「……なるほど。俺は確かに零騎士ブルブラックを倒した。しかし、奴と融合していたお前はまだ生きていた。そういうことか」
「ああ」
ブラッコの問いに、ヒョウガは頷いた。
「昔から自然や動物が好きだった俺は、大学の長期休暇を利用してアメリカの大自然を探検していた。だが、偶然開いたゲートから転落し、運の悪いことに、落ちた先の超次元界でも地面の亀裂からさらに深いところへ落ちてしまった。そうして地下空洞に落下したとき、俺は既に瀕死だった」
でも零騎士が助けてくれたんだ、と青年は続ける。
「彼と一体化することで、俺は生きながらえた。彼もまた力を取り戻し、戦士として復活を遂げた。俺たちは二人で一人だったのさ」
ヒョウガは知らなかったが、不運にも彼をゲートから転落させたのは同じブラコン一族が一人、三武神・超ブラゴクウの仕業だった。
『超次元生命体のブラコンレンジャー、次元ライダーBLACON、BLACON・RXは、僕自身の体細胞をベースにして生み出した戦士でした。アメリカのヒーローたちを倒すべく送り込んだ僕の弟分たちを、突然現れたロリーニンジャーとかいう奴に倒され、僕は、ものすごく悔しかったんです! ……でも、いざアメリカに来てみれば、ロリーニンジャーは愛用していた武器を探して世界中を旅しているという。で、仕方がないから、他のヒーローたちを倒すことにしました!』
ブラゴクウは以前、こう言っていた。
彼がロリーニンジャーを探してアメリカ中にゲートを開きまくっていたとき――貴族専用ではなく通常のゲートしか開けなかったため、かなり時間がかかった――ヒョウガが探検していた自然公園にも、偶然ゲートが繋がってしまったのである。
「ブルブラックは俺の命を救ってくれた。この恩は一生忘れない。彼の意志を継ぎ、俺は零騎士ヒョウガとして戦う!」
「命を救っただと? 違うな。奴はただ無貌一派に復讐するために、お前の肉体を間借りしていただけだ。お前は零騎士に利用されていたに過ぎない!」
ブラッコは鼻で笑い、ヒョウガ目がけて衝撃波を放った。新たな騎士は、横に転がって辛くも逃れた。
「たとえお前が俺に勝てたとしても、お前は零騎士から感謝されることもなければ、称賛されることもない。……クックック。どうだ、今の気分は? 相棒に裏切られ、お前は無力だ。お前にはもう何もない。いや、初めから何もない空っぽだったんだよ!」
次々に撃ち出される衝撃波を避けるので精一杯なヒョウガに、ブラッコは勝ち誇った声を浴びせた。
「俺たちは、そんなことのために戦ってきたわけじゃない!」
見るからに劣勢だったが、青年は毅然として言い返した。
「なら、どうしてそこまでしてブルブラックの意志を継ごうとする。なぜ、お前は戦う?」
「……決まっている。ラブアンドピース。愛と平和のためだ!」
長剣・ゼロライアットをショットガン型に変形させ、零騎士が叫ぶ。
「一体化している間、ブルブラックと俺の心は一つだった。彼は体をしばし借りることを詫び、『愛と平和のために戦わせてほしい』と言った。俺はその理想に共鳴し、肉体の自由を許した。利用されてなんかない。俺は自分の意志で、彼と一緒に戦う道を選んだんだ!」
ショットガンで超次元ライダーに狙いを定めると、ヒョウガは高く跳んだ。
「俺たちが戦っているのは、愛と平和のためだ。俺たちが超次元界の明日を創る。その思いは、誰にも打ち砕けない! ――『零の撃弾』!」
「ぐああっ⁉」
銃から漆黒の光弾が放たれ、ブラッコの胸部に直撃した。よろめき、後ずさった敵に、零騎士の新たなる技が炸裂する。空中で武器をショットガンから長剣へ再変形させ、その技の名を呼んだ。
「『零の衝撃』!」
ジャンプしたそのまま超次元ライダーへ飛びかかり、稲妻を纏った剣で袈裟懸けに斬りつける。ブラッコのアーマーから激しく火花が散った。
「お、おのれ。調子に乗るな!」
怒り狂った超次元ライダーはベルトを操作し、必殺技を発動した。「グレート・ブラコニックフィニッシュ!」の音声に続き、蛇の顎型の破壊エネルギーを纏った回し蹴りを見舞おうとする。
だが零騎士は、ブラッコの攻撃を危なげなくかわしてみせたのだった。
「……とどめだ」
散った相棒への思いを胸に秘め、ヒョウガは気合と共にもう一度跳んだ。宙返りを決めたのち、先刻同様に雷のエネルギーを帯びた長剣で、ブラッコを真っ二つに斬る。
「『零の一撃』!」
「何だ、この力は⁉ なぜ人間ごときに、この俺が……」
バリアを張ったけれども防ぎきれず、無惨に体を切り裂かれたブラッコ。敗北した事実を受け入れられず、呆然とした表情を浮かべたまま爆散した。
ベルトとそれに装填されていたドラゴン型メカは完全に破壊され、あとに残ったのは「ハザード性癖トリガー」と呼ばれる妙なデバイスのみだった。
「人間だからお前を倒せたんだよ」
相棒の命を失った上での勝利は、苦い味がした。戦利品のトリガーを拾い上げ、ヒョウガはぽつりと言った。
その後、「ダレン・レガシー」の飛行能力を使い、ヒョウガを連れて二人は無事に地上へ戻った。ブラッコが倒されたことで洗脳も解け、危機は去った。
「助けてくれて、本当にありがとう! お礼におっぱい揉ませてあげてもいいわよ?」
「……彼女の言うことはつまらないジョークだとでも思えばいい。それより貴様、これからどうするつもりだ。人間界へ戻りたいなら、ゲートで送るが」
お菊からは感謝され、彼女にまあまあ塩対応なダレンからは問いを投げかけられる。青年は困ったように微笑んだ。
「それじゃ、お言葉に甘えて送ってもらってもいいですか? 向こうで家族が心配していると思いますし、一旦帰りたいです」
家族や知人に事情を説明するのは、骨が折れるだろう。けれども、仲間の死を乗り越えて戦士として立派に成長したヒョウガなら、これから先どんな困難にも立ち向かえるのではないだろうか。
超次元界に破滅をもたらそうとした超次元ライダー・ブラッコは、零騎士ブルブラックとヒョウガ、それにダレンやお菊の尽力で打ち倒された。
ありがとう、ブルブラック! 頼むぞ、ヒョウガ! 人間界と超次元界の未来は、ニューヒーローの君にかかっている!