「……俺に任せろ」
そのとき、力を振り絞ってBLファイヤー・ナオヤが立ち上がった。
「百合にもBLにも興味を持たない俺を相手にしている間は、セイヘキ・ザ・ワールドの攻撃力は上がらないはずだ。俺が奴を引きつけているうちに、皆は必殺技を叩き込んでくれ!」
ふらつきながらも、ソードモードにしたBLディフェンダーを構えてエンダーへ突進する。だがしかし、ザワールドは余裕を崩さなかった。
「発想は良いですが、惜しかったですね。私の能力は、『ノーマル』性癖の持ち主にも対応しています。たとえ百合・BLへの興味がなくとも、男女恋愛へ何らかの興味を抱いている限り、私の攻撃力は上昇し続ける!」
「フン。俺が男女恋愛へ興味津々なわけが……」
勢いよく斬りかかるBLファイヤー。けれども、黒いフェイスアーマーの「ノーマルライノス」形態へチェンジしたザワールドは、それをガンロッドで容易く受け止めた。
大魔王に一矢報いて浮かれ気分になったナオヤは、婚活を始め、あろうことかツカサへプロポーズのようなことまでしてしまった。最近の彼に、多少なりとも男女恋愛への興味関心があったことは間違いない。ザワールドの攻撃力は下がることを知らなかった。
「どうしました? やはりあなたも、男としての本能を覚醒させずにはいられないようですね」
仮面の下で、エンダーは意地の悪い笑みを浮かべた。ザワールドの蹴りを喰らって、BLファイヤーが倒れる。
倒れ伏した七人の戦士たちを見回し、セイヘキ・ザ・ワールドは「さて誰から倒そうか」と言わんばかりだった。
「勝負ありましたね。やはり、私とあなたたちではレベルが違うんですよ」
「何てことだ。無性癖に近いナオヤでも、奴の能力を無効化することはできないのか!」
BL1号・ケイイチロウが悔しそうに叫び、アスファルトへ拳を叩きつけた。
セイヘキ・ザ・ワールドの能力は、ノーマル性癖、つまり広義の男女恋愛に対応している。コウ少年のようにおねショタ好きな者でも、ゴークイーンズのようにSMプレイが好きな者であっても、それが「異性間での恋愛」でさえあれば問答無用に能力が発動するのだ。おそらく、彼の力の対象外になるものは存在しないのではないだろうか。
「すまない。前回、俺が『イマジン・ブレイクハンド』を使って故障させていなければ」
「トウマくん、その話はもういいから。ねっ⁉」
落ち込んでいる百合ブルーを、イエローが励ます。
「……こうなったら、百合とBLの性癖を諦めて戦うしかないんじゃないですか」
BL2号・サクヤも口を挟んだ。
「それで世界を守れるのなら、仕方ない。背に腹は代えられませんよ」
「でも、本当にできるの? あたしたちの、人生最大といってもいい趣味を諦めるだなんて」
あたしにはできない、とツカサは力なく首を振った。
「――そう、できるわけがありません」
セイヘキ・ザ・ワールドが「性癖大解放!」と唱えた。両肩にサイの角、左手に狼の爪、右腕にワニの尾を模した武装が合体し、さらなるパワーを引き出す。ノーマル性癖とサイが対応している理由は結局明かされていないが、今はそんなことを気にしている場合ではなさそうだ。
「心の中にある情熱を燃やして、あなたたちは今まで戦ってきた。その情熱を私に利用されて、あなたたちは惨めに死ぬのです!」
エンダーが、ザワールド最強の必殺技を放とうとした。全身の動物型武装が光を帯び、エネルギーがチャージされていく。
「情熱を燃やして戦ってきただって? お前、おかしなことを言うんだな」
だが、一発の銃弾がそれを阻む。フェイスアーマーを銃撃されてエンダーがバランスを崩し、技は不発に終わった。
よろよろと立ち上がった百合エックス・カイリが、エックスチューナーを敵に向けている。マスクの下で見えないが、彼は今きっと、不敵に笑っているのだろう。
「何がおかしいのです。あなたたちは百合やBLへの強い情熱を持っている。だからこそ、その文化を守るために戦ってきたのではないですか?」
「確かにね。でも、あたしたちが守ってきたものはそれだけじゃないわ」
カイリとは長い付き合いになる。彼の言わんとすることを察して、BLエックス・ツカサもその隣に並び立った。
「百合派とBL派が争う時代は、とっくの昔に終わった。あたしたちが戦ってきたのは、自分の愛する文化を守るためだけじゃない。皆の命を守り抜くためよ!」
百合とBLを愛好する以前に、彼らは市民を守るヒーローなのである。その事実を再確認すれば、突破口は開けたも同然だった。
闘志を再燃させた七人の戦士が、二人の左右へと続く。各々が武器を構え、セイヘキ・ザ・ワールドを倒そうと牙を剥く。
「俺たちを突き動かすのは、何も百合やBLへの情熱だけじゃない。俺たちは、俺たち自身の中で燃えている正義の心で、お前を倒す!」
カイリの堂々たる宣言に、今度ばかりはエンダーも狼狽していた。
「あり得ない。あなたたちは、大好きな性癖への情熱を捨てるとでもいうのですか?」
「別に捨てるわけじゃないわ。でも、少なくとも、あんたみたいな悪党と戦っているこの瞬間においては、趣味への情熱よりも正義の心の方が真っ赤に燃えてる。そういうことよ!」
続いて、ツカサも啖呵を切る。
「皆! 一旦心を落ち着かせて情熱を抑え、正義の心の力で戦うわよ!」
「俺たちの本当の力を見せてやる! 瞑想(メディテーション)だ!」
BLエックスと百合エックスの指揮の元、七人は両手を組み、束の間目を閉じて瞑想を始めた。精神統一して情熱を落ち着かせ、純粋な正義の心によってのみ戦えるようにメンタルを整える。そうすれば、情報に反応してザワールドの攻撃力が上がることはないのだ。
「敵の目の前で無防備に瞑想するとは、愚かな。この私を舐めるなよ!」
右腕のワニの尾を振るい、叩きつけようとするザワールド。だがしかし、それよりも一瞬早く、七人の体は宙に浮かび上がっていた。
「な、何っ⁉」
虹色に輝く光のオーラに包まれ、戦士たちは――アーマーの見た目こそ変わっていないけれど――純粋な正義の心によって、さらにパワーアップを遂げたのである。
「一体、どういうことなのです?」
「人の体には、未知の力が秘められている。鍛えれば鍛えるほど、それは未知の力を発揮するんだ!」
「あたしたちのオーラパワー、見せてやるわ!」
静かに着地し、カイリとツカサが言い放つ。そして、七人でビシッとポーズを決め、全員で名乗った。
「黄金のオーラに命が燃える。BLエックス!」
「銀の稲妻。百合エックス!」
「炎を上げる。BL1号!」
「地上に降りた、神秘の泉。BL2号!」
「君は夜空の青い彗星。百合ブルー!」
「宇宙に続く、奇跡の道。百合イエロー!」
「戦う君は美しい。BLファイヤー!」
「「我ら、光戦隊・百合&BLレンジャー!」」
どういう理屈か、七人の背後で七色の爆発が起こった。
今回、ご迷惑をおかけした作品
・マスクマン