百合レンジャーvsBLレンジャー   作:クリスタルスカイ

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25 すするラーメン、描く未来。

 その頃、特命女王戦隊はというと。

 

「思えば私たち、序盤で服役して無貌との決戦間際になってようやく出てきましたから、中盤以降で登場したヒーローたちと全然関りがありませんわ~!」

「心を入れ替えたのですし、先輩方から色々と学びたいですわ~!」

 

 ファミレスでテーブル席を囲み、賑やかにお喋りしていた。

 

 

 ルーカスとの戦いの時、速攻で気絶させられてあまり活躍できなかったのも気にしているのかもしれない。虚無英雄会という新たな脅威が出現した現在、これまでと同じ自分たちでいても百合・BLレンジャーの役には立てないと感じていた。

 

「では、中盤以降の追加戦士、BLファイヤー、オメガ珈琲シルバー、零騎士の元を訪問するのはどうですの?」

「それがいいですわ~!」

「賛成ですわ~!」

 

 相変わらず赤、黄、青の信号機カラーの服を着た女王三名は、とんとん拍子に話を進めた。

 

 

 まず、BLファイヤーに変身するナオヤを訪ねることにした。

 ちょうど仕事の昼休憩だったようだ。警察本部から出てきた彼は、近くのラーメン屋に入って行った。「らーめんプリミティブ龍郎」と看板が出ている。

 ゴークイーンズの三人が店内を覗いてみると、客の九割は男性だった。見るからに油っこく、頻繁に食べていると健康に悪影響が出そうな大盛りラーメンをガツガツと食べている。

 

「女三人では入りづらいですわ~!」

「こんなことなら、下僕二名も連れてくるべきでしたわ~!」

 

 

 あいにく彼らは「今日はポ〇モンカード新弾の発売日なので」という舐め腐った理由で、女王戦隊の活動をお休みしていた。朝イチでカードショップの待機列に並んで、帰宅して開封。もしレアカードが当たったら、相場が高いその日のうちに売りに行くらしい。

 

「戦隊としての活動よりも転売ヤーのごとき行為を優先するとは、許しがたいですわ~!」

 

 レッド・クイーンはぷんぷん怒っていた。もっとも、「戦隊としての活動」なんてあってないようなもので、特命女王戦隊ゴークイーンズは現状「暇な大人たちによるSMプレイ同好会」でしかないのだが。

 元々三人の女王はそういう系統のお店で働いていて、下僕二名がそこの常連だった。たまたま高次元生命体エンダーに声を掛けられ、力を得ただけの一般人である。ちなみに、逮捕されたりして色々あったため、今は全員無職。こいつらの生活費は一体どこから出ているのだろうか。

 

 

 躊躇する気持ちもあったが、「虎穴に入らずんば虎子を得ずですわ~!」とイエロー・クイーンが言ったのをきっかけに、一同は入店の決意を固めた。

 ドアをスライドさせて開けると、食券機が目に入った。まずここで券を買わねばならないらしい。とりあえず、三人とも「並盛」を選んだ。

 

 基本的に、初めて行く店でいきなり大盛りを頼むのは避けるべきである。なぜなら、その店での並盛の基準が分からないからだ。下手に大ボリュームの食事を注文してしまうと、食べきれないこともある。

 カウンター席に並んで座る。ナオヤの席とは四席分の間が空いているため、尾行に気づかれてはいないようだ。セルフサービスのお冷をガラスコップに注いで着丼を待っていると、不思議な呪文が店内各所から聞こえてきた。

 

 

 大将が客へ視線を向け、「お好みは」と渋い声で問うと、客たちは口々に言うのだった。

 

「ヤサイマシ、ニンニク、アブラで!」

「普通で」

「全マシで」

「ヤサイマシマシ、ニンニクでお願いします」

 

 

 一部、本当に訳の分からないことを言っている者もいた。あれか、裏メニュー的なやつなのだろうか。

 

「ドメタリック・ヤサイ! ドハデニック・ニンニク! ドハデニック・アブラ! ドラゴニック・ラーメン!」

「愛情のヤサイ! 勇気のニンニク! 誇り高きアブラ! エモーショナル・ラーメン!」

「界時、逆回! ヤサイは……ニンニクは……アブラは、アブラは、アブラは、アブラは我なり!」 

 

 

 ラーメン屋の独特な雰囲気に完全に吞まれてしまい、女王たちは困り顔で囁き合った。

 

「弱りましたわ~。注文方法が全く分かりませんわ~!」

「法則性が見い出せませんわ~!」

 

 そんなことを言い合っているうちに彼女たちにも注文の番が回って来て、大将が「お好みは」と問うた。もはや考えている時間はない。

 

「こういうのは、フィーリングが大事ですわ~!」

 

 諦めた女王たちは、直感に従って次々にトッピングをコールした。

 

 

「バキバキ、ボーン! メラメラ、バーン!」

「シェイクハ~ンズ!」

「エレメント、マシマシ! キズナ、カタメ!」

「……??」

 

 残念ながら大将には通じなかったようで、彫りの深い顔が険しくなった。

 

「お客さん、うちにそんなトッピングはないよ」

「そんな馬鹿なですわ~! さっきの意味不明かつ長ったらしい注文が通用するのに、何で私たちのは通じないんですの~⁉」

「……意味不明とは何だ、失礼な!」

 

 

 先ほど「我なり!」と謎のコールをしていた男性が、勢いよく席から立ち上がった。弾みで、ラーメン鉢の中のスープが「バッシャーン!」「バッシャーン!」と大きく揺れる。

 

「俺を怒らせるな。粛清するぞ」

 

 連れの女性が「お兄様、落ち着いて下さい!」と悲鳴を上げた。

 

「ちょっとお客さんたち、静かにしてくれませんか」

 

 そこに大将も割って入ってくる。

 

「ともかく、お嬢さんたち三人がラーメン初心者なことは理解しましたよ。一旦、トッピング全部普通盛りのラーメンをお出ししますんで、今日のところはそれを召し上がって下さい」

「あ、ありがとうございま……え?」

 

 

 ゴークイーンズは知らなかった。ここのラーメン屋は、たとえ普通盛りであってもヤサイの量が四〇〇グラム以上あるということを。一般的なラーメン屋の大盛りが、ここでの普通なのだ。間もなく着丼したラーメンの異常な量に、目を疑う。

 青ざめる女王たちをよそに、ナオヤは「ごちそうさまです」と席を立った。ひっそりと「ヤサイ少なめ」で注文していた彼は、ラーメン完食にさほど時間を要さなかったのである。最後までゴークイーンズの存在に気づかぬまま、さっと退店していく。

 

 

「ナオヤ先輩の訪問は、諦めるしかなさそうですわね……。もうすぐお仕事に戻られるのでしょうし、無理に取材することはできませんわ~!」

「それよりもまず、この大ボリュームを何とか食べきらなければなりませんわ~!」

 

 あとに残された三人は、絶望の中で必死にラーメンをズルズル啜った。こういう店特有の、お残しが許されない空気が店内には満ちていた。

 




※次回の更新は一週間後の予定です。
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