百合レンジャーvsBLレンジャー   作:クリスタルスカイ

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44 ごはんは笑顔ですわ!

「『女王・一斉忍烈斬』!」

 

 色とりどりに輝く鞭を、ゴークイーンズは連続で叩きつけた。

 しかし、赤い蜘蛛の戦士にダメージを受けた様子はない。両手で鞭を掴んで受け止め、ニヤニヤ笑っている。

 

「こんなものかァ? 所詮こんなもんだよなァ!」

「全然効いてませんわ~⁉」

「前にもこんなことあったような気がしますわ~!」

 

 動揺している三人に、男は回し蹴りを喰らわせる。女が相手だろうが容赦ない。怯んだ隙にベルト横のレバーを回し、必殺技を発動した。

 

 

「お前たちのことは調査済みだ、ゴークイーンズ。複数の原典の要素を少しずつ持っているにもかかわらず、そのことごとくを使いこなせていない馬鹿野郎だってなァ。SMプレイ性癖の能力も、『鞭を召喚して暴れる』だけだから普通に弱い。――残念だったな。俺の方が上だ!」

『Ready Go!』『キルバス・リボンダーフィニッシュ!』

 

 両腕から伸ばした長いリボンで、女王たちを絡めとり、振り回す。されるがままに空中を舞う三人に、破壊エネルギーを帯びたオーバーヘッドキックを叩き込んだ。

 

「どわあああ~⁉」

 

 無様に地面に落下した女王たちを横目に、男はゲラゲラ笑っている。

 

「ヒャーッハッハッハ! 弱い。弱すぎるぜェ! 一方的すぎてつまらないなァ!」

 

 

 ゴークイーンズはというと、ひそひそ話し合っていた。「恥ずかしながら、お腹が空いてしまいましたわ~!」とイエロー・クイーンが告白したので、どうすべきか考え込んでいたのである。

 イエローは常人離れしたパワーを発揮できる一方で、定期的にカロリーを摂取しないとエネルギー切れでダウンしてしまう。名古屋からの道中ではお菓子を食べる暇がなく、そのまま戦闘に突入してしまったため、彼女は限界に近づいていた。

 

「私も正直しんどいので、一度クールダウンすべきだと思いますわ~!」とブルー。彼女にもまた、戦闘が長引くと体温が上昇して熱暴走を起こすというウィークポイントがある。

 

「では、ご飯休憩を挟みますわ~!」とレッドが提案し、三人はすたこらさっさと逃げ出した。途中、何度かカラスや鳩に遭遇したときは、ブルーとイエローが慌てて彼女の目を手で覆った。レッド・クイーンは、鳥を見ると体がフリーズしてしまうのである。

 

 

「待て、逃がさんぞ!」

 

 赤い蜘蛛の戦士が、ゴークイーンズを追いかける。

 お互いにバイクなどの専用マシンを持たないため、いささかシュールな絵面になってしまっていた。

 

「何だ、あいつら。フォローを入れようと思ったら敵前逃亡したぞ⁉」

 

 リボンダークモノスの短剣をVSチューナーの銃身で受け止めながら、BL1号・ケイイチロウが困惑していたことを女王たちは知らない。

 

 

 近くのショッピングモールのフードコートに駆け込み、レッドは天丼、ブルーはハンバーガー、イエローは豚骨ラーメンを注文した。席に座り、注文した料理が届くと速攻で食べ始める。何しろ、敵がいつ追いついてくるか分からないのだ。

 というわけでかなり急いで食べたのだが、それでもきちんと味わうことは忘れなかった。「デリシャスマイルですわ~!」などと、レッド・クイーンが意味不明の呟きを発したりしている。

 

 天丼は天ぷらとタレが絶妙に絡み合って美味しいし、ハンバーガーは肉汁たっぷりでジューシー。野菜もシャキシャキしている。ラーメンも、以前女王たちが苦戦したマシマシのものとは異なり、常識的な量で食べやすい。濃厚なスープが病みつきになりそうだ。

 

 

「……おのれ、どこに行ったァ⁉ さては奴ら、『人を隠すなら人の中』作戦というわけだなァ!」

 

 やっと男が追いついてきた。女王たちはただご飯を食べて休憩したかっただけなのだが、蜘蛛野郎はこれも作戦の内なのだろうと早合点したらしい。変な格好の人たちが四人も揃ったので、次第にフードコート全体がざわつく。

 

「だったら、人がいなくなれば問題ない。ゴークイーンズもろとも殺してやるゥ!」

 

 背中から伸ばしたリボンを蜘蛛の脚のような形に固め、男はめちゃくちゃに振り回した。椅子やテーブルが薙ぎ倒され、人々は悲鳴を上げて逃げ惑う。

 さすがに看過できず、女王たち三人は手を合わせて「ごちそうさまでした」と呟いてから立ち上がった。

 

 

「やめなさいですわ~!」

「あなたの狙いは私たちのはず。関係ない方々を巻き込むのは、良くありませんわ~!」

「フン。知ったことかァ!」

 

 彼女らに気づき、男が攻撃の手を止めて振り向く。

 

「このドライバーには緊縛性癖のパワーが秘められていて、基本的に誰でも使用できる。だがそれとは別に、俺には『破滅願望』という性癖がある。自分が絶望的な状況に置かれ、破滅のリスクに晒されることに興奮する性癖だァ!」

 

 他殺願望の次は破滅願望とは、世の中色んな人がいるものだ――他人に迷惑をかけない限りは、どんな性癖を持っていたって良いんだけどね! 度が過ぎてるよね!

 

 

「俺の夢は、この世界を終わらせて自分も死ぬことだ。宇宙と心中して無に帰るだなんて、最高じゃねえかァ!」

「最悪ですわ~!!」

 

 レッドが憤慨する。

 

「フードコートは、皆が食事を楽しむ場所。ご飯は笑顔ですわ~!」

「あなたが暴れたせいで食事の楽しさは消え、フードコートは悲しみと恐怖で満ちている。絶対に許しませんわ~!」

 

 ブルー、イエローも続いたそのとき、三人の体が光に包まれた。どこからか出現したおむすびとサンドイッチとラーメンが、それぞれレッド、ブルー、イエローの手に収まる。

 食事を愛する三人の心が奇跡を起こし、新たな原典の力をゴークイーンズに宿したのだった。

 

 

「な、何だ、それはァ!」

 

 相変わらずクセの強い喋り方で動揺を露わにする男の前に、三人は凛然と並び立った。

 

「……よく分かりませんが、行きますわよ! 『ゴークイーンズ・デリシャスタンバイ』! 『パーティ・ゴー』!」

 

 謎のおむすびとサンドイッチとラーメンを美味しそうに食すと、女王たちのSMプレイ風衣装が、リボンやフリルがたくさんついたドレスに変わった。色も黒から赤、青、黄と、彼女らの私服並みに鮮やかである。イエローはチャイナドレスに近い形状だった。 

 さらにサングラスも外し、素顔を晒す。すっかりイメチェンした三人は、ポーズを決めて名乗った。

 

 

「熱々ご飯で、みなぎるパワー! レッドクイーン・プレシャス! 美味しい笑顔で、満たしてあげますわ~!」

 

 拳を握り固めたのちにパッと腕を開き、レッドが叫ぶ。

 

「ふわふわサンドで、心にスパイス! ブルークイーン・スパイシー! 分け合う美味しさ、焼きつけますわ~!」

 

 両手を体の正面でパンと合わせてから離し、ブルーも続く。

 

「きらめくヌードル・エモーション! イエロークイーン・ヤムヤム! 美味しいの一人占め、許しませんわ~!」

 

 イエローが片手を伸ばした首をかしげるような独特なポーズを取ったのを最後に、三人は声を揃えて告げた。

 

 

「「「今の私たちは……名付けて『デリシャスパーティ・ゴークイーンズ』ですわ!!!」」」

 




今回、ご迷惑をおかけした作品
・「デリシャスパーティ♡プリキュア」
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