百合レンジャーvsBLレンジャー   作:クリスタルスカイ

276 / 394
29 ガンガン・ギギン!ライノス&フェニックス

 二人によると、ゼロカードは「山札の残り枚数=ライフポイント」で、相手のそれをゼロにしたら勝ちだそうだ。他のカードゲームでも山札のカードがなくなって敗北する「ライブラリアウト」は時折発生するが、ゼロカードの特異な点は、ライブラリアウト以外の勝ち方が存在しないことである。

 一般に、カードゲームにおけるライブラリアウトは例外的な勝ち方だ。たとえば、相手にドローを強制させるカードを繰り返し使うことで、山札切れを起こさせて勝つといった手法になる。こういった戦い方は正攻法ではなく、相手によっては嫌がられることもあるため、友情を壊さないよう注意すべきだろう。

 

 

 ところが、ゼロカードはまさにそのライブラリアウトを唯一の勝利条件として設定しているというのだ。

 

「プレイヤーはモンスターカードとマジックカードを使って、相手の山札を削ったり、逆に自分の山札を増やしたりできるんです。あんな風に」

 

 手前の卓で対戦している学生たちを手で指し示し、ヒョウガは言った。二人とも真剣な顔つきで、一手一手慎重に考えてプレイしているのが伝わってくる。

 

 

「……私のターン、ドロー! 手札からマジックカード『上級降霊術』を発動し、その効果により、デッキから『上級悪魔サタン』を場に出します。さらにサタンの効果で、墓地から悪魔族モンスター二体を場に出すことができます。そしてサタンとその眷属たちで、貴公のデッキにダイレクトアタック。『ロスト5』、『ロスト2』,『ロスト3』……合計で十枚を墓地に送ってターンエンドです!」

「吾輩のターン、ドロー! 手札からマジックカード『巨大樹の復活』を発動。一ターン前にデッキから墓地に送られたカードの中から、巨人族モンスター一体を場に出す。吾輩が選ぶのはもちろん、我が相棒『雄大巨人ゴリアテ』! ゴリアテの効果でサタンを破壊し、ゴリアテでデッキにダイレクトアタック。『リカバー7』で、吾輩はデッキ枚数を七枚回復してターンエンドだ!」

 

 

 彼らの喋り方が二十世紀青年やガン・メン・Q(あるいはワラカスフンド)に似ているのは置いておいて、青年は説明した。

 

「今ので何となく分かったんじゃないかと思いますけど、『ロスト○○』とあるのが相手のデッキを○○に書いてある枚数分だけ『墓地』――つまり、使い終わったカードを置く場所へ送る能力。『リカバー○○』は、自分の墓地にあるカードを○○の枚数分だけ墓地からデッキへ戻し、デッキ枚数を回復させる能力なんです。前者が攻撃、後者が防御用の能力で、相手のデッキにダイレクトアタックするときに発動します」

 

 

「ちなみに、相手の場にモンスターがいても、プレイヤーは攻撃対象をモンスターにするかデッキにするか選べるらしいわあ」とサヤ。監修しているだけあって、ある程度の知識はあるようだ。

 

「モンスターに攻撃した場合は、カードに書いてあるパワーの低い方が破壊されて墓地に置かれるんやて」

 

 

 さっきのプレイヤーらが悪魔族で「ロスト」効果、巨人族で「リカバー」効果を使っていたところを見るに、どうやら種族ごとに攻撃寄りだったり防御寄りだったりして、それぞれ特色があるらしい。

 

「……なるほど。ちょっとずつ分かってきたわ」

 

 さて、とツカサが改めてムーヴォの座っている卓を見ると、少女はおじさん相手に猛攻を仕掛けていた。ムーヴォの山札はまだ二十枚以上あるのに対し、おじさんは残り数枚である。

 

 

「マジックカード『聖獣招待/ガンガン・ギギン』を使うます。効果で、手札から『聖獣・ライノス』『聖獣・フェニックス』を出すます。二匹のモンスターでデッキにダイレクトアタックして、『ロスト4』と『ロスト3』を発動するます!」

「ぼ、僕のデッキはこれでゼロです。参りました……」

「対戦あざざます」

 

 ぺこりとお辞儀して、「ヒーローの娘」ことムーヴォは無事、一回戦を突破したようだった。

 

「……もしかしてうちの子、結構強い?」

 

「かもしれねえな。さすがはヒーローの娘」

 育ての親たちは顔を見合わせ、ふふっと微笑んだ。

 

 

「しかし、本当に強いですね。ムーヴォちゃん」

 

 ヒョウガは呟いた。

 二回戦以降も少女の快進撃は続き、マジックカード「ガンガン・ギギン」で強力なモンスターを出しまくる戦法で相手を圧倒している。

 

「これならひょっとして、優勝者に贈られるプロモカードを貰えるかもしれませんよ」

「噂のプロモか」

 

 声をひそめ、カイリが尋ねる。

 

 

「なあ後輩。すごくレアなカードが貰えるって聞いてるけど、実際どうなんだ?」

「これはまだ公式発表されてない情報なので、オフレコでお願いしますね。……何でも、世界に百枚しかないカードのうちの一枚なんだとか。零騎士ヒョウガの限定イラストが描いてあるそうです」

「ひゃ、百枚⁉」

 

 思わず素っ頓狂な声を上げそうになったカイリの口をツカサが慌てて塞ぎ、「あんたオフレコの意味分かってんでしょうね⁉」と一言。

 ニュースで見たことがある。世界に一枚しかないカードがオークションにかけられ、熱狂的なファンが数億円もの金額で落札したと報道されていたのを。

「世界に百枚」であればさすがに億はつかないだろうが、それでも下手したら数百万、数千万つく可能性はある。幼い子供に持たせるには危険すぎる代物だ。

 

 

「もしムーヴォちゃんが優勝しちゃったら、あたし、すぐに売るように言おうかな。そんな高額なものを自宅保管していたら、悪い人に狙われそうな気がするわ」

「モゴ! モゴゴゴ!(訳:いやツカサ、冷静に考えろ! 余所の大会で優勝した奴らもそう考えて、さっさと手放そうとするに違いない。そうすると、皆が一斉にプロモカードを売りに出すから市場への供給量が増え、一枚あたりの価値が下がっちまう。だから何年か頑張って寝かせて、相場がもっと上がったときに売るのが最適解だぜ!)」

「将来的に相場が上がるとは限らないでしょ! ていうか、別にそこまでお金に困ってるわけじゃないし、危ない橋はなるべく渡らない方針で行きたいわ。せっかく超次元生命体との戦いも終わったんだし……」

 

 

 捕らぬ狸の皮算用をしていた二人だったが、徐々に会場が異様な空気になってきたのに気づき、言い合いを止めた。

 

「うわ~ん! あんなのずるいよ!」

「見たことないカード使われたよ~!」

 

 一回戦のときから既に、ちびっ子たちが泣きじゃくる姿は散見された。しかし小さい子供のことなので、運営スタッフ含む大人たちは「きっと負けたのが悔しかったんだろうな」くらいに考えていた。

 

 

 だが、異変は二回戦になっても続いた。あるプレイヤーと対戦して敗北した男性が、スタッフに文句を言い出したのだ。いわく、「対戦相手がおかしなカードを使っている、インチキではないか」。そのプレイヤーが先ほどちびっ子を大泣きさせたのと同一人物だったため、スタッフは不審に思った。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定