百合レンジャーvsBLレンジャー   作:クリスタルスカイ

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28 カードゲームになった男

 ある日のこと。ツカサとカイリは、ムーヴォを連れてホビーオンに来ていた。

ホビーオンとはハードオングループが経営する中古の玩具屋で、近年はトレカの取り扱いもかなり増えている。今日は、ムーヴォが「カードゲーム大会に出るます」と言うので連れてきた。

 なお、二十二年後の未来から来たムーヴォは既に未来へ帰って行ったため、今連れてきているのはもちろん現代のムーヴォである。

 

 

 彼女と一緒にカウンターの列に並び、大会受付を済ませる二人。

 

「それにしても、すごい人ね」

 

 店内を見渡し、ツカサは感嘆の声を漏らした。

 前にもハードオンのホビーコーナーを覗いたことはある。が、トレカの対戦スペースが何十席も用意されてはいなかったし、年齢問わず大勢が参加する大会が開かれてもいなかった。要するに、店の規模感がまるで違うのだ。

 

 

「たぶん、今まで行った店は公認店じゃなかったんじゃね?」とカイリ。

「何よ、公認店って」

「トレカを発売している企業から、公式大会をやることを許可されてる店のことだ」

 自分ではカードを買わないくせに、彼はやたら詳しい。十中八九、ハードオンの常連さんから教えてもらったのだろう。ドヤ顔しているが他人の受け売りである。

「でも、公認店じゃなくても非公認大会を開くことはできるんじゃないの? 何でここまで大会の参加者数に差が出るのよ」

「それはなツカサ、公式大会にしかないメリットがあるからだぜ」

 

 列がなかなか前に進まないのをいいことに、カイリの豆知識披露は止まらない。

 

 

「自分がプレイヤーの立場で考えてみろよ。プレイヤーにとって、大会に出るモチベーションは何だ?」

「えっと、他のプレイヤーとの交流が楽しいから、自分の腕前を試したいから……とか?」

 

 学生の頃に部活で大会に出たときのことをちょっと思い出しながら、ツカサは答えた。

ちなみに当時は剣道をしていたのだが、BLレンジャーは銃主体で戦っているため、経験が仕事に活きた試しはない。とりあえず体力と精神力は養われたんじゃないかと思います。

 

 

「それも確かにあるだろうけど、やっぱりお目当ては優勝賞品や参加賞、その他諸々の得点だ。この内容が、非公認と公認じゃ全然違う。非公認店の場合は、余っている在庫の一部を景品にするくらいのことしかできない」

「じゃ、公認はどうなのよ」

「いわゆる『プロモカード』……大会に出て成績を残すことでしか手に入らない、レアなカードを景品としてゲットできる。他にも、来月発売される新弾を優先的に買える権利がもらえたり、公式大会でしか買えない限定グッズなんかがあるぞ」

「何となくだけど、分かってきたわ」

 

 ため息をつくツカサ。

 

 

「つまり、そういう限定品をゲットして高値で売りさばこうって輩も中にはいる、と。だから参加者も多いってことね」

「そういうことだ。この大会も、限定プロモカードが景品になってるらしいぜ。何でも、ものすごく希少価値があるんだとか」

 

 カイリの解説が一通り終わったところで、やっと自分たちの順番が来た。受付用紙には出場者のハンドルネームを書く欄があり、ムーヴォは少し考えてから「ヒーローの娘」と記入した。育ての親としては誇らしいのだが、いささか個性的すぎるかもしれない。

 

 

「なあ、それはやめといた方が良いと思うぞ」

「……?」

 

 不思議そうな顔で見上げてくる少女に、カイリは言う。

 

「いいかムーヴォ、大会の運営スタッフに呼ばれても恥ずかしくないハンドルネームにするんだ。もし優勝なんかしちゃったら、その名前が店のSNSなんかで公表されるぜ」

「ムーヴォ、恥ずかしくないます」

「お、おう……」

 

 結局ムーヴォは説得に応じず、スタッフのお姉さんから「『ヒーローの娘』さ~ん!」と何度か呼ばれていた。その度に、大きな声で「はい!」と、自信たっぷりに返事をしている。

 

 

 子供が大会に出ている間、親は割とマジで暇である。ツカサに関してはルールも何も分からないので、遠巻きに眺めていても、ムーヴォが優勢なのか劣勢なのか判断することすらできない。

 

「ねえ、あんた。ムーヴォちゃんがやってるのって、何て言うカードゲームだっけ?」

「何だったっけな。ゼロがつく名前だった気がする」

 

 カイリは頭を捻った。

 

「てか、その『あんた』呼び、いい加減にやめないか? 俺たちも長い付き合いなんだし、そろそろツンデレのデレの部分が前面に出ても良い頃だと思うぜ。『あなた』って呼んでくれよ」

「……べ、別に、外では『あなた』なんて呼んであげないんだからねっ!!」

 

 

 家では呼ぶのかよ、とツッコみたくなったカイリだが、相方が気恥ずかしそうにもじもじしているので言葉を吞み込んだ。

 

「――『ゼロカード』ですよ、先輩方」

 

 と、そこに、夫婦漫才に割って入った者がいる。

 

「ヒョウガとサヤさんじゃねえか。奇遇だな」

 

「お久しぶりです」と会釈する青年と、その横で微笑む、高身長で狐目でスタイル抜群な美女。大会に参加しに来たわけではなさそうだが、なぜ今日ここに来たのだろう。

 

 

「実はゼロカードというのは、最近できたばかりのカードゲームなんです」とヒョウガ。

「虚無英雄会との戦いを経て、市民の間で零騎士人気が爆発したらしくて。それで、零騎士にあやかるような形でトレカを作ろうということになって、僕の実家に企業案件が来たんです。断る理由も特になかったので、戦隊のイメージダウンに繋がる表現をしないことを条件にして了承しました。最初はどうなることかと不安でしたけど、思ったより人気みたいで良かったです」

「うちが監修して、ヒョウガくんのかっこいいイラストをたくさん描いてもらえることになったおかげかもなあ」

 

 サヤも幸せそうな表情をしている。

 

「今日はゼロカード始まって以来一番大きな大会があるって聞いて、ヒョウガくんと様子を見に来たんよ~」

 

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