百合レンジャーvsBLレンジャー   作:クリスタルスカイ

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70 猛攻!年上派VS年下派

『武神ソード・ビクトリー!』

 

 クロードが刃を振るうと同時、黒い斬撃が回転しながら四方八方へ飛んだ。これまで何とか粘っていたツカサたちだったが、必殺技を受けてとうとう変身解除されてしまう。

 

「やはり、スタンダード・フォームでは俺には及ばないようだな。これで終わりにしてやるぜ!」

 

 悔しそうに膝を突いた百合・BLレンジャーへ斬りかかるクロード。まだ変身状態を維持できているダレン、お菊、美明日が全力でそれを止めにかかった。

 

 

「無駄だぜ!」

 

 懐から、ゾンビの絵が描かれたゲームカセット型アイテムを取り出すクロード。ボタンを押すと、「デンジャラス・グール!」と音声が鳴る。

 

「あれって……」

 

 裕介が呟く。確か、お菊の先導で超次元界の外れを進んでいたときに見たことがある。東京ビーエル族のカネコ青年が変身し、ゆりキャン△族の超次元ライダー・なでしこを迎え撃っていた。まさかとは思うが、クロードはあんな辺境の地の住人からも原典を奪い、中古品として簡単に使いこなしているのだろうか。

 大量の原典をストックしていたルーカスも面倒な相手だったけれども、彼は少なくとも、新品の原典を自力で手に入れていた。クロードのやり方はちょっとずるい。

 

 

「『俺が突破口を開きます』。お前はそう言ったな。俺に刃向かった罰だ。その望みを絶つ!」

 

 不意にヒョウガの方を向いて、仮面の下で不気味な笑い声を漏らした。

 アイテムを起動したが変身はせず、武神ソードの姿のままで原典の効果を発動。何とクロードは、変身後の超次元ライダーとしての能力ではなく、(原作において色んな意味で有名な)変身前のシーンを能力として使用したのである。

 

 

「零騎士ヒョウガ! なぜお前が、大して苦戦せずにブラッコに勝てたのか。なぜ虚無英雄会にはまあまあ苦戦したのか。なぜ俺の『年下好き』性癖が効かなかったのかァ!」

 

 武神ソードは大上段に刀を振り上げた。

 

「それ以上言うな!」

 

 原典の作用で唐突に走り出し、クロードを止めようとするダレン。

 

「その答えは、ただ一つ」

「やめてーっ!」

 

 お菊も悲鳴を上げ、ダレンに続いた。なお、原作ではここで悪役の台詞を中断させることに大きな意味があり、だからこそ止めようとするのだが、今回は別に台詞自体に大した意味はない。

 

 

 重要なのは、原典の効果で「どんなに頑張って止めようとしても止められない」状況を意図的に作り出すこと。百合・BLレンジャーへクロードがとどめを差すのを誰にも止められなくさせて、零騎士を絶望させてやろうと目論んでいたのだ。

 

「ハァァァ……零騎士ヒョウガァ!」

 

 吐息を漏らしつつ叫ぶクロードを見て、美明日もなぜか無言で走り出した。

 

「お前が、世界で初めて……重度の『年上好き』性癖をォ! 発動した男だからだァーーッハッハッハッぐあああ~っ⁉」

 

 狂ったように笑い続けた武神ソードの頬を、鈍い衝撃が襲った。鋭いパンチを喰らい、無様に吹っ飛ばされる。

 

 

「ば、馬鹿な」

 

 よろよろと立ち上がった彼は、「信じられない。アンビリバボー!」とでも言いたげに、攻撃してきた張本人を凝視した。

 

「さっきのシーン、原作では悪役が胸倉を掴まれたりすることこそあれ、彼が台詞を言い終わるまでは誰も静止できなかったんだぞ。何でお前は自由に動けるんだ。原典を愚弄する気か!」

「愚弄しているのはお前の方だろう。しょうもないことのために原典を使いやがって」

 

 ヒョウガは呆れた風だった。

 

 

「悪かったな。俺のバフ効果は、お前の行動阻害を無視して動ける程度には協力らしい」

「ワット⁉ お、おのれ零騎士……。こうなったら、俺が虚無英雄会から回収したあらゆる原典の力でお前を」

 

 叩き潰す、と言いかけて、クロードは口をつぐんだ。瞬間、青ざめる。

 零騎士ヒョウガは、虚無英雄会の役員メンバーのほとんどを一度倒している。「インセクト・レモン」を使っていたときのリョウマを撃破し、ノン・プリシャスを圧倒し、ワラカスフンドにも一騎打ちを挑んで勝利してきた。そんな相手に、中古で同じ原典を使ったところで勝てるだろうか? 答えはノーである。

 

 

 クロードが前の所有者よりも上手く原典を扱えていることを考慮しても、正直かなり厳しい。何せ、こっちの使う技や能力は割れているわけだし、零騎士は「年下好き」で物凄くパワーアップしているのだから。

 

「チッ。――『超竜チェンジ』!」

 

 今使用している武神ソードも、一度ヒョウガに敗れている。相手が悪すぎた。フォームチェンジの必要性に迫られつつも英雄会由来の原典では不安なので、クロードは消去法により「キョウリュウクロード」へ再変身した。

 

「お前さえいなければ、俺の勝利は確実だったのに。リアリーにファックな奴だぜ!」

 

 背中の翼を広げて滑空し、雄叫びを上げて斬りかかる。ヒョウガはその一撃を、ゼロライアットで真っ向から受け止めた。

 

 

「……クロード。俺はお前を許さない」

「何っ?」

「お前は人の心の虚無を利用し、英雄会を陰から操った。平和を取り戻したこの世界に再び争いを起こし、サヤさんを含む大勢の人々を危険に晒した。ルーカスのせいで家族を失ったことには同情するが、お前の数々の悪行に同情の余地はない。ここで俺が倒す!」

 

 長剣が黒い稲妻を帯び、力強く振るわれる。鍔迫り合いの状態からやや強引に、ヒョウガが「零の衝撃」を発動したのだった。

 

 

「『零の撃弾』!」

 

 斬撃を受けて後退したクロードへ、さらに弾丸を浴びせかける。反撃の隙を与えず、零騎士は一気に畳みかけた。

 

「『零の一撃』。そして、『コスモバージョン』!」

 

 ジャンプし、空中で一回転してからゼロライアットで一閃。着地するやいなや、そのまま剣から白い斬撃を飛ばした。

 

「オー、マイ……」

 

 性癖の効果で威力が底上げされている技を立て続けに受け、クロードは既に装甲へ大ダメージを負っている。鎧から白煙が立ち昇り、足取りがおぼつかなくなっている敵を睨み、ヒョウガは剣の柄に四種のボタンを出現させた。順に押していき、零騎士最強の技を発動する。

 

 

『百合・パワー!』『BL・パワー!』『ノーマル・パワー!』『年上・パワー!』

 

 尋常ではないバフがかかった今のヒョウガは、ゾーンに突入しきっていなくともこの大技を使えるまでになっていた。

 長剣の先端から、黒い巨大な光の刃が伸びる。

 

「――終わりだ」

『マキシマム・ゼロ・タイフーン!』

 

 漆黒の刃が横薙ぎに振るわれ、金色の戦士の胴を切り裂く。クロードの絶叫は、大爆発によってかき消された。

 




※次回の更新は1週間後の予定です。
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