ポーズを決めて名乗った四人を前に、元隊長は唸った。
「小賢しいね。……『緊縛武装・リボン一閃』!」
必殺技を発動。タランチュラ型武装に破壊エネルギーを集め、リボンスレイヤーとともに振るわんとする。
「行きますわよ、皆さん!」
対するゴークイーンズと下僕一名も、息の合った連携を見せた。散開してリボンダークモノスの技を回避すると、次々に必殺技を繰り出していく。
「『ヒーローガール・SMショット』!」
レッド・クイーンが両手から放った半透明の光弾が、元隊長の装甲にヒットした。
「『ヒーローガール・SMパンチ』!」
高く跳び上がったブルー・クイーンが、リボンダークモノスへ高速で接近。青い光を纏った強烈なパンチを叩き込んだ。
「『ひろがる・SMアタック』!」
晴れてタイツ以外の衣装を着ることができたビート・タイツには、新たに飛行能力が備わっていた。飛翔し、速度を上げながら橙色の破壊エネルギーに全身を覆い、勢いよく体当たりを見舞う。
「とどめですわ~! 『ひろがる・SMプレス』!」
最後にイエローがジャンプし、大きな蝶々の形のエフェクトとともに、蝶々ごと敵を踏みつけるような必殺キックを放った。
怒涛の四連撃を浴びたリボンダークモノスは爆発に呑まれ、「澄みきった……」と呟いて変身解除。力なく倒れ込んだ。
「やりましたわ~!」
「私たちの勝利ですわ~!」
またハイタッチし合っていた女王たちだったが、不意に強化変身が解除されて「おやっ」という顔をした。三人の女王は「デリシャスパーティ・ゴークイーンズ」の状態に、下僕はタイツ姿に戻っている。
元々ゴークイーンズは、不完全ながらも何種類かの原典を扱っている節があった。一度の強化変身ならまだしも、二段変身をするとさすがに虚無がキャパオーバーしてしまったのかもしれない。
『お前たちのことは調査済みだ、ゴークイーンズ。複数の原典の要素を少しずつ持っているにもかかわらず、そのことごとくを使いこなせていない馬鹿野郎だってなァ。SMプレイ性癖の能力も、「鞭を召喚して暴れる」だけだから普通に弱い。――残念だったな。俺の方が上だ!』
かつて超次元生命体キルバスにこう言われたくらいには、特殊な存在だ。
「もしかして、一度限りの強化変身ですの?」
「私にも分かりませんわ~」
イエローに聞かれて、ブルーは曖昧な笑みを浮かべた。
「でも、練習すればまたできるかもしれませんわよ? 私たちの目の前には、無限の可能性が広がっているのですわ~!」
さて、他の面々はというと、残りのBLフィーバーJ、およびリボンダークモノス部隊を一掃している最中だった。
「世界各地の踊りの名手だか何だか知らねえが、お前らと俺たちじゃ戦いの経験値が違違うぜ!」
「薔薇だとか緊縛だとか……他人の性癖をコピーしているだけのあんたたちに、ガチ勢のあたしたちは絶対負けないんだからっ!」
百合ブラックとBLホワイトの近接戦闘による猛攻で、BLフィーバーJは圧倒されている。
「BL・一撃ストライク!」
「百合・イタダキストライク!」
蜘蛛の戦士たちはというと、ケイイチロウらによるVSチューナーの集中砲火を浴びて追い詰められていた。
やがて寄せ集まるようにして一箇所へ追いやられた敵へ、戦隊一同は「チェンジスタンバイ!」の掛け声でVS・スワットモードを装着して挑む。大型マシンガン・VSリボルバーを構え、狙いを定めた。
「「ストライク・アウト!!」」
一斉に破壊光弾を撃ち出し、悪の残党を豪快に吹っ飛ばす。
「「悲鳴を上げろ~!!」」
「「ぎゃあああああ~っ⁉」」
敵の原典に少し影響されたのか、訳もなく悪役っぽい台詞を言いたくなってしまった百合・BLレンジャー。そして、素直に悲鳴を上げた秘密結社エロスの人たち。
かくして、秘密結社エロスの人質作戦は失敗に終わった。今度こそ本当に、虚無英雄会の残党は皆逮捕された。
戦え、百合レンジャー! 頑張れ、BLレンジャー! 人々の想いが、君たちをこれからも強くする!
BLフィーバーJ(二代目)と零騎士ヒョウガの戦いの前日。意外な人物が、ヒョウガの恋人の自宅を訪ねていた。
「サヤ、元気にやっとるかい?」
会うのは元夫の葬式以来だろうか。人懐っこい笑顔を浮かべた父は、タワマンの一室に上げてもらって、少しそわそわしているようだった。
「うんっ。うち、今すごく幸せやわあ」
父に似て細い目をさらに細くして、サヤは微笑む。リビングへ案内し、ソファに座るよう勧めた。
そろそろ来る時間だと思い、既にポットにお湯を用意している。ささやかな歓迎の準備はできていた。
「お父さん、はい、アップルティーどうぞ」
「おっ。おおきに」
娘の差し出したカップを嬉しそうに受け取り、さっそく一口飲んだ。アップルティーは父の好物で、サヤが実家暮らしだった頃は、母が淹れたそれに舌鼓を打っていたものだ。
「……美味い。この味、母さんのアップルティーにそっくりや」
「せやろ? 上京してから、色々と料理の研究しとるんよ~」
しみじみと呟いた父に、サヤは照れくさそうに言った。
「ところでお父さん。ずいぶん急に来はったけど、今日はなんか用事でも?」
「おう、そのことなんやけどな」
カップをテーブルに置き、父は居住まいを正した。
「旦那さんが亡くなってから、もう半年以上経つやろ? サヤは元気にしとるやろか、落ち込んだりしてへんやろかってなあ。一度考え出すと心配になってしもて、新幹線に飛び乗ったさかい」
「亡くなったことは悲しいけど、でもそれ以上に後悔があるわあ。何でもっとあの人の気持ちに応えてあげられんかったんやろって。うち、あんまり愛のない結婚をしてしまったから」
父の向かいに座り、サヤが目を伏せる。
「お前のしたことは間違っとらん」
一方、父親は首を振った。
「隠してるつもりかもしれんけど、父さんは分かっとる。……サヤ、お前はうちの家が貧乏なのを気にして、少しでも良い条件の相手と結婚できるよう頑張ったんやろ? 父さんと母さんを安心させようとして、たまたま見つかった相手が年上だっただけのことや。気にするな」
「それは」
はっと上げた視線を宙にさまよわせ、サヤは口ごもった。
彼女の実家は、京都北部の小さな町にある。決して裕福とは言えない環境下で、父と母は自分を一生懸命育ててくれた。その恩は忘れないし、それに報いようとしていたのは事実である。
「ま、とにかく、前向いて生きていこや。サヤはまだまだ若い、人生はこれからやで」
アップルティーをもう一口飲み、父は暗くなりかけた雰囲気を明るくするように言った。
「幸か不幸か、亡くなった旦那さんから相続したものが色々あるようやし、しばらく生活には困らんやろ。無理に働かんとのんびりして、じっくりゆっくり、今後のことを考えれば……」
「あっ、そうや、お父さんにはまだ言ってなかったわあ。うち、今仕事しとるんよ」