百合レンジャーvsBLレンジャー   作:クリスタルスカイ

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14 転売ヤーとの戦い?(前編)

 俺は中古屋の店員だ。といっても、全国展開しているチェーン店だが。

 別に好き好んでこの仕事をしているわけではない。元々はシステムエンジニアになりたくて、そのために独学でプログラミングの勉強をしていた時期もあった。けれど、第一志望の企業の最終面接で落とされたとき、俺はどこか吹っ切れてしまった。自分の全能力を賭けた挑戦に失敗し、投げやりになったとも言う。

 

 

 こんなはずじゃなかった。

 一応、そこそこ有名な大学に通っていたので、学生の頃は漠然と「俺たちは卒業後に優良企業に就職できるんだ」と思い込んでいた。就職において重要なのはコミュニケーション能力を含む人間力であり、学歴が二の次であることは知らなかった。俺は昔から「愛想がない」と言われることが多くて、面接で良い印象を持ってもらうのにことごとく失敗した記憶がある。

 

 

(……人生設計、間違えたかもしれねえ)

 

 最終面接の結果を見たときほど、今までの自分の生き方を悔やんだことはない。

思えば、大学のサークル活動も途中から面倒くさくなってサボってばかりいたし、暇さえあればバイトして小遣い稼ぎをしていた。目的もなく、ただ流されるように生きていた学生時代だった。

 

 

 ただ、当時からパソコンとか機械いじりをするのは好きだった。休日には中古屋をはしごして、PCパーツを漁っていた。それを活かせる仕事をしたいと思ってのシステムエンジニア志望だったが、面接に落ちてからは「……待てよ、中古屋で正社員になるのもアリじゃね?」と考え直した。

 で、ネットで見つけた求人に応募したらあっさり採用されて、バイトから社員登用されるのにそう時間もかからなかったわけだ。

 

 

 ここまで俺の身の上話を聞いてくれた方なら、「実は中古屋勤務って天職なんじゃね?」と思うかもしれない。しかし、それは間違いである。

 理由は二つ。まず第一に、そもそもの労働条件が鬼畜。鬼畜通り越して社畜まである。店がほぼ年中無休で、かつ営業しているときは社員が一人以上店にいないといけないので、お盆だろうが正月だろうが出勤しないといけない時が確実に存在するのだ。

 

「あの、店長。俺の実家、九州の福岡ってとこなんすけど」

「うん。履歴書見たから知ってる。大学進学を機に上京したんだっけ?」

「あの、正月に帰省したいんすけど」

「いや営業日だろうが。仕事しろ」

「え、でも」

「仕事しろ」

 

 実際にこんなやり取りがあったくらいだ。要は、連休を取ることが凄まじく難しい会社なのである。仕事はシフト制で、大体三日働いて一日休む、くらいのサイクルになっている。小売業って辛いね!

 

 

 そりゃまあ、関東に実家がある人間なら一日や二日の休みさえあれば帰省できるだろう。けど俺の場合、最低でも三日以上の連休を貰えない限り、帰るのは困難だ。どうしろって言うんだよ。俺は一生福岡に帰れないの? 「カントリー・ロード」の歌詞みたいな状況なの?

 第二に、客層があんまり良くない。新品ではなくあえて中古品を買い求める人々には、それなりの理由や事情があるのだ。

 

 

 内訳としては、客の四割は「レトロなものが好きな、マニアックな人たち」。今では新品屋さんで手に入らないものを探してやって来る。客として来ていた頃の俺も、この四割の中に該当する。

 三割は、「家族連れ」。お父さんお母さんが不用品を持ち込んで、それを売ったお金で子供に中古の玩具だかゲームだかを買い与えるケースが一番多い。

 

 マニア相手にオタクトークするのも楽しいし、家族連れを見かけるとほっこりすることも多いのだが、問題は残りだ。二割の「訳アリな人たち」は、あえて中古品を選ぶ人たちと異なる。彼らは金銭的な余裕がなく、最初から中古品以外の選択肢を持っていない。レトロなものに対する愛がないからかは分からないけど、正直、マナーの悪い人も多い。

 ジャンク品コーナーで買ったものに「これ壊れてるんだけど! おたくの店は壊れてるものを売ってんの?」って突っかかられたこともあったっけ。お前絶対ジャンク品の意味分からずに買ってるだろ。部品取りに利用したり、修理して使ってくださいね!

 

 

 四割、三割、二割と来て、最後の一割が一番たちが悪い。ズバリ、「転売ヤー」である。彼らは相場より安く売られているものを中古屋で見つけると、状態が綺麗かどうかを確認し、すぐに「これ後で買うんで、置いといて」と言う。最終的に何万円もの額の買い物をし、重い荷物を抱えて帰って行く。

 奴らが来ると売上がグッと伸びるから、別に悪いことばかりってわけでもないんだよ。ただ、気分は悪い。俺たちが買い取って売り場に並べた商品を、奴らは金儲けの道具として使うからだ。四割の「マニアックな人たち」に商品を使ってもらうのはすごく楽しいし充実感あるけど、転売ヤー相手に販売してもちっとも楽しくない。

 

 

 店長も転売ヤーには手を焼いているらしくて、入社したばかりの頃は口うるさく言われた。

 

「その値段の付け方だと、安すぎるんじゃないの? 転売してる人たちに買われちゃうよ?」

 

 中古品販売の面白いところは、価格決定権が完全に店側にある点だ。新品を売るときは定価が大体決まってることも多いけど、中古だと極端な場合、「定価は数百万! でも今だと価値がゼロに近いので、百円で売りま~す!」なんてことも全然できる。だから適正価格を付けるのが大切になるわけだが、そこのところがとても難しい。

 

 

 色々なオークションサイトを見て、「これは二〇〇〇円プラス送料で取引されてるから、うちで売るなら二五〇〇円くらいじゃね?」みたく決めることが多いかな。ただ厄介なことに、サイトごとに微妙に相場が違う場合もある。自分では適性価格にしたつもりの商品が、転売ヤーに「これくらいなら転売して余裕で利益出せるぜ!」って思われてまとめ買いされたこともあったっけ。

 

 ちょっと値段の決め方の話が長くなっちゃったけど、つまり何が言いたいかというと、「どんなに注意して値付けしていても転売ヤーを完全に撃退するのは不可能に近い」ってことだ。奴らは、俺たちの知らないサイトで商品を売っている。外国人のバイヤーなんかは、日本と海外で相場が大きく異なるものを狙い、海外に輸出して売っていたりする。……まあ、海外輸出に関してはさすがに対処できないな。

 

 仮に海外の相場が日本の倍だったとして、「じゃあ転売ヤーに対抗して海外基準の値段で売ります!」ってやったとしよう。日本国内にあるうちの店で、そんな馬鹿高い値段で売れるわけないんだよな。いや、本当に値段の決め方って難しいよ。

 

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