まさか、またタワマンから下界の様子を見ていて、居ても立っても居られなくなって追いかけてきたのだろうか。というか、たぶんそうなんじゃないかという気がする。
「ごめん。うち、やっぱり心配で、来てもうたわ。……ヒョウガくん、頑張って! そんな卑劣な人らに、絶対に負けたらあかん! 皆を守って!」
「サヤさん……!」
今日の自分は、まるで良いところがない。操られ、先輩方に迷惑をかけ、どうにか解放されたけれど今度は敵に大苦戦している。そんな自分を、彼女は一生懸命に応援してくれている。危険を顧みず、戦いの場に赴いて。
そのとき、奇跡は起こった。ヒョウガの全身に力が満ち溢れ、回復技を受けたわけでもないのにダメージが回復していく。
年上であるサヤに対する愛情がより深まったことで、年上性癖のパワーがさらに引き出されたのだろうか。否、それもあるかもしれないが、今最もヒョウガを強く支えていたのは、彼女の一生懸命な応援だった。
(――感じる。サヤさんの優しい想いが、俺の心の中に流れ込んでくる。まるで、風が強く風車を回すように!)
繰り出された槍を両手で掴み、ヒョウガはドレッドの攻撃を間一髪で防いだ。溢れ出す力で槍をへし折り、BLジャパンを動揺させる。
「何⁉ パワーを上げたでも言うのか。しかしなぜ、どうやって?」
「人の想いの力で、ヒーローは強くなれる。俺はその力で、皆を守る!」
零騎士の放ったパンチを喰らい、後ずさるドレッド。劣勢を意識したのか、何枚ものカードを召喚して自身を強化し始めた。
「ふざけるな。我らは負けない。この力でお前を倒す!」
『ドレイン』『ドレイン』『ドレイン』『ドレイン』『ドレッド・ジャパンブレイキング!』
極限まで強化した状態で、ベルト操作により必殺技も発動。BLジャパンの脚部に、溶岩のような凄まじい熱量の破壊エネルギーが纏わりついた。
「力は、誰かを守るために使うものだ!」
ヒョウガは吠え、長剣をショットガンへ変形させた。四種のボタンを連続で押し、こちらも必殺技を発動する。
『マキシマム・ゼロ・サイクロン!』
竜巻上のエネルギー波は、回し蹴りを放ったドレッドはおろか、直線上にあるすべての敵を殲滅しかねない、でたらめな破壊力を秘めていた。勝敗は明らかだった。BLジャパンはほんの一瞬で変身を強制解除されて気絶し、不幸にもエネルギー波に巻き込まれたリボンダークモノス数名ものびている。
「……何とか勝てたよ、サヤさん。ありがとう」
遠くで胸を撫で下ろしている恋人へ、ヒョウガは手を振った。
「お前さんたちの相手はこの僕だ」
その頃、ゴークイーンズを相手取っていたのはリボンダークモノスの元隊長であった。彼はリボンスレイヤーに専用キーを差し込み、何度もガチャガチャと回し始めた。
「この強化服には、隊長クラスだけが使用できる裏コマンドがある。負荷は大きいが、短時間だけ武器を装備してパワーアップできる裏技さ。こんな風にね!」
白い鎧の背に、タランチュラの脚を模した武装が追加された。超次元ライダーリボンズの「オクトパス」リボンミックスに似ているが、あれよりも足の本数が少し多い。本数が多いということはすなわち、手数も上だということだ。
「オーッホッホッホ! パワーアップできるのは、あなたの専売特許ではありませんわ~!」
しかしブルー・クイーンは高らかに笑い、「ゴークイーンズ・デリシャスタンバイ! パーティ・ゴー!」と唱えた。三人の女王が赤、青、黄のドレスアーマーを重ね着する。リボンやフリルがついた可愛らしいデザインで、イエローのものはチャイナ服に近い。
「へえ。なかなか綺麗だが、そっちの下僕さんは強化変身しないのかい?」
なぜか一人だけ連れて来られているビート・タイツを指差して、元隊長は問うた。
思えば、初期のゴークイーンズは女王三人から成り、「タイツマン」という三人組を連れていた。しかし、「より原作に寄せるため」とかいう意味不明な理由で、タイツマンは一人リストラされてビート・タイツとスタッグ・タイツの二人が残った。(女王いわく「今日はもう一人はお休み」らしかったが、その後一度も三人目のタイツマンが出てこないところを見るに、事実上のリストラである。)
しばらくは出番があったりなかったりしたゴークイーンズ。女王三名は強化フォームを得たが、下僕二名には特に何もなく、パワーインフレに付いていけなかったためか出番も減る一方だった。
で、久々に下僕が出てきたと思ったら、片方だけだったというわけだ。
「しますわ~!」
ビート・タイツに代わってブルーが答える。
「私たちが強化変身できるようになったきっかけは、食べ物への愛情でしたわ。けれど、紆余曲折を経て百合・BLレンジャーへ正式加入し、ヒーローとして成長したことで、さらなる力を得ましたの。先ほど、レッドがクイーンパレットを使いこなせたのもその証ですわ~!」
もっと言うなら、虚無英雄会を打倒した後の飲み会の時点で既に、その兆候はあった。
「おっと……」
想定外の展開に、元隊長は仮面の下で顔が引きつっていた。そんなことはつゆ知らず、女王三名と下僕一名は声を合わせて叫んだ。
「「『ひろがる・SMチェンジ』!」」
レッドとブルーのドレスアーマーは、メインカラーは赤と青そのままに、空に浮かぶ雲をイメージしたような白が随所に差し込まれる。イエローはもはやチャイナ服ではなく、ピンクをメインとしたへそ出しのドレスだ。目元にはアイシャドウが追加されている。
そしてビート・タイツも、オレンジ色の衣装に身を包んだ。男らしいというよりは少年らしい、可愛らしいデザインである。
「無限に広がる、青い空! ブルー・クイーン!」
「ふわり広がる、優しい光! レッド・クイーン!」
「天高く広がる勇気。ビート・タイツ!」
「アゲて広がるワンダホー! イエロー・クイーン!」
「「ひろがるスカイ・ゴークイーンズ+一名!!」」