「それでは会合を始める」
会長の声に、虚無英雄会の役員三名は居住まいを正した。本来は四人いるはずだが、先日零騎士に負けて拘束されたリョウマは現在、法の裁きを受けている。
教会の中に置かれた木製の長椅子に、彼らは腰掛けていた。といっても、横一列にきちんと並んで座ったわけではなく、てんでばらばら。個人主義者が多そうな雰囲気である。
「最初に、役員のリョウマ君の敗北についてだ。なぜ彼を一人で行かせたのかね」
「能力の特性上、彼は敵と一対一の状況で最大のパフォーマンスを発揮できます。本人も一人で戦うのを好むため、増援は送りませんでした」
「その結果、零騎士の方にだけ助っ人が来て、あっさり負けたのでは意味がなかろう」
会長から冷たい目を向けられ、役員たちは慌てて頭を下げた。
「申し訳ございません!」
「やれやれ。もう少し、協調性を重んじたまえよ」
ため息をつき、会長は「原典の無駄遣いだ」と呟いた。
「せっかく外部顧問が原典を持ち込んで下さっているのに、これでは困るよ。……それで? 次はどういう作戦でいくつもりかね」
「次こそは、複数名に任務を遂行させます!」
女性の役員が声高に言った。
「数で負けさえしなければ、戦隊など敵ではありません。精鋭部隊で一網打尽に」
「――待て。待ってくれ!」
ぜいぜい、と息を荒げて、教会の扉を勢いよく開けた者がいた。
「頼む。次の作戦は私に任せてもらいたい。今度こそ必ず、零騎士を倒す!」
「ほう」
会長が面白がるように彼を眺める。
「リョウマ君。てっきり君は、BL警察に拘束されたと思っていたのだが」
「脱獄してやりましたよ。このドライバーの力で」
そう言うリョウマの腰には、ヒョウガの技で破壊されたはずのジューサー型ドライバーが巻かれている。さらに、零騎士との戦闘で負ったはずのダメージからも完全に回復していた。
何より異質なのは、彼の口元に装着された、機械でできたマスクだ。そのせいで、声が少しくぐもって聞こえる。
「私が使用した原典のキャラクターは、本編で死亡した後、劇場作品にて疑似的な復活を遂げている。過去に亡くなったキャラクターたちを、機械生命体が素晴らしいテクノロジーで完璧に再現し、記憶も引き継いだのさ。その特性を発揮すれば、体の傷も変身用のドライバーも、簡単に復元可能だ」
リョウマが白衣のポケットから取り出した錠前には、レモンではなく別の、赤い果実の模様が描かれていた。レモンのときと同じく虫食いがあるが、これが復活に際しての新たな力というわけなのだろうか。
「会長、どうか私にリベンジさせて下さい。次こそは零騎士の息の根を止めてみせます!」
「君の熱意は素晴らしいが、感情に任せて特攻しても玉砕するだけだ」
少し頭を冷やしなさい、と会長は首を振る。
「そ、そんな……」
「代わりに、別の任務を与えよう。リボンダーマンの討伐だ」
ロリーニンジャーがアメリカのヒーローの一員として活躍していた時期はとうに過ぎ、正体を現したルーカスは百合・BLレンジャーを散々苦しめた末に倒された。彼がヒーローでなくなった今、アメリカの防衛戦力は落ちている。
ここでかの国を代表するヒーロー、リボンダーマンを完膚なきまでに叩きのめしておけば、日米のヒーローたちの士気は下がること必至。会長はそう読んでいた。
「まずはニューヨークで、復活した君の力を試すといい。ヒーローたちを圧倒できたのなら、改めて零騎士討伐の任務を与える」
「……お安い御用です」
眼鏡に白衣の男は、ニヤリと笑った。
「ところで、移動手段は?」
「どうもありがとうございます、外部顧問」
桃色の扉を閉じる前に、リョウマは礼を言うのを忘れなかった。
「おかげさまで、ニューヨークまで一瞬でした」
「……」
返事はなかった。
バタン、と一人でに扉がしまったことで、二人の会話は強制終了させられた。いや、もしかしたら外部顧問が扉を操作したのかもしれない。
「フン。相変わらず不愛想な人だ」
まあ、暴れられるのなら何でもいい。リョウマは懐から赤い錠前を取り出し、側面のボタンを押した。
『インセクト・ドラゴンフルーツ!』
錠前をドライバーにセットし、レバーを一度引く。虚空から、龍のうろこのように特徴的な果皮のフルーツ型アーマーが落ちてきた。アーマーは頭部に合体すると同時に展開し、赤く頑丈な鎧となる。
『ソーダ!』『インセクト・ドラゴンアームズ!』
果汁が飛び散るようなエフェクトが発動したのちに、変身が完了した。リョウマは早速弓矢型の武器を召喚し、ニューヨークの高層ビル群目がけて光の矢を乱射した。
「さあ出てこい、リボンダーマン。君が現れない限り、私は破壊を続けるぞ!」
「……やめろ!」
彼の予想通り、ヒーローはすぐに現れた。手首から伸ばしたリボンで振り子のように体を揺らし、リボンダーマンはやってくる。
地面に降り立った彼は、リョウマと対峙した。
「君の狙いは僕だね。関係ない人たちを巻き込まないでもらえるかな」
「利用できるものは全て利用する。それが私の戦い方だ」
錠前をドライバーから一旦外し、弓矢に装填。エネルギーを集中させ、リョウマは高威力の光の矢を放った。
「おっと、申し遅れたか。私の名はリョウマ。虚無英雄会の会長の命により、君を葬る!」
『ロック・オン!』『インセクト・ドラゴンフルーツ!』