百合レンジャーvsBLレンジャー   作:クリスタルスカイ

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50 燃えろ!ダレンのシューティングスター

「コホン。で、話を戻すけど、ストレージに限りのある普通の人間が、どうやってあれだけ自由に原典を扱ってるのかが分からなかったのよね。今、それが判明したわ」

 

 カイリの脳みそにはどれだけストレージがあるのか分からないが、お菊は咳払いして告げた。

 

「虚無英雄会の幹部クラスは、人類への深い絶望によって虚無を得ている。だから、原典の使用可能量が常人より多いのよ。構成員たちも、皆多かれ少なかれ人間という生き物に否定的な考え方をしているに違いないわ」

「……下らないな。その程度で虚無を得たか」

 

 鼻を鳴らし、ダレンが一歩前に出た。

 

 

「私はルーカスのせいで、両親と妻と友人を失った。それまでに私の人生を形作り、支えてきたもの全てを奪われた。貴様らが味わった絶望など、私の見た地獄に比べればどうと言うことはない!」

「ルーカスという個人を恨んでいる君には、人類全体を憎む私たちの気持ちは理解できないだろう。ほら、早く片付けてしまいなさい」

 

 グリイザがシールに合図し、変身を促す。「カブト!」とスタンプから音声を鳴らし、仮面の男はベルトに押印した。

 

『制限! 封印! 縦横無尽! 超次元ライダー・シール!』

 

 

 バイオリン調の怪しい待機音が流れたのちに、変身。軍服を思わせるデザインのアーマーに、カブトムシが横から抱きついたような意匠がある。口元にはガスマスクめいた装備があった。

 

「外部顧問から噂は聞いている。無貌支持派に所属していたダレンだな? まずは君から捻り潰してあげよう」

「その台詞、そっくりそのままお返しする」

 

 シールとダレンの拳がぶつかり合い、火花を散らした。

 

 

 ダレンマジェスティとシールは、何度かパンチの応酬を重ねた。威力はほぼ互角。やがてダレンの方からバックステップで距離を取り、ベルトを別の物に換装した。

 

「貴様が相手では、単調に攻撃していると封印能力を使われてしまうだろうからな。少々トリッキーに行かせてもらう」

 

 中央にプラネタリウムの投影機のような球体が付いた銀のドライバーを腰に巻き、上部のトリガーをスライドさせる。

 

「……M-BUS、変身認証だ」

『Darren! Ready?』

 

 

 ディスコ風の待機音が流れ始めたのち、ダレンがベルト横のレバーを倒す。すると、遥か高みにある人工衛星から青い光が降り注ぎ、彼の体は球状のエネルギーに包まれた。そのまま隕石のように不規則な軌道を描いて浮遊、シールに体当たりする。

 

「うわっ⁉ な、何だ?」

 

 意表を突かれ、カブトムシの戦士は仰向けに倒れた。上体を起こした彼が見たのは、エネルギー球の中から現れた左右非対称の超次元ライダーであった。

 

「――超次元ライダー・ダレン。貴様の運命は、私が決める」

 

 黒を基調としたラメ入りのスーツに、流星を模した青い装甲と頭部。右腕に手甲型の武器を付けている以外に、これといった装備はない。

 

 

「……何がトリッキーだ。バリバリの近接型ではないか!」

 

 体勢を整えたシールが、再び殴りかかってくる。対するダレンは、手甲型デバイスのレバーを素早く操作した。

 

「それはどうだろうな」

『Saturn! Ready?』『OK! Saturn!』

 

 ダレンの右手に、土星型のエネルギーリングが生成される。それを高速で撃ち出し、シールの胸部にヒットさせた。

 

 

「ん? 今、セ○サターンって……」

「言ってないわよ!! ハードオンのレトロゲームコーナーじゃないんだからね⁉」

 

 いまいち売れ行きが良くなかったマイナーゲーム機の話を約二名がしている傍ら、ダレンは次々に技を決めていく。

 

「さあ、見せてくれ。貴様が当たりか、外れか!」

『Mars! Ready?』『OK! Mars!』

 

 高温のエネルギー球を生成した右手でジャブを浴びせ、シールにダメージを与える。さらに「Jupiter! Ready?」「OK! Jupiter!」と、木星型の大きなエネルギー球を振り回して腹部に一撃を叩き込んだ。

 

 

「ぐあっ……」

「話によれば、貴様の封印能力はあくまで『段階的』なものらしい。つまり、一度に敵の力全てを封じることはできず、近距離攻撃や遠距離攻撃といった攻撃の種類を指定しながらじわじわと制限をかける」

 

 衝撃で、アーマーに巻かれた「KEEP OUT」の黄色いテープがところどころ解けているシールに、ダレンは言い放った。

 

「ゆえに貴様は、さっき私が使った惑星の名を冠した技のような、種類を指定しづらい攻撃に弱い。近距離なのか遠距離なのか初見で判断するのが不可能な上に、たとえ一種類を封印したとしてもすぐに別種の攻撃が来るからな」

 

 

 ルーカスにはあと一歩及ばなかったものの、ダレンは腐っても元無貌支持派の第二位。歴代二号戦士の力をすべて使えるだけあって、手札の多さは圧倒的である。

 

「どうした。さあ、封印してみろ」

「露骨な挑発だね。真面目そうだと思っていたけれど、君は意外と嫌な奴のようだ」

 

 シールが首を振る。

 

「……気に食わないよ」

『シーリング・インパクト!』

 

 彼は挑発に乗らないつもりらしい。ベルトにスタンプを押印し、必殺技で一気に決着をつけようとしてきた。

 

『Limit Break! OK!』

 

 ダレンも手甲にスイッチのようなものをセットし、必殺技を発動した。両者ともに超高速の連続パンチを繰り出し、一歩も引かない。

 

 

「種類指定が難しいと悟って、封印を諦めたか。だが、強化フォームへの変身を封印しなかったのは失策だな。私の運命は、嵐を呼ぶぞ!」

『Darren Storm!』『Darren・on! Ready?』

 

 風車型のスイッチを取り出し、ベルトに装填するダレン。青と黄色のアーマーに変わり、長い棒状の新武器・ダレンストームシャフトを構えた。

 

「……おのれ、超次元生命体め。我々の邪魔をするな!」

 

 天を仰ぎ、苛立ったようにシールが吠える。

 

「人類に存在価値はない。だから滅ぼす。そのためならば、私の命さえも惜しくはない!」

「シール。貴様は、人類を滅ぼすためなら命は惜しくないと言った。だが、私は違う!」

 

 風車型スイッチをシャフトにセットし、ダレンも叫んだ。

 

 

「ルーカスによって全てを奪われ、復讐に囚われていた私に、ここにいる百合・BLレンジャーの皆は手を差し伸べてくれた。私を許し、罪を償う機会を与えてくれた。私は百合・BLレンジャーと……この人間界でできた、新しい友と一緒に生き抜く。自ら滅びを求める男に、負けるわけがない! 『ダレンストームパニッシャー』!」

 

 スイッチをシャフトから分離すると同時に、独楽のように回転させて高速射出。

 

「ほざくな!」

『シーリング・ノヴァ!』

 

 シールも、自身の最強の技で応じる。カブトムシ型の破壊エネルギーを纏わせた足で、後ろ回し蹴りを発動。飛来したスイッチを弾き返した。

 

「……この技は、相手のエネルギーを吸収しながら威力を増す。悪いが、倍にして返させてもらおう」

 

 

 しかし、ダレンの方が一枚上手だった。返されたスイッチをシャフトへ再装填し、破壊力を倍増させた状態で発射したのである。さすがのシールもこれは防ぎきれず、胸部に大ダメージを受けて吹き飛ばされてしまった。

 

「とどめだ。私の運命は――私が決める!」

 

 三度手元に戻ってきたスイッチをベルトへセットし、ダレンはキック技を発動した。青と黄色のエネルギーを帯びた跳び蹴りを、シールのアーマーへ炸裂させる。

 爆発に呑み込まれたカブトムシの戦士の最期を、変身解除したダレンは確かめようともしなかった。

 




※次回の更新は1週間後の予定です。
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