百合レンジャーvsBLレンジャー   作:クリスタルスカイ

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18 過去編:私はパフェになりたい!

「この手紙を寄越したのはお前か」

 

 茶封筒から便箋を取り出し、ルーカスは問うた。彼は今、平民用居住区の外れにある荒れ地で、恋敵と向かい合っていた。

 便箋にはこう書いてある。「レベッカ嬢を賭け、私と決闘して頂きたい。ジェントル・ゴージャスより」。

 

「――いかにも」

 

 その「ジェントル・ゴージャス」とやらは、かなり奇怪な容姿の持ち主だった。男性だが、高い位置でポニーテールにした金髪のボリュームが異常なのだ。

 要するに、ものすごいロン毛。お姫様と見紛うほどである。女性の超次元生命体でも、ここまで長く艶やかな髪の持ち主は珍しい。

 

 

「こんなことをされては困るな。現に、俺とレベッカは婚約している」

 

 まだレベッカに性癖を拒絶される前、幸せの真っ只中にいたルーカスは、迷惑そうな顔をしてみせた。しかしジェントル・ゴージャスは動じず、「だからこそだよ」と声を張る。

 

「私の性癖は『略奪愛』。既に結婚している、もしくは恋人がいる相手の恋仲を引き裂き、自分と恋仲になるよう仕向けたいという性癖だ。レベッカ嬢に一目惚れしてしまった以上、君に彼女を賭けた決闘を申し込むのは仕方ないと言えるね」

「いや最悪な性癖だな……」

「あ、そうそう。たまに『NTR』性癖と混同されるが、寝取りとの違いは、自分が相手にとって本命になることさ」

「お前、俺の話聞いてる?」

 

 

 げんなりしたルーカスは、さっさと終わらせるべく黒いドライバーを召喚した。腰に装着し、右手にカードキーのようなアイテムを構える。

 当時、彼はまだ周囲から忘れられたり、死んだと思われたりしていたわけではない。したがって虚無の量はさほど多くなく、原典を一つ所持しているのみだった。最近は超次元ライダー系のものに凝っている。

 

「お前みたいな危ない奴は、この俺が抹消する。変身!」

『ルーカス・LOG IN!』

 

 掲げたカードをベルト横にスラッシュすると、金色の輪のような複雑なエフェクトが彼の周囲で発生した。

 

『INNOVATION & CONTROLL! ルーカス!』

 

 

 金と白をメインカラーとした、全体的に丸みを帯びたデザインをアーマーを纏うルーカス。それに対し、ジェントルは「面白い」と呟いて自らの変身アイテムを取り出した。

 

『ゼツメツ・Evolution!』『フルーツ・ホーン!』

 

 硬質な二枚のカードを、ベルトの左右にセット。さらにベルトを操作すると、苺やブルーベリーといった五種の果物型のエネルギーがジェントルの周囲に浮かび上がり、金色の鎧へと変化した。

 

『ザ・パフェ・ライズ! When the five SWEETS cross, the golden soldier GORGEOUS is born!』『Presented by ジェントル!』

 

 現れた五本角の戦士が、短槍を手にする。

 

 

「……ちなみに、なぜフルーツ?」

「私は甘いものが大好きなのだよ。他人の恋人を奪うのと同じくらいにな!」

「比較対象がおかしいだろ」

 

 こんなふざけた男にレベッカを奪われるようなことがあっては、たまったものではない。ここは男らしく、一対一の決闘でケリを付けなければならないとルーカスは思う。

 

「俺が勝ったら、二度とレベッカに近づかないでもらおうか」

「いいや、私は絶対に負けないぞ。何せ、君に勝つために、多少無理して複数の原典を使っているのだからな!」

「何っ⁉」

 

 

 槍を構えて突っ込んできたジェントルの攻撃を、ルーカスは原典の力でホログラムバリアを展開して防いだ。が、ジェントルは止まらない。彼の握る槍が真っ赤な炎に包まれ、高熱でバリアを溶かし始めた。

 

「二種の原典を持っているだけではない。私の性癖『略奪愛』のパワーは、略奪したい対象の、現在のパートナーと戦うときに発動する。歪んだ恋の炎を燃やし、あらゆる攻撃に高熱属性が付与されるのさ!」

「どうでもいいけど自分で『歪んだ恋』とか言うなよ!」

 

 

 バリアが粉砕される寸前で、ルーカスは後方へ跳び退いた。普段の彼はそういうキャラではないのだが、今日は相手が相手だけにツッコミに回ることが増えている。

 

「全く、本当に迷惑きわまりない性癖だぜ。奪いに来られる側の気持ちも考えろ」

「私は、幸せとは何かの犠牲の上にしか成立しないものだと考えている。レベッカ嬢を手に入れるためには君を倒すことが必要だった、ただそれだけだ!」

 

 毅然として言い放ち、ジェントルは再び槍を手に向かってくる。

 

 

『私は、幸せとは何かの犠牲の上にしか成立しないものだと考えている』

 

 ジェントルのこの言葉は、ルーカスに静かな衝撃を与えた。一滴の水が大きな波紋を生むように、じわじわと彼の心を揺り動かした。

 のちに「他殺願望」を叶えるために行動を起こすとき、彼を突き動かす一因にもなっている。

 

 

「犠牲、だと……?」

 

 一瞬ぼうっとしてしまったルーカスの、バリア展開が遅れる。しまった、と思ったときには、ジェントルの短槍の切っ先が自分のベルトに触れていた。なぜか、体が痺れたように動かなくなる。

 

『ジャック・ライズ!』

 

 展開しかけていたバリアが消滅し、代わりに五本角の戦士の周りに光球が浮かぶ。

 

「この原典には、相手の力を一時的に使えなくするばかりか、自分がそれをコピーして使用可能にする能力が備わっている。疑似的な原典の奪掠だ。……レベッカ嬢だけではない。私は君から全てを奪い去ってやる!」

『ジャッキング・ブレイク!』『デリート!』

 

 

 ジェントルの支配下に置かれた光球たちがルーカスを取り囲み、一斉にビームを照射した。金と白の戦士は衝撃で吹き飛ばされる。

 

「くっ……」

 

 かぶりを振り、どうにか立ち上がるルーカス。

 

「分からないな。なぜそこまでして、俺に固執する。そもそも、決闘という手段を選んだ理由もよく分からないんだが」

 

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