百合レンジャーvsBLレンジャー   作:クリスタルスカイ

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26 ぶちかませ!女王忍法・影ノ舞

 やっとの思いでラーメンを完食した女王たちのお腹は、もうはちきれそうだった。しばらくは何も食べたくない。胃もたれしそうだ。

 運動がてら遠出しようという話になり、善は急げ(?)で新幹線に飛び乗る。約一時間半で名古屋に着き、バスでオメガ珈琲本店まで移動した。

 

「……で、俺の話を聞きたいって?」

 

 オメガ珈琲シルバーこと早川裕介は、女王たちに疲れ切った笑みを向けた。彼は昨夜遅くまで残業し、新メニューを考案していたのである。目の下の隈が濃い。

 

 

「悪いけど、また後日にしてくれないか? 今は仕事中だし、ここのところずっと寝不足だから、退勤したらすぐ爆睡したいんだ」

「遅くまで虚無英雄会と戦っているだなんて、さすがですわ~! 私たちも見習わなければなりませんわ~!」

「いや、そういうわけじゃないけど」

 

 どうでもいいけどこいつら何だかニンニク臭いな、と裕介は思った。

 ラーメンを食べた後の口臭ケアは大切である。おすすめは烏龍茶。臭い対策になるだけでなく、脂肪の吸収を抑える効果もある。ミンティア等も合わせて食べておくと、なお良い。

 

「要するに、サラリーマンも大変だってことだ。今日は正直厳しいかもな」

 

 などとお断りしようとしていると、事務所のテレビの音が漏れ聞こえた。裕介の顔色が変わる。

 

 

『速報です。都内の大学にて、虫に食われたレモンの武装兵が暴れているようです。零騎士と交戦中ですが、優勢に立っています!』

 

「……こんな妙なことをしでかすのは、虚無英雄会に違いない」

 

 虫に食われたレモンの武装兵と聞いてもビジュアルが何一つ具体的に思い浮かばなかったので、事務所に入ってテレビ画面を凝視する。なるほど、黄色と青の鎧の戦士が映っていた。

 半透明の膜のようなもので零騎士とレモンの戦士が包まれ、その中でレモンの戦士が一方的に攻撃を仕掛けている。既視感のある光景だった。

 

「これも何かの縁だ。お前たち、俺の代わりに零騎士を助けに行ってやってくれないか」

 

 戦士の顔になった裕介は、真剣な眼差しをゴークイーンズに向けた。残業続きで体が疲弊している今の彼では百パーセントの力を発揮できないので、代理を立てたのだった。

 

 

「見たところ、あのレモン野郎の能力は三武神アマエマックスに似ている。フィールド内で無双するタイプの奴は大抵、その外からの攻撃に弱い。一発ぶちかましてやれ」

「零騎士さんのところもお訪ねする予定でしたから、それは構わないのですけれど」

 

 レッド・クイーンが首をかしげる。

 

「今から東京まで戻っても、間に合わないのではなくて?」

「心配ない」

 

 裕介が指を鳴らすと、猛牛とサイをイメージした巨大マシンが自動操縦で大地を駆けてきた。本店の前で停止し、コックピットへ続く扉が開く。

 

「元々は俺と美明日用に作ってもらったマシンで、合体して来部ボクサーにすることもできる。けど、合体させないまま使った方が移動手段としては速いぜ」

「助かりましたわ~!」

「行ってきますわ~!」

 

 

 三人は口々に礼を述べ、巨大マシンに乗り込んだ。それぞれに一人ずつしか乗れない設計だったが、ブルー・クイーンとイエロー・クイーンはおしくらまんじゅうして無理やり乗った。レッド・クイーンは優雅に一人で搭乗した。

 

『大地を揺るがせ 珈琲ライナー! 荒野を目指せ 来部ファイアー! 二人のハートを 真っ赤に焦がす』

 

 乗り込んだ瞬間に変な歌が流れ始めたが、裕介に「歌は気にするな」と言われたのでスルー。目的地を設定して自動操縦を再スタートさせた。

 

 

『ロック・オン!』『インセクト・レモン!』

 

 リョウマが零騎士へ光の矢を放とうとしたそのとき、「お待ちなさいですわ~!」とやかましい声が講義室いっぱいに響いた。

 

「誰だ⁉」

 

 思わず攻撃の手を止め、辺りを見回す虫食いレモン野郎。彼を見下ろすかのように、三人の女王はすり鉢状の講義室の最上段に並び立った。

 

「名古屋から、シュシュッと参上ですわ~!」

「先輩方を訪問した記念に、今日は名乗りをちょっと長めにしてみますわ~!」

「アドリブとも言いますわ~!」

 

 

 しかしヒョウガたちからすれば、なぜこいつらが名古屋に行っていたのかは不明なわけで。案の定、零騎士もリョウマもぽかんとしていた。

 なぜか桜吹雪が舞い始めた。女王たちはブレス型アイテムを操作し、「レッツ、モーフィン!」と発声。全身真っ黒なSMプレイ用衣装を纏い、どこからか取り出した編笠を差した。

 

「風が鳴き、空が怒る! レッド・クイーン!」

「水が舞い、波が踊る! ブルー・クイーン!」

「大地が震え、花が歌う! イエロー・クイーン!」

 

 歌舞伎役者のように大見得を切りながら、編笠を投げ捨てていく。おそらく演出上の小道具なのだろうが、編笠の出番は短かった。

 

 

「人も知らず!」

「世も知らず!」

「SとなりてMを鞭打つ!」

「「「特命女王戦隊、ゴークイーンズ! あ、参~上~~!」」」

 

 最後にパンと手を叩き、忍者っぽい決めポーズを取った。

 

「……ええい、やかましいわ!! 私の邪魔をするな!」

 

 苛立ちを隠さず、リョウマが唸る。ドライバーのレバーを一度引き、必殺技を発動させた。

 

『インセクト・レモンスカッシュ!』

 

 

 立体映像が四つ投影され、女王らを前後左右から取り囲む。幻で敵を翻弄したのちに、本体がエネルギーを帯びた斬撃を浴びせる技であった――本来ならば。

 

 ゴークイーンズは今「マスターインセクトシステム」の効果範囲外にいる。したがって、斬撃を当てるには一旦システムを解除しなければならないのだが、今回は立体映像で惑わして時間稼ぎができさえすれば良かった。その間に悠々と零騎士にとどめを刺してやろう、とリョウマは目論んでいる。

 つまり、「この程度の奴らを足止めするのに、必殺技の効果を全部使うまでもない」と高をくくっていた。

 

 

「そういうわけにもいきませんわ~!」

 

 けれども、女王たちは怯まなかった。立体映像の脇をすり抜けてリョウマへ肉薄し、破壊エネルギーを纏わせた鞭を振り上げる。

 

「私たちの新必殺技、見せてやりますわ~! 『女王忍法・影の舞』!」

 

 障子状のエフェクトが出現し、その裏で戦うヒーローたちの姿は黒い影と化す。SMの女王様たちの影が高速移動し、「マスターインセクトシステム」の半透明な障壁に、鞭の一撃を叩き込みまくった。

 ルーカスとの戦いで、彼女たちの攻撃はまるで通用しなかった。しかし、一発の威力が低いのならば手数で圧倒する作戦で、ゴークイーンズもまた腕を上げたのである。

 

 

 ほどなくしてフィールドは粉々に砕け散り、システムの効果も解除された。レモンの戦士による強制弱体化は終了し、零騎士は本来のパワーを取り戻した。

 

「……ありがとう、ゴークイーンズ。おかげで助かった」

 

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