にぼやいていた。
「だって、生き残っている貴族があなたくらいしかいないんだもの」
「良い機会だ。いっそのこと身分制度を廃止しても構わないのではないか?」
顔に傷を持つ男が応じる。
「これからは皆が平等に生きられる世界にすべきだ。道程は長いが、私たちレジスタンスの力で、世界の在り方を良い方向へと変えていこう」
「――その必要はない」
不意に声がしたので、二人は驚いて振り向いた。
いつの間にか、一人の男が野営地へ踏み入って来ていた。黒いワイシャツにグレーのネクタイ、さらに黒い上着を羽織り、上から下まで真っ黒なスーツで固めた出で立ちである。
年齢は五十代半ばだろうか。年相応の威厳を感じさせる、渋く格好良い風貌だ。
「レジスタンス諸君、よくぞ無貌とその支持派を殲滅してくれた。あとは君たちさえいなくなれば完璧だな」
「……私たちがいなくなる? あなた、何を言っているの?」
怪訝そうな表情のお菊に、男は淡々と語った。
「俺の名は『ブラッコ』。ブラコン族の生き残りだ。俺にはずっと不満があった。この超次元界は、痛みと悲しみに満ちている。だから俺の手で、あるべき姿へ作り変えてやるのさ」
そう言いながら、男は懐から取り出したベルトを腰に装着した。さらに、右手にはメーターやボタンが付いた小型デバイスを、左手には赤い龍のような形状の小型メカを構える。