百合レンジャーvsBLレンジャー   作:クリスタルスカイ

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第27話 Zの遊戯 / ニンジャは騙されやすい

 月光を浴びてきらめく、カウボーイ風なデザインの金のパワードスーツ。頭部はウエスタンハットのような形状で、アイレンズは星型。いかにもアメリカンで、名乗りの通り「星」をあしらったデザインだ。

 

「ほう、見慣れない顔だな。さては、百合・BLレンジャーの新入りか。 ……待て。来日しただと?」

 

 魔王は怪訝そうな顔をした。

 思えば、このロリーニンジャーとかいう男、喋り方が変だ。おそらく、自己流で日本語を勉強し、時代劇や落語を見まくった結果ではないか。だとすれば、アメリカからはるばるやってきたというのにも納得がいく気がする。

 

(そういえば以前、リボンダーマンと名乗る奴が来日し、百合・BLレンジャーと力を合わせて戦ったことがあったな。奴のせいで次元四天王の一角、ベノムは倒された)

 

 ロリーニンジャーもリボンダーマンの同類なのかもしれない。つまり、百合レンジャーやBLレンジャーの存在を知ったアメリカ在住のファンが、憧れのヒーローのピンチに駆けつけたわけだ。

 

(弱ったな。リボンダーマンのような助っ人がまた現れたとなると、世界征服の道のりはますます困難になるぞ)

 

 体調が万全の状態なら、ヒーロー気取りの人間の一人や二人、魔王の敵ではなかったろう。が、今はお腹の調子が悪い。購入した胃薬もまだ飲んでいない。放送事故みたいな負け方をしてもまずいと思い、魔王はロリーニンジャーを追い返す作戦に出た。

 

 

「先手必勝! 次元大魔王、お命頂戴しやす。その命、神に返して下さいやし!」

 

 エレキギターに似た形の武器「ロリーソードガン」をソードモードにして、ロリーニンジャーが斬りかかってくる。それをひらりとかわし、大魔王は言った。

 

「待て、ロリーニンジャーとやら。俺を倒したければ、まずは俺の手下の百合・BLレンジャーを倒してみよ」

「何っ?」

 

 金ぴかの忍者の動きが、ぴたりと止まった。明らかに動揺している。

 

「馬鹿も休み休み言って下さいやし。あっしの大好きなヒーローが高次元生命体の手下だなんて、そんなアホなことがあるわけがない!」

「『あり得ない』なんてことはあり得ない。お前たち人間は、俺の作戦にまんまとはまっていたというわけだ」

 

 嘘である。この男、次元四天王を全員倒してきた仇敵たちのことを、自分の手下だと言い張っているのである。

 

「奴らは俺の作り出した偽物のヒーローだ。ヒーローがいると信じ込ませれば、愚かな人間たちは地球の平和をヒーロー頼りにして、自分では何もしなくなってしまうからな。そこを狙う作戦なのだ」

 

 どうだ、と大魔王は内心得意になっていた。咄嗟に思いついたにしては、なかなかよくできたハッタリだ。この調子でロリーニンジャーに揺さぶりをかけ、戦闘意欲を失わせてやる。

 

 

「……うーん、そんなことありやすかねえ?」

 

 はたして、ロリーニンジャーの反応は微妙だった。

 

「ウ〇トラマンだって地球防衛隊のサポートがあるからこそ怪獣と戦えるわけで、ヒーローがいるから怠け者になるって理屈は分かりやせんねえ。むしろ、ファンとしては積極的にサポートしてあげたいでございやす。日本が大変だってのに、アメリカでじーっとしててもどうにもなりやせん」

「しかし、皆が皆、防衛隊に入って戦うわけじゃないだろう」

「いやいや、直接戦うだけがサポートじゃありやせん。ピンチに陥ったとき、市民たちに励まされて復活するヒーローってのは王道でございやす。『俺は負けてはいない。たまたま風が吹いただけだ』ってやつでございやすね」

 

 次元大魔王は忘れていた。ロリーニンジャーは根っからのヒーローオタクであり、ちょっとやそっとでは騙すことができない。聞いてもいないのに、べらべらとヒーロー復活シーンの事例を並べ立ててくる。

 

 

「とにかく、だ。俺たちの作戦がお前から見て成功しているか、はたまた失敗しているか、そんなことはどうでもいい。重要なのは、百合・BLレンジャーが俺の操り人形であるという事実だけだ」

「何を根拠にそんなことを……」

「これを見よ!」

 

 大魔王は一枚の写真を取り出した。ロリーニンジャーはそれを素直に受け取り、仮面の下の表情をひきつらせた。

 

「ば、馬鹿な。次元大魔王が、百合・BLレンジャーの皆さんと一緒にプリクラを撮っている。しかも、満面の笑みで!」

 

 プリクラの中央には「ズッ友だよ♡」という文字が書かれており、魔王とヒーローたちは肩を組んでニッコリ笑っていた。これには、さすがのロリーニンジャーも開いた口が塞がらない。

 

「まさか、本当に皆さんが魔王と通じていただなんて……」

 

 ショックが大きすぎて、彼はプリクラが偽物だという可能性を考えなかった。

 

 

「ようやく理解したようだな、ロリーニンジャー。お前が今まで信じてきたものは、すべて幻だったのだ。ヒーローを支えたいというお前の気持ちも、全くの無駄だ!」

「お、おのれ、次元大魔王。よくもあっしの心を弄びやしたね!」

 

 ロリーニンジャーは激昂して、再び斬りかかってきた。今度も大魔王はひらりと避ける。

 

「落ち着け、落ち着け。言っただろう、俺を倒したければまずは百合・BLレンジャーを倒せと」

「しかし、たとえ偽物だったとしても、憧れのヒーローを斬るだなんてできやせん!」

 

 ええい、面倒くさいオタクだ。好きな俳優や声優が不祥事を起こしても、その人が演じたキャラまでは嫌いにならないタイプのオタクだ。――いや、演者とキャラを区別できるのは良いことなんだけどね! 魔王からすると厄介だというだけの話で!

 

 

「ならば、こういうのはどうだ」

 

魔王はちょっとイライラしてきたが、表に出さないように気をつけた。赤いリボンに全身を包んだヒーローと撮ったプリクラを、懐から取り出して渡す。

 

「かつて、百合・BLレンジャーに新たな力を授け、勝利へ導いたアメリカのヒーロー・リボンダーマン。奴はいわば、百合・BLレンジャーの師匠のようなもの。俺の右腕でもある。憧れのヒーローを倒したくないのなら、まずはその師匠から斬ってみよ」

「リボンダーマンを斬る?」

 

 ロリーニンジャーは顎に手を当てて考え込んだ。

 

「ううむ。あっしは日米両国のヒーローを愛する身ゆえ、できればどっちも斬りたくはありやせん。……が、戦隊ヒーローを七人斬るよりは、リボンダーマン一人を斬った方がまだ精神的ダメージは少ないでやんすね」

 

 いや、人数の問題なのかよ。大魔王は思わずズッコケそうになった。色々とツッコミどころが多い。

 

 

「よし、分かりやした。来日したばかりではございやすが、至急アメリカに帰還し、まず最初にリボンダーマンを討ってまいりやす。魔王を討伐するのは、その後にしやしょう!」

 

 ぽんと手を叩き、ロリーニンジャーは踵を返した。変身を解き、航空会社かどこかへ電話して、さっそく帰国の便を手配している。魔王を警戒する素振りも見せない。

 

「ふう。相手が馬鹿で助かった」

 

 これでリボンダーマンとロリーニンジャーが戦い、どちらかが倒れてくれれば万々歳だ。自分の手を汚さずに邪魔者を排除できるなら、それに越したことはない。

 さて、早く本拠地に戻って、胃薬を飲まなくては。冷や汗を拭い、大魔王は闇に溶けるように姿を消した。

 




今回、ご迷惑をおかけした作品
・鋼の錬金術師
・ウルトラマンジード
・仮面ライダーW
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