「裏切り者と邪魔者の始末は終わった。すなわち、これからは処刑ではなく侵略を行うべきだということだ」
盾と剣を構えたSSソルジャーは今、永田町駅で電車から降りたところだった。そのまま迷いのない足取りで歩き、国会議事堂の正面まで移動する。
「他の次元四天王たちは、心の弱い人間を操って手駒を増やそうとしていた。だが、俺様は奴らのような生温い手段は取らない。より直接的な攻撃を行い、すみやかに国家機能をマヒさせてやる!」
国会議事堂へ向け、必殺技「SSエンド」を放とうとするSSソルジャー。移動手段が公共交通機関なのがどうも悪役らしくないけれども、彼の闘争心に嘘はなかった。
「――そうはさせない!」
SSソルジャーが剣を横薙ぎに振るおうとしたとき、その背に投げかけられる声があった。怪訝そうに振り向くと、七人の戦士が並び立っている。
「何てこった。お前たち、生きていたのか」
ツカサ、カイリ、ナオヤ、そして百合レンジャーとBLレンジャーの四人の仲間が今ここに勢揃いし、悪を討つために再戦を挑もうとしていた。
「せっかく拾った命をまた捨てに来るとは、愚かな奴らめ。今度こそ俺様が仕留めてやる」
「勘違いしないでよね。あたしたちが来たのは、あんたに倒されるためじゃない。あんたを倒すためよ!」
「俺たちの本当の力を見せてやる。行くぞ、皆!」
「おう!」
ぴったり息の合った動作で、七人が変身アイテムを構える。エックスチューナー、VSチューナー、BLコマンダーが操作され、各々の体が光に包まれるとともに変身を遂げた。
「警察チェンジ!」
「怪盗チェンジ!」
「『BLファイヤー』!」
その様に圧倒されたのか、SSソルジャーが僅かに怯んだ素振りを見せた。
「……お、お前たちは⁉」
狙ったかのような合いの手である。これはもう、お約束に乗っ取って一同で名乗るしかあるまい。
「孤高に輝く怪盗。サイレントスター! 百合エックス!」
「気高く輝く警察官。トリックスター! BLエックス!」
「スーパースター! BL1号!」
「シノビスター! BL2号!」
「ビーストスター! 百合ブルー!」
「フードマイスター! 百合イエロー!」
と、七人中六人が名乗り、残ったナオヤをカイリとツカサが突っついた。
「ほら、お前もなんか言え」
「もうっ、空気読みなさいよ!」
「わ、分かった。では……二十世紀が泣いている。ポイズンスター! BLファイヤー!」
過去を明かし、心を許し合える仲になったからだろう。今までよりも距離感が近く、ノリも良くなっている。
「よーし。じゃあ、最後に皆で決め台詞といくか! せーのっ!」
さて、個別の名乗りが終わったら、全員でビシッと決めるのも定番中の定番である。カイリが号令をかけ、戦士たちが思い思いのポーズをとった。
ちなみに、SSソルジャーはその間「何が二十世紀だ。今は二十一世紀だろう!」などとブツブツ言っていたが、誰も相手にしていない。
「人の命は地球の未来!」
「銀河を貫く伝説の刃!」
「人も知らず、世も知らず、影となりて悪を討つ!」
「正義のロードを突き進む!」
「天下御免の警察&怪盗戦隊!」
「究極の救世主!」
「百合&BLレンジャー!!」
そして、七人がポーズを決めると、背後で派手に爆発が起こった――なぜ爆発が起きたのかは、本人たちもよく分かっていなかったが。
「……お前たち、ふざけているのか? 名乗りが長すぎる上に、皆言っていることがバラバラじゃないか」
SSソルジャーは呆れたように肩をすくめてみせた。
「無茶苦茶だ。そんな寄せ集めのチームで、俺様に勝てるとでも?」
対して、カイリが強気に言い返す。
「俺もツカサも、百合&BLレンジャーの皆も、瞬間瞬間を必死に生きてるんだ! 皆バラバラで当たり前だ! ていうか、最後の決め台詞はほとんどアドリブだったから、揃うわけがなかったんだよ。それを無茶苦茶とか言うな!」
「お、おのれ~。何だかよく分からんが、お前たちの名乗りって醜くないか? まるでデコボコで、石ころだらけの道だ」
「デコボコの道で何が悪い。皆、行くぞ!」
「おうッ!」
百合エックスとBLエックス、そしてBLファイヤーを先頭に、戦士たちが一斉に突撃した。以前、SSソルジャーと戦ったときとは比べ物にならない気迫が感じられる。
「まとめて地獄に送ってやる。『SSエンド』!」
剣を横方向に振るって、SSソルジャーが炎を帯びた斬撃を飛ばす。その渾身の必殺技を、七人は高くジャンプすることでかわした。
「何っ⁉」
動揺し、天を仰ぐSSソルジャー。次元四天王の最後の一人目がけて、戦士たちが急降下の勢いを加えた技を次々にお見舞いする。
「スペリオル・受け攻めショット!」
「エクセレント・ネコタチエックス!」
百合エックスとBLエックスの放ったエネルギー弾。
「『BLディフェンダー・ファイナルモード』!」
BLファイヤーの繰り出した、冷気を纏った斬撃。
「BL・一撃ストライク!」
「百合・イタダキストライク!」
BL1号・2号、百合ブルー・イエローの光弾が、一気呵成に降り注いだ。
SSソルジャーは盾を構え、それらすべてを受け止めようとした。しかし、七人の連携攻撃の前には無力。シールドが端からポロポロと欠けていき、やがて粉々に打ち砕かれてしまった。
ナオヤが加わって七人になった百合&BLレンジャーは、衝突を乗り越えて真の絆で結ばれた。彼ら全員が力を合わせれば、どんな敵にも負けない!
「馬鹿な。俺様の防御力は、SS級のはず……うわああああっ!」
絶叫が響く。力なく崩れ落ちたSSソルジャーの体は、大爆発に包まれた。その炎をバックに立ち、戦士たちが変身を解除する。
「やったな」
カイリがナオヤの肩を叩いた。
「色々大変だったけど、どうにか次元四天王の最後の一人を倒した。残るは大魔王だけだ」
「ああ。これからも、力を合わせて頑張ろう」
固い握手を交わした二人を眺め、ツカサは何やら呟いている。
「むむっ。もしかしたら、この二人のカップリングも意外とアリじゃないかしら。時々喧嘩して、主導権を握る側がその都度逆転する。で、結果的にさらに仲が深まっていく。良いわね……」
「やめて下さいよ、先輩! ここは普通、『苦労しながらも強敵を倒した達成感に浸る』べきシーンでしょう。妄想をぶち込んだら台無しじゃないですか!」
「べ、別にいいじゃない! サクヤだって腐男子なんだし、あたしの気持ち分かるでしょ⁉」
「気持ちは分かりますけど、声に出さないで下さいよ!」
そんなこんなで、BL警察は今日もにぎやかだ。BL1号・ケイイチロウは二人の横で嘆息していた。
一方では、百合ブルー・トウマと百合イエロー・ウミカも、彼らなりに物思いに耽っていた。
「今ここにいるメンバーの男女比率は五対二。BL派は五人から二人選ぶから、十通りのカップリングを妄想できる。攻めと受けを逆転させれば、その倍の二十通りだ。だが俺たち百合派は、ウミカとツカサのカップリングを妄想することしかできない。選択肢が少ないのは不幸なことだ」
「うんうん、確かに不幸……って、しれっと私とツカサさんのカップリングを妄想しないで⁉」
ワイワイと騒いでいる一同。
しかし、いつまでも国会議事堂の前にたむろしているわけにはいかない。さっきの戦いでの爆発音は、議事堂の中にいた人々にも聞こえていただろう。野次馬が集まってこないうちに退散しなければ。
近くに停めておいた覆面パトカーへ乗り込むべく、七人は歩き出した。BL警察署に全員が集まり、そこから現場まで急行したため、今回は百合レンジャーのメンバーも一緒のパトカーで来たのである。
「皆、まだ気を緩めるなよ。帰るまでが戦う交通安全だ」
運転席に座ったケイイチロウが声を掛け、発車しようとしたときだった。視界の隅に妙なものが映ったのである。
「んっ?」
「どうしたんですか、ケイイチロウ先輩。早く行きましょうよ」
助手席のサクヤが急かしたけれども、彼の表情は硬く、ハンドルを握る手には汗をかいていた。
「今、駅の出口から変なのが出てこなかったか?」
今回、ご迷惑をおかけした作品
・仮面ライダージオウ(劇場版)
・ゴーゴーファイブ
・ギンガマン
・ハリケンジャー
・シンケンジャー
・カーレンジャー