百合レンジャーvsBLレンジャー   作:クリスタルスカイ

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55 総力戦の予感!最終章へ!?

「おのれ。よくも吾輩の可愛い怪人たちを!」

 

 伸ばした杖に寄りかかり、どうにか立ち上がると、怪人たちの王はなおも果敢に挑んできた。だが、もうその戦法は通用しない。ゾーンに入ったヒョウガは、難なく打撃を剣で止めた。

 

「男はクールであるべき。沸騰したお湯は蒸発するだけだ」

「黙れ! 男は燃えるもの。火薬に火を点けなければ、花火は上がらない!」

 

 ワラカスフンドは唸り、一旦距離を取ってから渾身の突きを叩き込もうとした。対する零騎士は、「零のたてがみ」で手から火炎を放って牽制。敵の接近を許さない。

 

 

「『零の撃弾』!」

 

 再度ショットガン形態にしたゼロライアットから、稲妻を帯びた光弾を発射。怯んだ隙に距離を詰め、「零の衝撃」でジャンプしてからの袈裟懸け斬りを浴びせる。杖もろとも、敵の体を切り裂いた。

 杖を折られ、金属質な皮膚からスパークが上がり、ワラカスフンドがふらついた。とどめにヒョウガは大きく跳び、空中で一回転してから、黒い雷を纏った一閃を見舞った。

 

「……終わりだ。『零の一撃』!」

「ぐあああああ~っ!」

 

 絶叫し、崩れ落ちるワラカスフンド。直後に爆発に包まれ、彼は人間の姿に戻った。変身後の怪人態と同じく恰幅が良い体に、スーツを着込んでいる。会社の中間管理職にいそうなタイプだ。

 

 

「吾輩としたことが、またしても会長の期待に応えられないとは。無念……」

 

 額に玉のような汗を浮かべ、悔しそうにアスファルトを拳で叩いている。もはや戦う意志はないようだった。 

 

「お前、人間には英知の価値が分からないと言ったな」

 

 ヒョウガも変身を解き、男の側に屈み込む。既にゾーン突入状態ではなく、いつもの彼だった。

 

「だけど俺は、大学での勉強が好きだ。今の自分の生活を支えてくれている科学技術の数々も、すごいことだと思っている。音楽も聴くし、小説や漫画も時々読む」

「な、何だと……⁉ 今まで吾輩の周りに、そのような者はいなかったぞ?」

 

 男は心から驚いているようだった。その様子から、色々と察するものがある。

 

 

「ワラカスフンド。お前は人を憎み、人を疎むあまりに、人の心が分からなくなってしまったんだろう。だから視野が狭くなって、英雄会の言葉につられて道を外れてしまったんだ。頭を冷やして、もう一度考え直せ」

 

 先輩方から一つ借りていた手錠を、ワラカスフンドの両手にかける。それから男を促して立たせ、ヒョウガは連行していった。

 

「いつか、きっと出会えるさ。お前と同じように、人の生み出した文化や科学を愛している人に」

 

 

 零騎士がワラカスフンドを無力化したことで、彼が生み出した怪人軍団も消滅した。もっとも、その大多数は既にツカサたちの手で撃破されていたのだけれども。

 

「こいつら、俺たちが経営しているレストランの方角にも向かっていたな」

 

 百合ブルー・トウマが顔をしかめる。

 

「ワラカスフンドには俺も一撃加えたかったが……まあ、良いだろう。手柄は後輩に譲ろう」

 

 しかし零騎士、強すぎである。今までのところ、リョウマ、ノン・プリシャス、ワラカスフンドと虚無英雄会の役員三名を最終的に倒したのはすべて彼だ。

 リョウマのときはゴークイーンズの援護なしでは厳しかったし、ノン・プリシャスとワラカスフンドのときはカイリらの助けで強化技が使える状態だった。機械怪人の相手もほとんど先輩たちに任せていた。が、戦績だけを見れば異常に強い。

 

 

「やったじゃない!」

 

 頼もしい後輩とハイタッチし、ツカサが微笑む。一方のカイリは、連行途中のワラカスフンドへ何やら熱く語りかけていた。

 

「文化を蔑ろにする奴ばかりだって? とんでもない。いいか? ハードオンにはな、大半の人間はとっくの昔に買わなくなったような高級オーディオ機器の愛好家がたくさんやって来るんだぜ! 自販機くらいのサイズのスピーカーとか、超重いパワーアンプとかな。お前も一度中古屋巡りでもしてみれば、同志に巡り合えること間違いなし! まあぶっちゃけ俺は耳が全然肥えてないから、良いアンプで音出ししても普通のアンプとの違いがあんまり分からねえんだけどな! はっはっはっは痛い痛い痛い⁉」

「あーもうっ、あんたはいつまでハードオンネタを引っぱる気なのよ! 虚無英雄会を倒した後も続けたりしないでしょうね⁉」

 

 

 肥えていない耳をツカサにぐいと引っぱられ、台詞後半からカイリは悲鳴を上げていた。

 まあ、彼女の気持ちも分からなくはない。カイリとの恋愛、ムーヴォを加えての新生活とラブコメ(?)っぽい展開が続き、その次が中古屋巡りと来たら誰だってがっくりするだろう。ムーヴォも連れて行って楽しめる場所として中古屋が選ばれたのが、一連の流れの始まりだった。

 

 

 何だかんだで、和気あいあいと勝利を喜んでいる百合・BLレンジャー。東京都郊外の監視カメラのうち何台かをジャックし、グリイザは彼らの様子を自室で眺めていた。

 

「やれやれ、ワラカスフンドも捕まってしまったか。彼は人一倍やる気があったが、いかんせん人類への絶望が浅い。文明への愛が歪んだ結果、絶望に転じたに過ぎない。あれでは、原典や性癖の強さを真に引き出すことは難しかったろうね」

 

 要は、虚無の量が他のメンバーよりやや控えめだったのである。

 片眼鏡を指で軽く押し上げ、英雄会会長は思案気な顔つきになった。

 

 

「これで残る役員はシールのみ。彼と私、外部顧問の三名で上手く立ち回って行かなければね。……さて、次はどうしようか?」

 

 口元に、薄っすらと嗜虐的な笑みが浮かんだ。

 

「今以上に戦力を削られる前に、総力戦を仕掛ける手もあるね」

 




※次回の更新は1週間後の予定です。
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