「――『騎獣合身』!」
一か八かの賭けに出たヒョウガは、超次元界から相棒の牛型巨大モンスターを召喚した。自身も巨大化し、合体してゼロタウラスとなる。
「お、おのれ~。正義の味方のくせに、悪役よりも先に巨大化してくるとは!」
黒、金、赤をメインカラーとし、頭部に大きな角を備えた戦士に見下ろされ、BLジャパンは頭に来たらしい。「BLフィーバーロボ、シュート!」と叫び、付近の地下に隠していたらしい専用ロボットを出撃させた。
「こんなこともあろうかと、我々も巨大戦力を用意していたのさ。完成に思ったより時間がかかり、我々の活躍を伝えるニュースの第一話オンエアには間に合わなかったがな!」
いやニュースに話数の概念はないだろ、とヒョウガは思ったけれど、面倒なのでツッコまずにおいた。
赤い鎧の武者を思わせる巨大ロボが現れ、五人がジャンプして操縦席へ乗り込んでいく。それを見て、ゼロタウラスは大きく跳び上がった。
「ここでは周りに被害が出かねない。俺に付いてこれるか、BLフィーバーJ!」
「当たり前だ。BLフィーバーロボの性能、見せてやる!」
煽るように告げ、特撮ヒーローのロケ地として使われていそうな岩山へと移動するゼロタウラス。まんまと挑発に乗ったBLフィーバーJは、彼を追いかけた。
やがてヒョウガは歩みを止めると、ツインゼロソードを構えて振り向いた。
「……俺が巨大化すれば、そっちもロボットを出してくると読んで賭けに出たんだ。どうやら正解だったようだな。これでもう五対一じゃない。一対一だ」
「あっ」
迂闊だった、と五人がコクピット内で青ざめるが、もう遅い。彼らはヒョウガの作戦通り、五人全員でロボに乗り込んでしまった。自らの手で数的有利を失ったのである。
零騎士がこの作戦を思いつけたのは、ルーカスとダレンが戦ったときのエピソードから着想を得たからだ。巨大化能力さえもブラフとして使い、貪欲に勝利を追い求めるルーカスの姿勢からは、敵ながら学ぶべきところがあった。それまで「相手が巨大化してきたらこっちも巨大化すればいい」程度にしか考えていなかったヒョウガには、目から鱗だったのである。
「こ、こうなったら~~!!」
BLフィーバーロボは、腰のホルスターから二本のダガーナイフを抜き放った。その刃をクロスさせ、青く輝く破壊エネルギーを注入。ゼロタウラス目がけて、勢いよく投擲する。
「『クロス・BLフィーバー』!」
「――『野牛零断』!」
しかし、戦闘経験はヒョウガの方が豊富。槍を構えて、高速で水平回転することでダガーナイフをかわし、一気に間合いを詰めた。すれ違いざまに、黒い稲妻を纏ったツインゼロソードを一閃する。
「そんな馬鹿な~っ⁉」
袈裟懸けに斬られた鎧武者型ロボットは、あえなく爆発四散した。
変身解除された五人は、ゼロタウラスの手でBL警察本部まで送り届けられた。
こうして、虚無英雄会の残党によるささやかな反撃は、零騎士の手で完璧に鎮圧されたのである。
何とかサヤが車を停めていたパーキングエリアまで戻ってきたヒョウガは、「ふう」と額の汗を拭った。
「相手が単純だったから助かりましたけど、正直、五対一で少し危なかったです。サヤさんからルーカスの話を聞いていなければ、咄嗟に機転を利かせることができずに負けていたかもしれません」
「じゃあ、勝てたんはうちのおかげやなあ。もっと褒めてくれてもええんよ?」
ふふんと胸を張るサヤ。その豊かな膨らみからさりげなく目を逸らし、青年はこぼした。
「おかげで助かりました。……俺は直接会ったことはないですけど、ほんの少しだけ、ルーカスって人にも感謝した方が良いんでしょうか」
「別に、せんでええんやない? だって、そもそもルーカスが過去に大暴れせんかったら、虚無英雄会やその残党が出てくることもたぶんなかったわけやん?」
「そ、そうですよね。何を言ってるんでしょう、俺は」
二人は談笑しながら車へ乗り込み、再びタワマンの一室へ向かった。
「どんな人間にも良いところがある」と、よく言われる。ルーカスは人間ではなく超次元生命体だし、良いところの何百、何千倍も悪いところがあるに決まっている。しかしそれでも、彼にも一つくらいは良いところがあったんじゃないだろうか。
ルーカスに会ったことすらないヒョウガは、そんなことを漠然と考えていた――もし実際に会う機会があったなら、彼は即座に考えを改めるだろうけども。