百合レンジャーvsBLレンジャー   作:クリスタルスカイ

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23 エロスの地獄戦法

 そこへ、猛スピードで一台のタクシーが突っ込んできた。ツカサたちの目の前で急ブレーキをかけて停止する。

 

「ありがとう、運転手様。少ないですけれど、取っておくのですわ~!」

 

 助手席から、後部座席から、SMプレイの女王様然とした衣装を身につけた三人の女性と、全身黒タイツで頭に赤い蝋燭を付けた下僕一名が降り立つ。相変わらず移動手段がタクシーなのはだいぶアレだが、なかなかどうして颯爽とした登場だった。

 

「お待たせしました。ヒーローの出番ですわ~!」

 

 レッド・クイーンは百合・BLレンジャーへ振り返り、笑顔で告げた。

 

 

「お前さんたちは確か、特命女王戦隊ゴークイーンズ&タイツマン。今さらのこのこ出てきて、何かできるとでも?」

「できるからこそ、今ここに立っているのですわ~!」

 

 リボンダークモノス隊長の煽りを受け流し、レッド・クイーンはパレット型専用武器を召喚した。

 

「おっと、何だいそれは」

「『クイーンパレット』ですわ~! SMジューシーミキサーでグリイザに全く歯が立たなかったことから教訓を得て、攻撃一辺倒ではないマルチウェポンを密かに開発していたのですわ~!」

 

 

 なお、厳密には、BL警察と来部美明日の技術協力を得て開発していた。ゴークイーンズらはバリバリの文系なので何も分かっていない。

 

「行きますわよ~! 『SMカラーチャージ』! SとM、二つの力を一つに! イエロー! ブルー!」

 

 パレット付属の筆のようなタッチペンのような物体で、レッド・クイーンはパレットの二色のボタンに触れた。そして、ツカサたちに告げる。

 

「私たちのこの新技には、対象の傷を癒す力がありますわ~! 必殺技がドレッドに命中した直後に私がヒョウガさんを回復させますから、皆様は思いっ切り戦って下さいですわ~!」

「わ、分かったわ」

 

 

 了解したツカサだったが、一抹の不安はあった。もしも、回復させるタイミングがズレたらどうなる? 自分たちの撃った技のせいでヒョウガが重傷を負ったら、取り返しのつかないことになるかもしれない。

 

「……一応聞くけど、大丈夫なんでしょうね? その作戦」

「信じて下さいまし」

 

 女王たちは、いつになく真剣な表情だった。

 

「私たちは今まで、ここぞという場面でことごとく瞬殺されてきましたわ。けれど、いつまでも仲間の役に立てないのはご免ですの。今日こそはヒーローの一員として、役目を果たさせていただきますわ!」

「……何をごちゃごちゃと。ドレッド、その邪魔な奴らもまとめて片付けてしまえ!」

 

 

 痺れを切らしたBLフランスの指示で、ドレッドは再びベルトにカードを読み込ませた。

 

『ドレイン』『レプリ・零の衝撃!』

 

 一方、ツカサたちは顔を見合わせ、こくりと頷いた。

 

「他に手はないわ。信じましょう、ゴークイーンズたちを!」

「おうッ!」

 

 まず、推し推し砲を召喚。皆のオーラパワーをそれに全力集中させて注ぎ込み、小型飛行機型に変形させる。剣を構えて突進してくるドレッドへ、照準を合わせた。

 続いて、カイリとツカサは一旦カノンから離れると、百合ブラック、BLホワイトへ強化変身。手と手を繋ぎ、技を放った。

 

 

「――推し推しカノン、発射!」

「「百合&BL・マーブルスクリュー‼」」

 

 光を帯びたエネルギー弾と、螺旋状に融合した白と黒の稲妻が、黒の戦士の腹部へ炸裂する。ベルトを掠めたらしく、ドレッドのドライバーが衝撃で弾き飛ばされた。

 

「今ですわ!」

 

 ヒョウガが変身解除された瞬間、レッド・クイーンがパレットを手に唱える。

 

「癒しの力、アゲて行きますわ~!」

 

 パレットから放たれた眩しい輝きが、気絶して崩れ落ちそうになっていた青年を包み込んだ。みるみるうちにヒョウガは意識を取り戻し、倒れる寸前で踏みとどまる。

 

 

「俺は、一体……」

 

 血色も明らかに良くなっているし、外傷もない。ゴークイーンズの作戦は見事に成功したようだ。女王とその下僕は、ハイタッチして喜び合っている。

 

「どうだ、BLフィーバーJ! 作戦なんてろくに立ててなかったけど、何とかなっただろうが。これでもうヒョウガを人質にはできないぜ!」

 

 自分は推し推しカノンをぶっ放しただけなのにドヤ顔しているカイリを前に、BLジャパンは「ぐぬぬ」と悶えていた。

 

「調子に乗るな。ドレッドの力は、強制変身だけではない!」

 

 

 弾き飛ばされたベルトを拾い、自ら装着。ヒョウガのときと同様のプロセスを踏んで、警告音を響かせながら漆黒の獣の戦士へ変わった。

 

『ドレッド・《和式》!』

 

 おそらく、BLジャパンが変身しているから「和式」なのだろう。BLフランスが変身すれば「洋式」、ミス・BL・アメリカなら「米国式」とかだろうか。まあ、いずれにせよ微妙なかっこよさである。

 マフラーの色が白から赤に変わったことを除けば、外見の違いはない。ドレッドは同胞に手ぶりで合図し、百合・BLレンジャーを包囲させた。

 

 

「人質が使えなくなったから何だというのだ。この戦力差、覆せるものなら覆してみろ!」

「人質を解放しただけではありませんわ~! 私たちもいるのですわ~!」

「俺もいる。借りは返すぞ、BLジャパン! ――『騎士転生』!」

 

 負けじとゴークイーンズとヒョウガが声を張り上げたのも束の間、両勢力は真っ向から激突した。

 

 

 リベンジに燃える零騎士を迎え撃ったのは、やはりドレッド・《和式》だった。

 黒と金の鎧を纏ったヒョウガが、ゼロライアットで鋭い斬撃を繰り出す。バックステップでそれをかわすと、ドレッドはベルトにカードを読み込ませた。

 

『ドレイン』『レプリ・BLフォース!』

 

 五つのバトンが組み合わさったような形状のバズーカを召喚し、両手で構える。そこから破壊光線を発射し、零騎士を派手に吹っ飛ばした。

 

「くっ……」

 

 ビルの瓦礫の中に埋もれかけ、よろよろと立ち上がるヒョウガ。BLジャパンは彼を嘲笑した。

 

 

「何だ。回復したというから少し警戒していたが、大したことはないな。早いところお前を片付けて、あの女王様方にも退場してもらうとしよう。そうすればヒーラーは不在だ」

「回復技を使える者を倒してから、また誰かをドレッドの強制変身をさせるつもりか」

「その通り」

 

 つかつかと零騎士へ歩み寄りながら、BLジャパンはバズーカに軽く触れた。するとバトンが長く伸びて槍のようになり、彼の手に収まる。

 

「お前たちに秘密結社エロスの進撃は止められない。未来永劫、我々は戦隊どもを圧倒し続け、いつの日かまた超次元生命体の助力を得るのだ! 死ね、零騎士!」

 

 

 槍を両手で握ったドレッド・《和式》が、渾身の突きを放ったそのときだった。

 

「――ヒョウガくん!」

 

 遠くから、聞き慣れた愛しい声がした。はっと辺りを見回せば、瓦礫の遥か向こうにサヤの姿が見える。豊かな胸の前で両手を組み、祈るように、泣きそうな顔で自分を見つめている。

 

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