「これでも喰らえ、百合&BLレンジャー!」
巨大化した次元大魔王が杖を振るい、破壊光線を放った。赤いビームを受けた百合カイザーとBLカイザーは、全身の装甲から火花を散らせて倒れてしまった。
「終わりだ!」
杖を突き立て、とどめを刺そうとする大魔王。だがしかし、父の暴挙を許す息子ではなかった。
「させるか。『マックスBLブリザード』!」
恐竜型ロボ・BLレックスロボへ、ナオヤが音声コマンドを飛ばす。すると、ロボ両肩に装備されたバズーカから、低温のレーザーが照射された。
「何っ⁉」
大魔王は咄嗟に腕で体を庇った。レーザーによって肉体が凍てついたのも束の間、みなぎる力で氷の拘束を解いて復活する。
「残念だったな、トランガ。そんな攻撃では、この俺を止めることなど……」
高らかに笑い、大魔王はBLファイヤーを見下ろそうとした。けれども、できなかった。みるみる体が縮み、普通の人間と同じくらいのサイズになってしまったからである。
「ば、馬鹿な。一体、俺の体に何をした!」
「このロボットの必殺技・『マックスBLブリザード』には、ターゲットを圧縮冷凍する効果がそなわっている。『冷凍』の効果を無力化することはできても、『圧縮』の方は防げなかったようだな、父さん」
切り札は一枚だけじゃないんだぜと、ナオヤは仮面の下で不敵に笑った。
百合レンジャーが「イマジン・ブレイクハンド」の開発を進めていたように、BLレンジャーにも秘密兵器がある。敵の巨大化を封じることのできるBLレックスロボが、その一つなのだ。
動揺を隠せていない大魔王目がけて、レックスロボがズシン、ズシンと足音を響かせて接近していく。
「どうだ。さすがの父さんでも、そのサイズでは巨大ロボに対抗できないだろう!」
「おのれ、トランガ。巨大化していない敵をロボットで踏みつぶそうとするなど、ヒーローの風上にも置けんわ! ちゃんと『お約束』を守れ、お約束を!」
ぶつくさ言いながら、大魔王は痛そうにお腹を押さえていた。
ナオヤたちには知るよしもなかったが、実は彼は、次元妖怪ムラムラを連れて出陣する前、景気づけにおやつを食べた。そのとき食した芋羊羹の賞味期限が切れており、さらには低温レーザーでお腹が冷えてしまったことによって、大魔王の胃腸は過去最悪レベルでひどい状態になっていたのである。
「今日はどうも体調が優れんし、一旦退いてやる。次こそは必ず倒してやるから、覚えておけ!」
捨て台詞を吐いて、次元大魔王が姿を消した。
「……やったぞ」
戦いが終わり、荒廃した街の片隅で、ナオヤは変身を解除して独り言ちていた。達成感に打ち震え、握り拳を突き上げる。
「逃げられこそしたが、俺はついに父さんに一矢報いたんだ!」
「おかえりなさいませ、マジェスティ」
大魔王が帰ってきたのに気がついて、高次元生命体エンダーはうやうやしく一礼した。
「あ、ああ」
ボスはぎこちなく笑うと、「ちょっとトイレ」と言い残し、どこかへ走って行ってしまった。
十分ほど経っただろうか。ようやくお手洗いから戻ってきた大魔王は、顔に冷や汗をかいていた。
「戦隊どもめ。ムラムラを倒しただけでなく、この俺のお腹を壊させるとは。今日受けた屈辱、いずれ倍にして返してやる!」
「ですがマジェスティ、そのお身体で今すぐ出陣するのは無理かと」
そう進言したエンダーへ、魔王は杖を突きつけた。
「うむ。だから、お前が代わりにやるのだ」
「はい?」
エンダーは目をぱちくりさせた。
「恐れながら、奴らは私の差し向けたゴークイーンズを二度も撃退しています。強敵です。もう少し、作戦を練る時間をいただけないと……」
「ならば、俺が力を授けてやろう。お前の意見は求めん。大地に眠る悪霊たちよ、エンダーに――ハアッ! 力を与えよ!」
言うが早いか、大魔王はエンダーへ杖を投げつけた。その先端が触れた瞬間、眩しい光が溢れ、三種類の動物の形をとったエネルギーがエンダーの体内へ吸収されていった。三体の動物と一人の心が一つになるとき、強大なる百獣の王が降臨する!
「おお。何と素晴らしい力でしょうか」
ローブを脱ぎ捨て、ゴーグルも外したエンダー。彼の手には、懐中電灯型の変身アイテムが握られていた。
「マジェスティの洗礼を受けて、昨日までの弱い私は死んだ。今日から私は……」
以前よりも野性味の増した表情で、にやりと笑う。
「世界の王者、『セイヘキ・ザ・ワールド』!」
さて、エンダーがパワーアップを遂げていた頃、百合&BLレンジャーたちは少々浮かれていた。
「それで、話って何よ」
高級レストランで二人掛けの席に通されたツカサは、パスタをフォークでぐるぐる巻き取りながら聞いた。
「大魔王を退却させたし、一応祝勝会ってことでいいのかしら?」
「祝勝会でもあり、もっと大事な会でもある」
向かいに座っているナオヤが、重々しく口を開いた。
「俺にはもう、高次元生命体としての力はほとんど残っていない。父さんを倒した後も、俺は人間としてこの世界で生き続けることになるだろう」
「うんうん。それで?」
「先のことを考えると、今のうちから婚活とやらを始めるべきだと思う」
「うんうん。……え? 婚活?」
藪から棒に何なのだろう。ツカサは内心、困惑していた。パスタを食べる手を止め、様子を見ることにする。圧縮冷凍で大魔王を退散させたのがよほど嬉しかったのか、今日のナオヤはちょっとキャラ崩壊気味だ。
「ツカサ。以前、俺にビンタして気合を入れてくれたことがあったな」
フォークを置いたツカサの手を、ナオヤが出し抜けにぎゅっと握った。
『どうして、全部一人で抱え込もうとするわけ⁉︎ 複雑な事情があったのは分かるけど、あたしたちは同じ警察の仲間でしょ。もっと頼ってくれてもいいじゃない!』
「え、ええ、そうね。まだ、あたしたちが完全には打ち解けてなかった頃のことね」
ナオヤとの距離が近い。前から薄々気づいてはいたが、彼はとても整った顔立ちをしている。他の人間の姿をコピーしているのだと分かっていても、ツカサはついドキドキしてしまった。
「あのとき、お前という人間の器の大きさに、ビリッと運命感じたぜ。そのハート、撃ち抜かせてくれ!」
物凄い急展開だ。大体、あのビンタをしたシーンのどこに恋愛要素があったんだろうか。残念ながら心の準備ができていなかったので、ツカサはあっさり手を振りほどいた。
「前回は『捕らぬ狸の皮算用』と言ってたじゃない。まだ大魔王を倒したわけじゃないのに、気が変わるのが早すぎるわよ!」
「細かいことは気にするな。この戦いが終わったら、俺はお前と結婚するんだ」
「それ死亡フラグだからね⁉ ていうか、いきなり求婚されても無理よ。あたしには大切な推しが……」
二人がわあわあと揉め始めたとき、離れた席から立ち上がり、つかつかと歩み寄ってくる人物がいた。
「おい、ナオヤ! 俺の相棒に手ェ出してんじゃねえぞ! 恋愛ってのは、もっとこう、段階を踏んでやるものだろうが!」
「カイリ⁉ あ、あんた、いつからそこに?」
ツカサが素っ頓狂な声を上げた。もしや、今しがたナオヤに手を握られたのも見られたのだろうか。急に恥ずかしくなってきて、頬に赤みが差したのを自覚する。
「知らないのか。このレストランのシェフは百合ブルー・トウマ、ウエイトレスのうち一人は百合イエロー・ウミカだ。怪盗稼業をやりつつ、ここで働いて生計を立ててる。――あいつらから連絡があったんだよ。『BLレンジャーの二人が仲良く食事しに来てるけど、どうしたんだろう』ってな!」
「それで気になって、様子を見に来てたってわけね……」
ということは、トウマとウミカの二人にも「ツカサとナオヤがデートらしきことをしている」との情報は伝わっているわけだ。恥ずかしくて、ツカサは顔から火が出そうだった。
羞恥心を誤魔化すかのように、咳払いを一つする。
「ナオヤくんの暴走を止めてくれたのはありがたいけど、『俺の相棒』とか言わないでよねっ。それじゃまるで、あたしとあんたが……つ、付き合ってるみたいに聞こえるかもしれないじゃない!」
「いや、聞こえねえだろ。考えすぎなんだよ、お前は。この堅物!」
「そこまで言わなくてもいいでしょ⁉」
ナオヤの唐突な告白タイムは終了したが、今度はツカサとカイリの言い争いが始まってしまった。もっとも、いつものことなのだが。
じゃれ合っている二人を眺め、ナオヤは自身の敗北を悟った。ツカサとカイリは強い絆と信頼関係で結ばれており、その間にナオヤが割り込む余地はないのだと理解した。
「ラブ・イズ・オーバー」
誰にも聞こえないくらいの声量で囁き、絶望したナオヤはうなだれてしまった。
不意に、ツカサの胸ポケットに入れていた無線が振動する。BL1号・ケイイチロウの声が聞こえてきた。
『お取込み中、失礼する。一般市民から通報があった。高次元生命体が攻めてきたらしい。お前たちも早く現場に向かえ!』
今回、ご迷惑をおかけした作品
・ジュウレンジャー
・ジュウオウジャー
・リュウソウジャー