百合レンジャーvsBLレンジャー   作:クリスタルスカイ

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31 這い寄れ!アメリカンズ

 倒れ、呻いている二人の戦士は、しかしまだ変身解除されていない。今度こそとどめを刺すべく、リョウマは弓を片手に近づいた。

 

「――ハットマンを倒すのは、この僕だ!」

 

 そのとき、銃声が響いた。胸部のアーマーに弾丸を受け、リョウマがよろめく。

 

「な、何者だ⁉」

「チョーカーさ」

 

 カツン、カツンと歩いてくる男は、道化師のようなメイクを顔に施していた。右手には機関銃を構えている。

 そしてなぜか、左手にはサイクロン掃除機を携えていた。認識音か何なのかは不明だが、時折掃除機の本体が「サイクロン!」と鳴き声を上げている。やけに渋くてかっこいい声だった。

 

 

「……誰だって?」

 

 チョーカーのデータを揃えていなかったからか、リョウマは聞き返した。

 

『サイクロン!』「チョーカーだ!」

「え、何て?」

『サイクロン!』「チョーカー!」

 

(デレデレデー、デッデッデッ、デンデデン!)

 

 掃除機が妙なBGMを流し始めた。

 

 

「ともかく、宿敵ハットマンを倒すのは僕の役目だ。ポッと出の悪者に潰されちゃ敵わないよ」

 

 機関銃をリョウマへ向け、チョーカーが告げる。

 

「それに、この街は僕の庭だ。勝手に踏み荒らさないでもらおう。……さあ、お前の罪を数えてみろ!」

「小賢しい。銃と掃除機しか持たない生身の人間ごときが、私に勝てるとでも?」

 

 昆虫性愛の能力を発動し、リョウマはチョーカーをイナゴの群れに襲わせた。動きを封じたところを確実に仕留めるつもりらしい。

 

「……どうやら切り札は、常に僕のところへ来るようだな」

 

 だが、彼の目論見は潰えることになる。チョーカーのサイクロン掃除機が唸りを上げ、イナゴたちを吸い込んでしまったからだ。

 

 

「お前たちの戦いは少し観察させてもらった。その気色悪い能力を封じるには、市販の家電があれば十分だ!」

 

 イナゴを吸い込みまくった掃除機の内部をあまり想像しないようにしつつ、道化師が啖呵を切る。対するリョウマは歯ぎしりし、怒りに震えていた。

 

「君は、私の性癖の力が掃除機以下だとでも言いたいのか⁉ 舐めないでもらおうか」

「男の戦いの八割は決断、そこから先はおまけみたいなものさ。お前の能力の攻略法を見つけた時点で、僕はこの戦いに勝ったも同然だ」

「フン。昆虫性愛による妨害が効かないのなら、力でねじ伏せるまでよ!」

 

 

 弓から光の矢を連射し、リョウマはチョーカーに接近した。中距離で激しい撃ち合いが始まる。

 

 その様子を眺め、リボンダーマンとハットマンは顔を見合わせた。スーツの埃を払って立ち上がり、頷き、宿敵の方を向いて呼びかける。

 

「……チョーカー、少しだけ時間を稼いでくれ。すぐに戻る!」

 

 

 五分後。

 イナゴの大群こそ攻略したものの、チョーカーは押され気味だった。立体映像の投影や光学迷彩、高速移動ができるリョウマの力全てを攻略することは難しい。

 

「さっきまでの威勢はどうした!」

 

 チョーカーの周囲へ立体映像を並べて惑わしつつ、本体は光学迷彩で姿を消す。さらに、迷彩を纏ったまま高速移動を発動し、リョウマは一方的にチョーカーへ斬撃を見舞った。

 

「チッ……」

 

 地面に倒れ伏したチョーカーに、弓で狙いを定めたとき、離脱していた二人が戻ってきた。手にはレジ袋を提げている。何やら色々と買ってきたようだ。

 

 

「――待たせたな、チョーカー!」

「こんなときに、のんびりと買い物か? 邪魔をするな!」

 

 とどめを刺そうとして失敗続きのリョウマは、苛立っていたに違いない。振り向きざまにイナゴの群れを放ち、身動きを封じようとした。

 

「同じ手を何度も食うかよ!」

 

 けれども、ハットマンがレジ袋から取り出した殺虫スプレーを浴びせると、イナゴたちはバッタバッタと倒れていく。バッタだけに。

 

「な、ならば光学迷彩で……」

 

 姿を消し、不意打ちを図るリョウマ。が、オーバーリボンズが小麦粉袋を放り投げ、「オクトパス」のスタンプで出現させた機械アームで袋を破いた。降り注いだ小麦粉が、見えないはずの敵のシルエットをぼんやりと浮かび上がらせる。

 

「そこだ!」

『オクトパス! リボンズ・レクイエム!』

 

 

 四本のアームにエネルギーを充填し、思い切り叩きつけた。衝撃でリョウマは吹っ飛び、光学迷彩も解除される。

 

「……クソッ。だったらこれでどうだ!」

 

 立体映像を横並びに多数展開し、本体の姿を覆い隠す。同時に高速移動を使い、リョウマは映像の陰に隠れて必殺の一撃を繰り出そうとした。

 一方、ハットマンは殺虫スプレーの残りを広範囲に噴射することで、今しがた展開されたのが全て実体のない映像だと見抜いた。どの個体も、スプレーの白い粉がすり抜けてしまったからだ。

 買ってきたばかりの瞬間接着剤を、ピーターが周辺の地面へばら撒く。意気揚々と高速移動して斬りかかってきたリョウマは、足の裏がアスファルトにくっついて離れなくなってしまった。

 

 

「何っ⁉」

 

 動揺するリョウマの前に、二人の戦士が並び立つ。今度ばかりは、身動きが取れないのは虫食いドラゴンフルーツ野郎の方だった。

 

「チョーカーが僕たちに気づかせてくれた。強い敵に対抗するために必要なのは、新しい武器や強化フォームじゃない。身の回りにあるものを工夫して使えば、どんな能力も攻略できる!」

「お前はおそらく頭が良いのだろうが、頭の柔らかさでは俺たちの方が上かもな。発想の転換が、戦況を変える。リボンズドライバーの性能や腕っぷしの強さだけにこだわらずに戦えば、お前など敵ではない!」

 

 ピーターがドライバーにスタンプを押印し、ハットマンも右足に全身の力を集中させる。

 

 

「……僕の全身全霊を賭けて、君を潰す!」

『リボンズ・フィニッシュ!』

「落としてやる。這い上がって来い!」

 

 同時にジャンプし、オーバーリボンズは右足にリボン状のエネルギーを纏わせ、ハットマンはありったけのパワーを込めてダブルライダーキックを放った。エネルギーがクワガタの顎のような形になり、リョウマの胸部装甲に炸裂する。

 

「この私が、市販の掃除機や殺虫スプレーに敗北するなんて……嘘だあああああっ⁉」

 

 リョウマはアーマーから火花を散らした後に仰向けに倒れ、派手に爆発した。変身が強制解除され、ドライバーと錠前も粉々になる。

 

「良い戦いぶりだ。それでこそ、僕の宿敵たるハットマンだよ」

 

 腕組みをして立つチョーカーが、満足げに笑っていた。もっとも彼の場合、常に笑っているような顔をしているのだけれども。

 

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