「結論から言うと」
リボンダークモノスを数体召喚しながら、ダレンは首だけで振り向いた。
「やろうと思えばできる」
「できるのかよ⁉」
「ただし、危険すぎる。彼らを召喚するつもりはない」
困惑している仲間たちに、彼は順を追って説明した。
「無貌やルーカス、第一位ビッグ・ファーストといった過去の強敵を召喚するのは、リスクが大きい。……たとえば、第一位を呼び出して『最強無敵』のチート能力を使わせれば、グリイザに勝利することはできるかもしれない。しかし、その後はどうする? 奴の最強の力を封じられるのは、ルーカスの『他殺願望』くらいのものだ。下手をすれば私たちが全滅するぞ」
「けど、ダレンが今使ってる原典には、召喚したキャラを操る力があるんでしょ? 呼び出したキャラが反抗してくるようなことなんて起こり得るの?」
ツカサの疑問ももっともだったが、元第二位は首を振る。
「通常は起こらない。が、ビッグ・ファーストの最強無敵の力に通用する保証はないし、ルーカスの性癖や『サウザー』の原典で無効化されるかもしれない。それ以外でも、召喚対象があまりにも強すぎる場合は、私のコントロールを外れる可能性は否定できないな」
第一位はともかく、ダレンにとって無貌やルーカスを復活させることほど屈辱的なことはないだろう。グリイザに勝つためとはいえ、自分の家族や恋人を殺した相手を蘇らせるのは精神的にかなりキツいはずだ。
その辺りの事情を知っている百合・BLレンジャーは、ダレンに対して強く言えなかった。もちろん、彼らだってルーカスとの再会なんて望んでいなかったけれども。
「なるほど……じゃ、あたしたちだけで何とかするしかないわね」
「いや、少し待ってくれ。第一位ほどではないが、援軍を出そう。奴ら程度なら、私にも難なく扱える」
どこからか三枚のカードを取り出し、ダレンは銃へ装填した。
「無貌支持派の第三、四、五位よ。私に力を貸せ!」
『ジゲン・ライド! デルタ!』『ガン・メン・Q!』『二十世紀青年!』
黒と白のアーマーを纏った、ギリシャ文字モチーフの戦士。巨大な眼球に手足が生えたような姿の怪獣。のっぺらぼうに近い顔の中央に、指差しマークとギョロ目を組み合わせたマークが刻まれたスーツの男。懐かしい顔ぶれが並び立ち、グリイザと対峙した。
「Check」
ホルスターから銃を抜き放ち、デルタは三角錐のポインターを射出した。それは虚無怪人の胸部にヒットし、デルタの原典の能力、「必中効果」を発動させる。
「……そうか。あいつの原典には、攻撃を必ず命中させる力がある。絶対的な回避能力を持つグリイザにも、デルタの必殺技なら当たるぜ!」
ダレンの作戦に気づき、裕介が表情を緩ませた。第一位と組んで襲ってきたときは散々苦しめられたけれども、昨日の敵は今日の何とやらである。
『Exceed Charge』
はたして、デルタの跳び蹴りはグリイザに炸裂した――全然効いた風ではなかったが。
「たとえ巨大化していなくとも、私の戦闘力は巨大化時と変わらない。その程度の攻撃では、私には傷一つつかないよ」
英雄会会長はフッと笑い、拳を振るってデルタを軽く薙ぎ払った。ならばと、ガン・メン・Qが立ち向かう。
「吾輩が相手である!」
大きな眼から吸収光線を放った第四位。しかし、やはりグリイザには当たらなかった。
「ええい、小癪な。吾輩の体内の異空間へ飛ばすことができないのは不本意であるが、こうなったら性癖のパワーで叩き潰してやるのである!」
ガン・メン・Qは、「顔の好み」に関する恋愛法則を司る。どういった顔が好まれるかという恋愛ルールを、エリア内で一秒間に一回変化させることができるのだ。
かつ、そのルール変更の情報を相手の脳へ直接、リアルタイムで送り込み続けることによって、莫大な情報量で相手の脳を思考停止状態にできる。要は、脳の処理が追いつかないほどのスピードで割とどうでもいい情報を送りまくり、精神攻撃を行うわけである。
「……ば、馬鹿な⁉ 吾輩の精神攻撃が、全く効いていないのである!」
グリイザが無効化できるのは物理攻撃だけにとどまらない。慌てふためく第四位にビームを浴びせ、瞬く間に撃沈してしまった。残るは、変身解除された第三位と、まだ無傷の第五位だ。
「僭越ながら、クイズを出題させていただこう」
二十世紀青年がそう宣言すると、九つの黒い影が彼の周囲に立ち上がった。
「彼らは、私が子供の頃、秘密基地を作って一緒に遊んだ仲間たちだ。だがこの中に、のちに『ともだち』と呼ばれる悪い奴が一人混じっている。それが誰か、貴公に分かるか?」
「ほう?」
「今から貴公には、この九つの影の中から『ともだち』を選んでもらう。正解すれば、そこでクイズは終了だ。ただし不正解だったり、答える前に時間切れになったりした場合、貴公は『ともだち』に『絶交』されて肉体が約十年分老化する。そして、正解するまでクイズは続行される。この老化は、貴公が私を倒さない限り解除されることはない」
以前ナオヤに対してしたのとほとんど同じルール説明を、第五位はグリイザに対しても行った。ヒントが少なすぎるクイズで敵の寿命を削る理不尽な力ではあるのだが、誰に対してもルールが同じところだけは公平さを感じる。
「くだらない遊びに付き合っている暇はないのだけどもね」
ため息を吐き、グリイザは頭部から渦巻き状の破壊光線を放った。が、二十世紀青年を守るように立つ黒いシルエットが光線を防ぎ切り、ダメージを一切通さない。
「言い忘れていたが、クイズ出題中、貴公の攻撃は私に当たらない。物理攻撃無効のシルエットたちが代わりに受けてくれるからな。さあ、早くシルエットという名の選択肢を選ぶがいい!」
かつてBLファイヤーの攻撃をガードしてみせたシルエットは、グリイザの超火力にも有効だった。相手が物理攻撃無効なら、こっちも物理攻撃無効で対抗するという趣向だろうか。ダレンもなかなか面白い作戦を立てている。
これなら、最悪でも引き分けには持ち込めるのではないか――とナオヤは思いかけたが、数秒後に考えを改めた。残念だが、二十世紀青年ではグリイザに勝てないことを悟ったからである。
「……なぜだ。『ともだち』に『絶交』されても、なぜ貴公は老化しない⁉」
あらゆる攻撃を受け付けない会長には、老化作用も効かなかった。つまりグリイザは、何の罰ゲームも受けることなしにクイズを進めたのである。
焦る二十世紀青年に、虚無怪人は悠然と告げた。
「私はただでさえ初老なんだ。今以上に老けては困るのだよ」
「化け物め……!」
「さて、五回も間違えてしまったけれど、残る選択肢は四つだね。確率論的には、そろそろ当たるのではないかな?」
静かに指差したシルエットは、正解だった。クイズが終了すると同時に、物理攻撃無効の影たちも消えていく。
第五位には、「リョナ」性癖の力も備わっている。しかしこれは、相手を痛めつけた状態でこそ真価を発揮するものであって、全く老化していないグリイザには何の意味もなかった。
「クイズに正解したからといって、私に勝ったと思うな!」
盾となってくれる影もない今、青年にできるのはやぶれかぶれの特攻だけだった。第二の能力を発動し、両手を掲げて英雄会会長に突進する。
「この手から発生する、殺人ウイルスを喰らうがいい。ちなみに私はワクチン投与済みなので、死ぬのは貴公だけだがな!」
「いいや、君だよ」
殺人ウイルスも全く効かなかったグリイザ。螺旋状の光線を飛ばし、ウイルスもろとも二十世紀青年を焼き払った。
「……ねえ、ダレン」
レジスタンスの同胞の背中を、お菊が指でちょんちょんとつついた。
「無貌支持派を呼び出した後、グリイザの能力を教えておくべきだったんじゃない?」
「……私も今、そう思った」
※年内の更新は今回で最後とさせていただき、年末年始はお休み致します。1月中旬から再開予定です。読者の皆様も、よいお年を。