百合レンジャーvsBLレンジャー   作:クリスタルスカイ

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第19話 超大物、来襲!

「変なの……?」

 

 そう言われて、後部座席の皆も目を凝らした。サクヤが思わず「あっ」と声を上げる。

 

「い、いました! 変なの!」

 

 眼鏡を掛け、杖をつき、マントを羽織った男。それだけならば「変な格好」で済むのだが、奇怪なほど大きく膨らんだ頭部は妖怪ぬらりひょんのようであり、鈍い金色に輝く皮膚も人間のものではなかった。

 

「……あいつは」

 

 ナオヤが息を呑んだ。

 

「父さんだ。俺が倒そうとして失敗した、次元大魔王。高次元生命体の大ボスが、どうしてこんなところに⁉」

 

 

「やっぱり高次元生命体だったわね」

 

 後部座席から身を乗り出し、ツカサは興味津々に大魔王を観察していた。

 

「部下が部下なら、ボスもボスだわ。移動手段に電車を使っている悪者なんて、たぶんあいつらくらいじゃないかしら?」

 

 きっと今頃、永田町駅はちょっとした騒ぎになっているに違いない。何せ、SSソルジャーに続き次元大魔王までもが電車から降りてきたのだから――乗り合わせた乗客や駅員が被害に遭っていないことを祈る。

 

「あいつ、どこに向かうつもりだろう。尾行してみようぜ」

 

 カイリの提案で七人はパトカーから降り、街路樹などに身を隠しながら大魔王を追うことにした。男は杖をつきながらもすたすたと歩き、先刻SSソルジャーが倒された辺りまで移動していく。

 次元四天王最強の戦士の肉体は、爆発とともにほとんど燃え尽きていた。残っていたのは、アーマーや武器の細かな破片のみである。

 それを拾い上げ、大魔王は涙を流していた。

 

「おお、我が忠実な部下、SSソルジャーよ。お前の終着駅が見えてしまったことは、本当に残念だ」

「……泣いてるぞ?」

「泣いてるわね」

 

 カイリはツカサと顔を見合わせた。ナオヤの話を聞く限りでは随分と冷酷そうな父親のようだったが、戦死した配下を偲んで涙するとは、人情味があるようにも思える。

 

 

「――いや、違う。父さんは優しくなんかない」

 

 二人の心を読んだかのように、ナオヤが苦い顔で吐き捨てた。

 

「息子である俺のことを、父さんはSSソルジャーに命じて殺そうとした。俺が死んでもどうでもよかった。なのに、部下が死ねば泣いて、心から悲しんでいる。奴は昔からそういう男なんだ」

 

 大魔王のSSソルジャーに対する態度とナオヤに対する態度の間には、明らかに大きな差がある――彼が言いたいのは、おそらくそういうことだろう。ナオヤがかつて大魔王暗殺を企てたことを考慮しても、非情な仕打ちだと思えた。仮にも自分の息子を殺そうとするとは、何事か。

 次元大魔王の心の中には、何か決定的に歪んだ部分があるに違いなかった。

 

 

「隠れても無駄だ。出て来い」

 

 不意に、大魔王がツカサたちの方へ振り向いた。先ほどまで涙を流していたはずだけれども、今やこの妖怪の頬はすっかり乾いている。もしや、SSソルジャーへの情さえも大したことはなかったのだろうか。

 

「くそっ、バレてたのかよ」

 

 カイリがぼやき、木陰から姿を現す。他の六名も、武器を構えて警戒しながら大魔王と対面した。

 

「お前たち人間の考えることなど、勝利のイマジネーションの力ですべてお見通しだ」

 

 次元大魔王はにやりと笑い、ナオヤを一瞥した。

 

「トランガよ、SSソルジャーを倒したことは褒めてやる。もっとも、お前一人の力では大したことはできなかったようだがな。『SSエンド』を受けたときに、死んでおれば良かったものを」

「ちょっと、あんた!」

 

 カチンと来たのか、そこでツカサが口を挟んだ。

 

「自分の息子に対して、その言い方はないんじゃないの」

「息子だと?」

 

 大魔王は乾いた笑い声を上げた。

 

「トランガを息子だと思ったことなど、一度もない。役立たずの出来損ないだ。むしろ、こんな奴が俺の血を引いているという事実が腹立たしい」

「あんたって奴は……」

 

 怒りに震え、詰め寄ろうとしたツカサを、ナオヤが慌てて「よせ」と制する。

 

「俺のために怒ってくれるのはありがたいが、挑発に乗っては奴の思うつぼだ。今は耐えろ」

「そ、そうね。ごめんなさい」

 

 ツカサは僅かに顔を赤くし、うつむいた。

 

 

「SSソルジャーを撃破したその強さに免じて、今日のところは退いてやろう。だが、ゆめゆめ忘れるな」

 

 次元大魔王が杖を持ち上げ、七人の戦士を順々に指差していく。

 

「俺が今まで数多の世界を植民地化してこれたのは、どんな困難に直面しても絶対に諦めなかったからだ。この世界の征服を諦めるつもりは毛頭ない。然るべきときが来れば、必ずやお前たちを葬って侵略を成功させてみせよう」

 

 思えば、大魔王の侵略計画はかなり気の長いものだった。

 四天王の一人目、ベノムの作戦には何年もかかっている。人々の間に百合とBLを大流行させ、両勢力の対立を煽り、やがては抗争の激化によって日本の国土の大半を吹き飛ばす。直接自分の手を汚さずに人類を滅ぼす、狡猾な計画だった――結局は、百合エックスとBLエックスの活躍によって失敗したけれども。

 どんなに時間がかかろうとも、大魔王はいずれこの世界を征服する気でいる。尋常ではない執念深さだ。ナオヤが父親の暗殺を決意したのは「殺しでもしない限り、父さんは諦めない」と考えたからかもしれない。

 

「覚えておけ。この借りは必ず返す。次に会うときが、お前たちの命日だ!」

 

 捨て台詞を吐いて、大魔王が踵を返した。次の瞬間、彼の姿がかき消える。

 

「もしかして、テレポート的な能力を使えるのかしら?」

「だとしたら、何でわざわざ電車で来たんだよ。意味分かんねえよ。何なんだ、あのクソデカ頭」

 

 ツカサとカイリがまたぶつくさ言い始めた。対してナオヤは、大魔王が消えた虚空を険しい顔つきで睨みつけている。

 

「……参考までに聞いておきたいんだが」

 

 遠慮がちに、ケイイチロウが彼に尋ねた。

 

「次元大魔王というのは、実際どのくらい強いんだ?」

「半端ないぞ」

 

 ナオヤは暗い表情で続ける。

 

「次元四天王の四人が束になってかかっても、父さんには敵わない。今のまま挑めば、俺たちは間違いなく皆殺しにされる」

 

 

 BLファイヤー・ナオヤと心を通わせ、ついにSSソルジャーを打ち破ったツカサとカイリ。しかし、とうとう最大の脅威が、次元大魔王が現れてしまった。

 決戦の日は迫っている。はたして、七人の戦士は大魔王に勝てるのだろうか?

 頑張れ、百合レンジャー! 戦え、BLレンジャー! 地球の未来は、君たちの手にかかっている!

 




今回、ご迷惑をおかけした作品
・トッキュウジャー
・カクレンジャー
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