変身完了後、すぐにツカサが「チェンジスタンバイ!」と発声。VS・スワットモードが起動し、各自が防弾ベストと大型マシンガン・VSリボルバーを装着した。
裕介と美明日も「BANG・解」し、それぞれ珈琲サイブレードとNTRブレードを構えて準備万端である。
「孤高に煌めく怪盗。百合エックス!」
「百合ブルー!」
「百合イエロー!」
そして次々とポーズを決め、名乗りを上げていった。
「気高く輝く警察官。BLエックス!」
「BL1号!」
「BL2号!」
「二十世紀が泣いている。BLファイヤー!」
「才を磨いて、己の個性を見つけ出す。アメイジング・オリジナリティー! オメガ珈琲シルバー!」
「あなたには聞こえないのかしら? 激しい風の囁きが。超次元ライダー・来部!」
「リボンをつけて返そう。君に受けた屈辱を!」
「なみいる悪を、白日のもと暴き出す。光のレジスタンス! アメリカン・ファイター、リボンズ!」
「熱々ご飯で、みなぎるパワー! レッドクイーン・プレシャス! 美味しい笑顔で、満たしてあげますわ~!」
「ふわふわサンドで、心にスパイス! ブルークイーン・スパイシー! 分け合う美味しさ、焼きつけますわ~!」
「きらめくヌードル・エモーション! イエロークイーン・ヤムヤム! 美味しいの一人占め、許しませんわ~!」
デリシャスパーティ・ゴークイーンズは拳を握り固めたり、手をパンと叩いたり、手を伸ばして首を傾げたりと、やたら動作が多い。
「……大切なのは美学。美学なき者は、このダレンが消し去る!」
ダレンに限って言えば、特にポーズらしいポーズもなかった。ただスパナ型の武器を肩に担いでいるだけだ。
赤紫色の鎧を上半身に纏い、下半身には作業服のようなデザインの白いアーマースーツを着ている。全体的に、錆びたり煤で汚れたりしている感じだ。
「零騎士、ヒョウガ! 銀河を貫く伝説の零だ!」
最後に零騎士が、右手で剣を水平に構えるポーズを取る。
「ネトレギア。二十二年後から来たお前の存在そのものが、俺とサヤさんの未来の幸せを、平和な生活を否定している。お前は俺が、いや俺たちが、ここで必ず潰す!」
既にゾーンへ突入している彼を見て、サヤはかあっと頬を赤らめた。
「ヒョウガくん、二十二年経ってもうちと一緒にいる前提で考えてるんやなあ。てことはその頃には一緒の家に住んで、結婚もして、子供とかもおって……あかん、未来が幸せすぎるわあ。うち、こんなにかっこいい旦那さん貰って、本当にええのん??」
「な、何だ⁉ お前たちは一体、何なんだ?」
パロディーまみれではあるが歴戦のヒーローたちが並び立ち、ネトレギアが怯んだように問うた。対して、ツカサとカイリを筆頭に、戦隊の面々は凛として名乗った。
「俺たちは!」
「私たちは!」
「「『百合&BLレンジャー』だ!!」」
総勢十二人が天高く跳び上がり、エネルギーを込めたキックを巨人目がけて繰り出す。
「煌めく未来へダッシュして、スーパーノヴァだ! 溢れ出す感情が、この体を突き破るぜ!」
「何を言っているのかまるで分からないけど強い~っ⁉」
跳び蹴りが炸裂した刹那、羽を広げた蝙蝠のようなマークがネトレギアの体に浮かび、彼の悲鳴は大爆発にかき消された。
戦え、百合レンジャー! 頑張れ、BLレンジャー! いつの時代も、どんな場所でも、誰かを守るために戦う者は皆、ヒーローだ!
「久しぶりだな、ルーカス」
カフェのテラス席でロイヤルミルクティーを味わっていたところ、後ろから声を掛けられる。ウエスタンハットを被った青年は、内心面食らっていた。なぜ自分のことを、キンジ・オネガワとしてではない本名を知っている奴がここにいるんだ。
「誰だ」
木製のテーブルへカップを置き、ゆっくり振り向く。そこに立っていたのは、アダムとトーマス。顎髭を生やした屈強な男と、眼鏡をかけた痩せた男だった。
「おっと、これはこれは。懐かしい顔ぶれじゃないか」
オーバーリアクションでおどけてみせたルーカスには、既にアメリカ人的な立ち振る舞いが身に付いていた。人間界への潜伏にもだいぶ慣れてきている。
「しかし分からないな。なぜお前たちが生きている? あのとき、確かに俺が斬ったはずだ」
「……ここで話すようなことじゃねえな」
場所を変えようぜ、とアダムが裏通りを顎でしゃくった。ルーカスも無言で頷いた。
薄暗い路地へ移動したのち、まずトーマスから話し始めた。
「僕とアダムはあの日、雪山で君に襲われた。深く斬りつけられ、一度は絶命した。それは間違いないよ。ただ、僕たちにとって幸運だったのは、『異世界転生』系の原典のパワーで超次元界の辺境に転生できたことだったのさ」
「……転生だと?」
ルーカスは眉をひそめる。
そういえばあのとき、二人が所持していた武器は斧と拳銃だけだった。ロリーニンジャーへ変身したルーカスを相手取るには明らかにパワー不足で、ルーカス自身、「ごくありふれた武器を具象化して使ったところで、俺には勝てない」と言い放った覚えがある。
「ああ。俺たちは戦って勝つことよりも、人間界という未知の世界で生き延びることに重点を置いて、使用する原典を選んでいた。武器がパッとしなかったのはそういうわけだ」
アダムが続けた。
「俺たちの原典はどちらも『異世界転生』系。戦闘能力はそれほどでもないが、死んだのとは別の世界で一度だけ転生できるパワーを秘めていた。この力を使って、人間界で死亡した後に超次元界で復活できたんだ」
「なるほどな。で、今になってようやく、俺を追いかけ回す気になったと?」
「勘違いしないでくれ。今までだって、すぐにでも追いかけて問い詰めたかったさ。どういうつもりなのかってね」
心外だ、とトーマスが憤る。
「でも、調査部隊のメンバーで『本当にどこにでも行けるドア』が開けるのは君とダレンだけだったろう? 貴族階級じゃない僕らは、人間界の君の居場所を探るのに少々手こずったのさ」
「この間、ネットニュースで『海岸で金色のヒーローと怪人の目撃情報が』云々ってのが流れてなけりゃ、下手すると永遠に発見できなかったかもな」
「……弱ったな。どうやら目撃者がいたらしい」
苦笑し、ルーカスは肩をすくめた。
「まあ要するに、運良く生き延びた雑魚が、のこのこ殺されに出てきたってことで良いんだな?」
「ふざけんな。お前を捕縛して吐かせに来たんだよ。一体、お前が人間界で何をしようとしていたのかをな!」
「辺境にいた僕らには断片的な情報しか入ってこなかったけど、超次元界の中央では、無貌とかいう奴が大暴れしているらしいじゃないか。あれにも君が一枚嚙んでいる……というのは穿ちすぎかな?」
はたしてトーマスの推理は大当たりだったのだが、ルーカスは動揺を見せない。二人に詰め寄られても顔色一つ変えず、不敵に笑った。
「知る必要はないぜ。どうせすぐに、俺の手で二度目の死を迎えるんだからな!」
眩しい光に包まれ、ロリーニンジャーへ変身。ソードガンを召喚して構える。
「来いよ、雑魚ども。せいぜい、この前よりはましな原典を使ってみろ!」
※次回の更新は1週間後の予定です。