「変身解除したくらいで、僕に勝った気にならないでほしいな。僕は世界で三番目に強いんだから」
最後に残った無貌支持派、第三位デルタは、硬い灰色の皮膚を持つ竜人形態に変わった。グリイザが撃ち放ったビームを、手で触れた瞬間に灰化させる。
「この姿の僕には、触れたものを灰にする力がある。君がいくら光線を撃ったところで、僕には無意味。降参するなら今のうち――ッ⁉」
「いくら君の灰化能力が強くても、『無』そのものである私の肉体までは消せないだろう」
得意げに喋っている途中だったが、竜人はグリイザの繰り出したアッパーカットをもろに喰らい、一撃でノックアウトされてしまった。人間態に戻り、白目を剥いて倒れる。ほどなくして、戦闘不能に陥ったデルタがカード状態に還元された。
能力の相性自体は悪くなさそうな三人だったけれど、いかんせんパワーが足りない。グリイザに対して何一つ決定打を与えられぬまま、無貌支持派の第三、四、五位は再び退場してしまった。
「……やはり奴らでは力不足か」
呟き、ダレンはリボンダークモノスの召喚を止めた。一旦変身を解いてから、グリイザを睨み、赤いカード型アイテムを取り出す。それを握る手は僅かに震えていた。
「最後の手段だ。最初に言っておくが、錆びても強いぞ」
「何をする気なの、ダレン⁉」
ただならぬ気配に、お菊が慌てた様子で尋ねる。
「このカードを使って変身する形態『零フォーム』には、強い力と引き換えに変身後、使用者に関する記憶が他の人々の中から消えるというデメリットがある。私はあえてこれを使おうと思う」
「わざわざ、そんな原典を選んで使わなくても……」
と言いかけて、お菊ははっと口を手で押さえた。
「まさか、ダレン自身を私たちの記憶から消して、虚無の総量を増やすつもり⁉」
「ああ」
やむを得ないだろう、と元第二位は頷く。
「かつて私は、ルーカスによって全てを奪われ、超次元界の民の記憶の中からも消えた。だがそのおかげで相当の虚無を得、ルーカスに対抗できるだけの力を手に入れた。……何、気にするな。もう一度同じことをやるだけだ。あるいはグリイザにも勝てるかもしれない」
「ダメよ、そんなの!」
カードを握った彼の手を掴み、必死で止めようとするお菊。
「なぜ止める。私たちは二度と会うことはなく、触れ合うこともない。それで良いのだ」
「良くないわよっ!」
リボンズへの変身を解除した彼女は、目を潤ませていた。
「せっかくルーカスへの復讐を終えて、新しい人生を歩み始めたのに、またすべてリセットするつもり? 私たちの記憶からさえも消えて、孤独を選ぶわけ? そんなの、私が絶対許さない。そんな風に助けてもらったって、私、全然嬉しくないわよ!」
「Eat Kill All……じゃなかった、生きろ、ダレン!」
訳の分からない間違い方をしつつ、カイリも説得した。
「自己犠牲は尊い行いかもしれないけど、必ずしも正しい行いとは限らないだろ。俺たちはお前に生きていてほしいんだよ、ダレン。お前は人間たちの中で生き続けろ!」
そんな調子で皆が引き止めたので、ダレンは渋々「すまなかった」「もうやらない」と謝罪。捨て身の攻撃を断念した。
そして傀儡の召喚が止まっていた間、ヒョウガが時間稼ぎを試みていた。グリイザの前に立ち塞がり、問うたのである。
「ダレンさんが虚無を得たのは、ルーカスのせいで大切な人たちを失ったからだ。お前は一体なぜ、それほどの虚無を得た?」
「そんなことを聞いて何になる。時間の無駄というものだよ」
虚無怪人は刹那動きを止め、興味なさそうに零騎士を見やった。
「聞いてくれ。できることなら、俺たちはお前を救いたい。虚無を埋め、苦しみから解放したいんだ!」
「笑止。私は救いなど求めていない!」
対話に応じる気はまるでなさそうだ。なおも進撃を続ける会長を見て、カイリは「仕方ねえな」と唸った。
「こうなったら、粘り強く戦うしかない。向こうが攻撃を無効化してくるなら、こっちも全力で回避&防御だ!」
「行くわよ、皆。――チェンジスタンバイ! エマージェンシー! 百合・BLレンジャー!」
ツカサの合図でVS・スワットモードを装着し、防御力と攻撃力を底上げ。雄叫びを上げ、一同は果敢にもグリイザへ立ち向かった。