百合レンジャーvsBLレンジャー   作:クリスタルスカイ

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9 知られざる過去!

「……クククッ。ハハハハハ!」

 

 だが、彼は息絶えてはいなかった。

 変身解除され、肉体を左右に真っ二つに斬られているにもかかわらず、まだ立っていた。血を流しながら勝ち誇った笑い声を上げるその姿は、狂気じみていた。

 

「屈辱の極みだぜ。こんな三下相手に、俺の真の切り札を出さなければならないとはな!」

 

 よいしょ、と両手で自身の体を押すと、左右に分かれていた肉体が綺麗にくっつき、元通りになる。

 

 

「あり得ない。なぜその状態で生きていられる⁉」

 

 なぜか全身から力が抜けていくのを感じながら、アダムは驚愕に目を見開いた。

 

「おねロリ性癖は、ネトルトから護身用に渡されたものに過ぎない。俺の本当の性癖は『他殺願望』。死の一歩手前まで追い詰められたときになってはじめて能力が発動し、治癒力を含む俺の全能力を底上げする」

 

 ニヤリと笑い、ルーカスは青いトンボの戦士の姿へ変わった。「クロックアップ」と呟いて高速移動し、アダムの背後へ回り込む。

「アダムエンド」の斬撃が心臓へ達する寸前で、ルーカスは「他殺願望」の力を発動していたのである。

 

 

「それに加えて、相手のすべての能力を一分間封じることもできる。『サウザー』で無理でも、さすがにこれならお前の無敵タイムも終わるだろうよ。何せ、『他殺願望』は俺の生き方を決定づけた、圧倒的なほど強烈な性癖だからな!」

 

 愛する人に殺されるためだけに、ルーカスは今までにいくつもの惨劇を起こしてきた。他殺願望は、彼の人生を形作ってきた切っても切れないもの。アダムソルジャーやビッグ・ファーストの最強無敵能力でも、ルーカスの情熱には太刀打ちできなかったのである。

 

「今度こそ、本当にゲームオーバーのようだな」

「ま、待て! やめろ!」

 

 パッと振り向き、アダムは尻餅をついて恐れおののいた。

 さっきまで全身に満ち満ちていた最強の力が、今はまるで湧いてこないのが分かる。何とか話を長引かせて一分間耐え、その後反撃に転じるより他になかった。

 

 

「頼む、最後に教えてくれないか。なぜお前は、雪山で俺たちを襲った? 超次元界を蹂躙している無貌って奴は、お前と何か関係があるんじゃねえのか?」

「一つだけ教えてやる」

 

 ルーカスの指が、トンボを模した銃の引き金にかかった。

 

「……『他殺願望』こそが、俺を突き動かす。今までも、これからもな!」

 

 青い光弾が放たれ、アダムの胸に風穴を開けた。崩れ落ちた彼には目もくれず、ルーカスは遠くでぐったりしているトーマスへ近づく。あの痩せた男も、すぐに楽にしてやるつもりだった。

 

 

 

「なあ、レベッカ。最初は軽くでいい。一種のプレイだと思って、俺の首を絞めてみてくれないか」

 

 そう言ったときの妻の怯えた顔を、ルーカスが忘れることはない。

 

「……えっ、どうして? なぜそんなことをするの? 危ないじゃない」

 

 平民用の居住区で、一緒に暮らし始めて間もない頃の出来事だった。

 レベッカの後でルーカスもシャワーを浴び、お互いバスローブ姿。決して悪くなかった空気が、彼の発言で急激に冷え込んでいく。

 

 

「スリルを味わうんだよ。大丈夫、軽く絞めるくらいなら命にかかわることはない。苦しさを上回る快感があるはずだ」

 

 愛する者の手で殺されたいという願望は、以前から彼の中にあった。しかし、いきなりレベッカに自分を殺してくれるよう頼んだところで、了承してくれないだろう。まずはソフトな首絞めから慣らしていけないか、と考えての提案だったのだが。

 

「でも、私、嫌だわ。万が一あなたを失ってしまうようなことがあったら、耐えられないもの」

 

 レベッカは強張った表情で首を振り、リビングのソファから腰を上げた。

 

「ごめんなさい。今日はもう寝るわね」

 

 自室へ引っ込んでしまった妻。それを見送る夫は、大きなショックを受けていた。わなわなと手を震わせる。

 

 

(……レベッカは優しい。優しすぎるくらいだ。だがそれゆえに、彼女が俺の性癖を本当に満たしてくれることはない。この世界で一番愛しい人だというのに!)

 

 彼女に殺してもらうのは最終目標だ。だが前段階としての、首絞めなどによる疑似的な殺しすらも拒絶されてしまったら、他殺願望が叶えられる見込みはまるでない。

 その後もルーカスは諦めず、何度か妻を危険なプレイに誘おうとした。けれどもレベッカの態度がついに変わることはなく、悲しそうに首を振るばかりであった。絶望し、思い詰めたルーカスは「彼女を変えるしかない」と決意した。

 壮大な計画を立てていく中で、彼は徐々に異常な興奮を見せた。

 

 

(君は過去を捨てて修羅になり、俺は偽りのヒーローとして暗躍する。ただそれだけ、お互いが自分自身に嘘をつくだけで良いんだ。そうすれば俺たちは、本当に幸せになれる!)

 

 二人の愛に巻き込まれることになる、人間や超次元生命体のことは何一つ考えていない。否、レベッカの気持ちだってちゃんと考えてはいなかったろう。

 彼の思想は恐ろしく身勝手で、狂っていた。

 

 

 

 すべてを終え、ルーカスはカフェのテラス席へ戻っていた。すっかりぬるくなってしまったロイヤルミルクティーを、ちびちびと飲む。

 

(さすがに、もう転生したりはしないだろうな)

 

 今回のアダムとトーマスは、生き延びることを重視した異世界転生系の原典ではなく、攻撃力に特化したものを選んでいた。再び生き返ることはないだろう。

 転生というのはなかなか厄介な力だ、とも思った。が、ルーカスの目的はレベッカの手で殺されることであり、殺された後で生き返りたいとは別に考えていない。自分で異世界転生系の力を使う気にはなれなかった。

 

 

(……あれに関しては、何か使い道がありそうな気もするが)

 

 トーマスに引導を渡したとき、彼らが使っていたバイソンとサイの戦士の原典は使用者がいなくなった。中古で扱いやすい状態になったので、「せっかくだから」とルーカスは戦利品として貰っておいたのだった。

 

(調べてみたところ、巨大ロボも有していたが今回は使わなかったようだ。どこかで有効活用してみたいぜ)

 

 

 その後、ロリーニンジャーには専用ロボ「ロリコンキング」が用意されたので、ルーカスが自分でバイソンとサイの力を使うことはなかった。オメガ珈琲シルバーと超次元ライダー来部の乗るロボに、ちょっとした遊び心で使ってみただけである。

 歌が流れる仕様にしてやったので、二人が驚く様を想像し、つい人の悪い笑みがこぼれてしまった。

 

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