百合レンジャーvsBLレンジャー   作:クリスタルスカイ

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第21話 性癖だらけ大逆転

「皆、大丈夫か!」

「何がどうなってるんです?」

 

 BL1号・ケイイチロウと、BL2号・サクヤも現場に駆けつけた。

 

「端的に言うと、次元大魔王がムラムラで俺たちを動揺させようとしている」

「ナオヤ、何だその説明は! 全然分からんぞ⁉」

 

 仕方ないのでカイリとナオヤの二人がかりで説明したところ、ケイイチロウとサクヤは「ううむ」と唸ってしまった。ちなみに、ナオヤは百合にもBLにも興味はないため、大魔王の甘い言葉もどこ吹く風だった。

 

「要するに、俺たちに苦渋の決断を強いて、精神的ダメージを与える作戦というわけか。戦いを続ければ今のブームは完全に終わるぞ、と」

「けど、公式の内容を改変するなんて本来許されないですよ」

「ああ。俺たちは警察官だ。人々を苦しめる悪を放置するわけにはいかん。皆、変身して畳みかけ……おい、ツカサ。何をぼんやりしているんだ」

 

 らしくないぞ、とケイイチロウが彼女の肩を軽く叩いた。

 

「ごめん。戦わなくちゃいけないって、頭では分かってるんだけど」

 

 エックスチューナーを握る手が、小刻みに震えている。

 

 

「あたし、今のブームが起きる前は、自分のBL趣味を皆に明かすことが恥ずかしかった。趣味がバレて、周りから馬鹿にされたり、変な目で見られたりしたこともあったの。だから、百合やBLのブームが起きたとき、正直嬉しかった。昔に戻るのは嫌だって思う自分がいるのは事実だわ」

「――なら、いいじゃねえか」

 

 ニッとカイリがツカサに笑いかけた。それを見て、彼女はきょとんとする。

 

「えっ?」

「昔に戻りたくないって、自分で思ってるんだろ? そう思うこと自体が、ツカサ自身の中にBLへの情熱が宿っている証だよ」

「あたしの中に、情熱が……」

 

 胸に手を当てて独り言ちる。やがて覚悟が決まった様子で、ツカサは力強く頷いた。

 

「待たせてごめん。戦う準備はもうできてるわ!」

 

 

「馬鹿な。お前たちは、俺の与えた最後のチャンスをみすみす逃すというのか」

 

 次元大魔王が首を振る。

 

「理解できないな。なぜ、ブーム再燃の幸せを拒む?」

 

 対してツカサが、カイリが叫んだ。

 

「百合とBLを愛する心は、元々あたしたちの心の中にあったものよ。あんたたちに介入されなくたって、あたしたちの情熱は絶対に消えたりしない!」

「人間が自分では流行を作れないなんて、そんなことあるもんか。戦いが終わった後も、色んな性癖を持つ皆がキラキラ輝ける未来を作ってみせる。俺たち自身の力でな!」

「そうだよ、お姉ちゃんたち! 悪い奴らに負けないで!」

 

 背後から幼い声がして振り向くと、そこには何と、百合イエロー・ウミカに付き添われたコウ少年がいた。聞けば、近くの書店でおねショタの本を探していたところ爆発に巻き込まれ、ウミカに助けられたらしい。

 

「どんな理由があろうとも、自分の好きなものを他人に押しつけたり、強制したりしてはダメ――あの日、お姉ちゃんが言った通りだ。高次元生命体の誘いに乗ったら、卍帝国の洗脳のときの二の舞になっちゃうよ!」

 

 おねショタを好むコウ少年のように、百合・BLブームに乗れなかったマイノリティーもいる。結局のところ、作為的に特定の性癖を流行らせても、必ずどこかにしわ寄せが行くのだ。それは本当の幸せではない。真の幸せとは、各々が自分の好きなことをとことん追求できる状態ではないだろうか。

 

 

「ごちゃごちゃとうるさい奴らめ。脆弱な人間ごときに、未来を作る力があるだと? やれ、ムラムラ!」

 

 大魔王が次元妖怪をけしかけてきた。それを迎え撃つは、六人の戦士たちである。コウを下がらせ、ウミカも戦線に加わった。

 

「ごめんね、カイリ。トウマは今手が離せないって」

「そうか」

 

 百合ブルーは不在。だが、上等だ。

 

「今すぐには無理でも、いつか必ず実現してみせる。周りの目を気にせずに、皆が性癖をさらけ出せる未来を! 夢を描き、好きなことを信じてキラキラ輝くために、俺たちはきっと巡り合ったんだ。行くぞ、皆!」

「おう!」

 

 エックスチューナー、VSチューナー、BLコマンダーを構え、全員が一斉に変身した。

 

「怪盗チェンジ!」

「警察チェンジ!」

「『BLファイヤー』!」

 

 続いて、ダンスのような華麗なポーズを決めながら、各々が名乗りを上げていく。

 

「貫きシャイニング! 百合エックス!」

「手さばきインクレディブル! BLエックス!」

「導きシューティング! 百合イエロー!」

「ひらめきスパークリング! BL1号!」

「突撃ライトニング! BL2号!」

「……やはり、俺も名乗らなければならないか。この口上は百合ブルーに譲るつもりだったが、不在ならば仕方ない。切っ先アンストッパブル! BLファイヤー!」

 

 慣れていないながらも、ナオヤもちゃんと参加してくれる。そして最後に、全員で決め台詞をビシッと言い放った。

 

「「キラッと参上、カラッと解決。我ら、百合&BLレンジャー!!」」

 

 

「おのれ~。お前たちのような、名乗るときの台詞をアドリブで変える戦隊などにやられてたまるものか! ムラムラ、お前の第二の能力を見せてやれ!」

 

 魔王の指示を受けて、妖怪は鳴き声のようなものを発した。百合イエローへ飛びかかり、抱きついて離れようとしない。

 

「わ、わわーっ! やばやば、なんかキモいんだけど⁉」 

 

 イエローは必死に身をよじって逃れようとするが、ムラムラのゲル状の肉体はぴったり貼りついて離れない。次の瞬間、百合イエローの姿がパッと消えてしまった。

 

「な、何が起こった⁉」

 

 慌てふためくカイリたちを前に、大魔王が得意げに言う。

 

「これがムラムラの第二の力、吸収能力だ。敵に取りついて吸収し、その力を我が物とする。さらに、ターゲットを体内に吸収している状態でダメージを受けると、ムラムラの代わりにターゲットがダメージを喰らうことになるのだ!」

「えげつねえな……ていうか、第二の能力あったのかよ⁉」

 

 さすが強敵・次元大魔王の分身体というだけあって、洗脳以外の能力も備えていたようだ。だが、感心している場合ではない。大魔王の言ったことが本当なら、ムラムラに攻撃すると代わりに百合イエローがダメージを受けるのだから。なかなかチートな能力である。

 

 

「さあ行け、ムラムラ! 他の奴らも吸収してしまえ!」

 

 命令を聞くやいなや、ムラムラはBL2号に取りついた。抵抗する間もなく吸収し、2号の姿も消えてしまう。

 

「ハハハハハッ! どうだ、百合&BLレンジャー。手も足も出まい」

 

 勝ち誇る大魔王。残ったツカサたち四人は、小声で話し合った。

 

「ヤバいわね。仲間を吸収された状態じゃ、下手に攻撃できないわよ」

「勝機があるとすれば、奴が分身体であることだ。本体の大魔王にダメージを与えられれば、隙を作れるかもしれない」とナオヤ。

「それができれば苦労しないぜ」

 

 カイリがため息をつく。ただでさえ百合ブルーがいない状況なのに、百合イエローとBL2号まで吸収されてしまったのだ。大魔王と分身体を相手に、突破口を開くのは相当難しい。

 

 

「――待たせたな、皆!」

 

 四人へムラムラが襲いかかろうとしたとき、戦闘機の眩しいライトをバックにして百合ブルー・トウマが現れた。既に変身を完了した状態である。

 百合カイザーの合体パーツの一つである戦闘機を操縦し、ここまで飛ばしてきたようだ。その手には、何やらマジックハンドのような形状の武器を携えている。

 

「トウマ、ついに完成したのか⁉」

 

 事情を知っているらしいカイリが駆け寄った。

 

「いや、まだ試作段階だ。内部に溜め込んだエネルギーの放出機構が未完成だから、一度使用すれば自壊してしまう。つまり、実戦で使えるのはたった一回きりというわけだ」

 

 しかし、とトウマが語気を強める。

 

「皆からの通信で、大体の戦況は把握している。ウミカとサクヤが吸収されてしまった状況を打開するには、未完成でも今使うしかない。俺はそう判断した」

 

 そんなやり取りを交わしているうちに、百合ブルー目がけてムラムラが突進してきた。敵へ向き直り、ブルーはマジックハンド型の新装備を構えた。

 




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