「ハッハッハ! 人間ども、悲鳴を上げろ! って、吾輩も人間だったか! ハッハッハ!」
頭部と背中に大きな歯車を備え、全身が機械化された男が笑い声を上げる。男は恰幅が良く、歯車の付いた杖からビームを発射して渋谷の街を破壊していた。
「吾輩は、虚無英雄会の役員が一人、皇帝『ワラカスフンド』。リョウマもノン・プリシャスもやられてしまったから、変身して仕方なく出てきてやったぞ!」
杖の先端にはマジックハンドのようなものが付いていた。それを伸ばし、逃げ惑う人々のうち何人かを「こちょこちょ、あ、それ、こちょこちょ!」とくすぐっている。随分楽しそうだが、街を火の海にしながらくすぐっているから狂気を感じる。
「マスターインセクトシステムだとか、コピー能力だとか、そんな小細工をして戦うから敗北するのだ。吾輩は奴らのような失敗はしない。シンプルにパワーで敵を潰してやる! ハッハッハ!」
「潰されるのはお前の方だぜ」
「ムッ! お、お前たちは⁉」
陽の光が何かに遮られたと思ったら、空を舞う戦闘機から次々にヒーローたちが降下してくるではないか。ワラカスフンドは驚き、攻撃とくすぐりをやめた。
空中で変身し、ほとんど音もなく着地。名古屋組とヒョウガも合流済みで勢揃いした百合・BLレンジャーは、名乗りをするかどうかで話し合いを始めた。
「ゴークイーンズまで加入したことだし、全員で名乗るとかなり尺を取るんじゃないか? 今回は省略しても大丈夫だろう」とケイイチロウ。
「あの人たち、やたら名乗り長いですもんね」と賛同するサクヤ。
「仮に全員分やるとしても、特に口上がないダレンが浮いてしまう」
「微妙な空気になるくらいなら、やらない方がいいかも?」
トウマとウミカも指摘したので、今回はカットすることになった。いきなり武器を取り出した戦士たちを見て、ワラカスフンドは叫んだ。
「馬鹿者! せっかく吾輩が『お前たちは⁉』と言ったのだから、それにかっこいい名乗りで応える演出があるべきだろう。ヒーローのくせに、視聴者の期待にも応えられないのか? このクズどもめ!」
「街を破壊してるあんたにだけは、クズとか言われたくないわね」
視聴者だとか意味の分からないことを言い出した相手を、ツカサが一喝。
「ワラカスフンドとか言ったわね。悪いけど、さっさと倒させてもらうわよ!」
「フン、そうは行くか!」
機械怪人が杖を掲げると、地面が割れて二体のメカモンスターが飛び出してきた。一体は体の前面に大きなドリルを装備し、もう一体は身長五十メートルほどもある超巨大なボディーだった。円盤状の胴体から、触手や腕が伸びている。
「吾輩はお前たちの戦力と性癖を研究し、また、心を持たないマシンに人工的に性癖を植え付ける方法をも確立した。こいつらはBL――別の言い方をすれば『薔薇』の性癖を持った、『薔薇ドリル』と『薔薇ソーサー』。吾輩の原典の力があれば、マシンを無限に量産することも可能なのだ! ハッハッハ!」
薔薇ソーサーが大地を踏み鳴らし、触手を振るってビルを破壊する。それを見たヒョウガは「先輩方、あいつは俺が!」と駆け出した。
「――『騎獣合身』!」
超次元界から召喚した牛型モンスターの光を浴びて、零騎士自身も巨大化。二体が一つになって、合身獣士ゼロタウラスとなった。ツインゼロソードを構え、薔薇ソーサーへ斬りかかる。
「ドリルの方は俺に任せてくれ」
珈琲サイブレードを肩に担ぎ、オメガ珈琲シルバーは「『BANG・解』」と唱えた。刃が黒く変わる。
彼と並び立ったネトルティ来部が、ネトルの力で薔薇ドリルに精神干渉を試みる。しかし、機械である彼には効かないらしく、闇のオーラを受けてもピンピンしていた。
「絡め手は通用しないみたいね」
「ああ。向こうが力でゴリ押してくるなら、こっちもゴリ押してやる」
裕介、美明日ともに「BANG・解」し、剣を握る。ドリルを回転させて勢いよく突っ込んできた機械怪人に一閃を浴びせた。
「『オメガ天衝』!」
『ネトルティ・パーフェクトパーフェクトフィニッシュ!』
同時必殺技を受けた薔薇ドリルは、あえなく爆散した。
杖から光線を放って攻撃してくるワラカスフンド。ビームの雨をかいくぐり、ツカサたちはVS・スワットモードを装着した。大型マシンガンから光弾を連射し、敵に対抗する。
「『レッド・500キロカロリーパンチ』!」
『リボンズ・フィニッシュ!』
『エル・サルバトーレ・ダレンバースト!』
怯んだ隙に、レッドクイーン・プレシャスが腕に「500」の数字を、リボンズがリボン状のエネルギーを、ダレンマジェスティが二号戦士の力を腕に結集させてトリプルパンチを叩き込んだ。
ワラカスフンドは大きく後退したが、杖を地面に突いて踏みとどまった。
「なかなかやるではないか。では、吾輩の性癖のパワーをお見せするとしようか!」
杖の先端から伸びたマジックハンドが、ブルークイーン・スパイシーとイエロークイーン・ヤムヤムの脇腹をくすぐる。たまらず、二人は笑い出してしまった。
「吾輩の性癖は『くすぐりフェチ』。相手をくすぐって強制的に笑わせ、肉体的・精神的苦痛を与えることの好む性癖だ。ちなみにくすぐられるのが好きな人もいるが、吾輩はどちらかというとくすぐる方が好きだ!」
「きゃはははっ! い、一体、どんな能力なのですわ~?」
笑いながらブルークイーン・スパイシーが尋ねる。どうも緊張感に欠けるシーンだ。
「良いだろう、冥途の土産に教えてやる。吾輩の『くすぐりフェチ』、その能力は……」
「ぎゃははは! そ、その能力は何ですの~?」
「第一に、マジックハンドを召喚して敵を自在にくすぐる!」
「きゃーっははははは! そ、それで?」
「第二に……」
「第二に?」
「相手をくすぐって笑わせると、楽しい!」
「ぎゃはぎゃは! ……え? それだけですの??」