「何でホーリー来部になれたのかとか色々よく分かんねえけど、とりあえずやったな!」
大喜びで駆け寄ってきたオメガ珈琲シルバーを、彼女は「待って、早川くん」と手で制した。
「まだ終わってないわ」
「え、でも、今さっき『もうあなたは私に勝てない』って……」
「ノリで言ってみただけよ。忘れて♡」
「お、おう」
可愛く頼まれたので、断れなかった。裕介も男である。
見れば、爆炎の中からシールがしっかりとした足取りで出てきた。変身解除こそされているものの、傷はほとんど負っていない。
「――本当はストッキングを履いた足で踏まれたいのに、もろにライダーキックを喰らったり。そういう小さな絶望の積み重ねが、人を大人にするのです」
「え、ちょっとキモいかも」
「何が言いたいのかさっぱり分かんねえよ⁉」
二人から散々な反応をされても、彼はめげずに続けた。
「言い忘れていたが、私の性癖は『足フェチ』でね。その能力は、『敵の足が自分に接触すると、自分の強さがその触れ方に応じて上がる』というものだ。今回は優しく踏まれるのではなく容赦なく蹴られてしまったから、上昇するのはせいぜい一段階といったところかな」
「一段階って、ずいぶん曖昧な表現ね。非科学的だわ。具体的にはどの程度強くなるの?」
「このくらいさ!」
シールの持つスタンプの、蜘蛛の意匠が一回り大きくなった。上部を押すと、「ジャイアントリボンダー!」と元気な認識音声が流れる。続いて、テッテレテレッテ、テレッテッテッテと変身待機音が。
『DEEP! DROP! DANGER! アメリカン・ファイター! インペリアルリボンズ!』
外見は通常のリボンズからそこまでかけ離れていないが、左右非対称だった肩アーマーが対称になったからか、全体的にガタイが良くなったように見える。背中にはマントが装備されており、頭部には大きなリボンも付いている。
「これが私の強化形態、『インペリアルリボンズ』。新たなリボンミックスを見せてやろう!」
『クロコダイル! コモドドラゴン! リボンミックス!』
右手に鰐の、左手の龍の顎を模した武装を追加したシール。コモドドラゴンの顎から火炎放射を行いつつ、クロコダイルの武装で打撃を見舞おうとしてくる。
「さあ、行くぞ。動き出している未来を、君たちには止められない。人類の未来は、虚無英雄会の手の中にある!」
「人の未来がお前の手の中にあるなら、俺が……俺たちが奪い返す!」
炎を珈琲サイブレードで防ぎ、裕介は「琲琲刀」で鰐の顎による連打を迎え撃った。
同時にホーリー来部がカウンターを狙ったが、あまり効いていない。背中に光線が当たっても怯んだ様子はなく、インペリアルリボンズはオメガ珈琲シルバーとの交戦を続けた。おそらく、ホーリー来部の原典が相性抜群なのは通常のリボンズだけで、強化フォームには通用しないのであろう。
再びシール優勢かと思われたとき、異変が起きた。彼の腰に巻かれたドライバーの内部から、赤いスパークが迸ったのである。
「……そうか。このドライバー本来の装着者、ピーター・バーガーの性癖は『緊縛』。彼のドライバーをコピーしたということは、それが秘めている性癖をもコピーしているということ。私の性癖『足フェチ』とは、噛み合わなくて当然だ」
要するに、ドライバーが秘めている性癖が使用者のそれと異なるためにエラーが発生しているようだ。インペリアルリボンズの動きが、明らかに鈍くなる。
「何だよ、あまり使いこなせてないじゃねえか。不器用な奴だな!」
「不器用⁉ そんなことはありません、やらせて下さい! 私は、絹ごし豆腐でも木綿豆腐でも余裕で箸で掴める男なのだからな!」
なぜか不器用という単語に過剰反応したシールは、ドライバーをガチャガチャ操作し始めた。何とかエラーを解消できないか、スタンプを押印したりボタンを押したりして試している。
「おっと、危ない危ない。私がドライバーを直すまでの間、君たちの自由を奪っておかねばな」
思い出したように顔を上げ、裕介と美明日を一睨みする。
「まずは必殺技を封印……」
「――させないわよ?」
闇のオーラが、インペリアルリボンズを足元から徐々に包み込んでいく。そのオーラを伸ばしている張本人、超次元ライダーネトルは、オメガ珈琲本店の建物の陰からひょこっと姿を現した。悪戯っぽく微笑み、シーツを見つめる。
「なぜ美明日が、ホーリー来部に変身できたと思う? 私と一時的に分離したからよ」
「な、何っ⁉」
ネトルの精神干渉能力を受けたシールは、体の自由を奪われている。かろうじてまだ自分の意志で動かせる口だけで、彼はおののいた。
「彼女は頭が良いけど、自分が使う原典を事細かに知っているわけではないわ。ホーリー来部になったのは、原典同士の相性によってリボンズに勝つためじゃない。それは彼女にとっても予期せぬことだった。……真の狙いは、私という伏兵を潜ませ、いつ封印能力を使われても精神干渉で止められるようにするためよ。あなたの意表を突いてね!」
やがて、ネトルはシールの肉体の制御を完全に奪ったようだった。だらりと手足を垂らした彼は、虚ろな目をしている。
ただでさえドライバーが不調な上に、体のコントロールも失ったインペリアルリボンズは隙だらけである。ネトルが「今よ!」と叫び、裕介と美明日に攻撃を促した。
もちろんネトルティ来部の状態でも精神干渉能力は使えるけれど、相手の不意を突き、確実に封印を止めるにはこれしかなかった。大教授美明日のテクニカルな作戦を大成功させるべく、ネトルは言う。
「こんな小細工、通用するのは一度だけ。さっさと倒してしまいなさい」
「言われなくても分かってるわよ!」
「一気に……いや、一緒に行くぜ!」
シールが足フェチなのが判明した以上、キック技を浴びせるのは得策ではない。裕介は珈琲サイブレードを二刀に分離し、強化技の「オメガ十字衝」を。美明日はホーリー来部の形態のまま、先刻通常のリボンズに命中させたのと同じ、ビーム技を放った。
美明日が「BANG・解」するにはネトルと融合していることが必要なため、この状態では使うのは無理だ。けれども、十字衝とジャスティスフィニッシュだけでも破壊力は十分である。
今回、ご迷惑をおかけした作品
・仮面ライダーアギト
・リバイスForward「仮面ライダーライブ&エビル&デモンズ」